宮崎県・古祖母山 稜線を飾るアケボノツツジ

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祖母傾縦走路の間に位置する古祖母山(ふるそぼさん 1633m)。4月下旬からアケボノツツジに彩られた稜線歩きが楽しめます。

アケボノツツジと奥には祖母山(写真=池田浩伸)

山好きであれば宮崎と大分県境にそびえる日本百名山の祖母山は、誰もが知る山です。山頂に神武天皇の祖母である豊玉姫を祀ることが由来だと言われます。

祖母傾国定公園に指定された一帯には濃い自然が残り、北東の障子岩から主峰祖母山を経て東の古祖母山から傾山まで、九州で最も長く険しい縦走路が伸びています。

4月下旬から5月上旬には、この稜線を淡いピンクのアケボノツツジの花が飾ります。険阻な尾根と深い原生林に競い咲くアケボノツツジが山風にやさしく揺れる様子は、多くの登山者を魅了してやみません。

アケボノツツジが最も多く見られる、尾平越から古祖母山の往復コースを登ってみることにします。

 

モデルコース:尾平越登山口~古祖母山(往復)

行程:
【日帰り】尾平越登山口(30分)尾平越(50分)展望台(45分)ハシゴ(15分)古祖母山(15分)ハシゴ(30分)展望台(35分)尾平越(25分)尾平越登山口(計約4時間5分)

⇒古祖母山周辺のコースタイム付き登山地図

 

花と展望の稜線歩き

登山口は大分県豊後大野市と宮崎県高千穂町の県境にある、県道7号線尾平越トンネルの宮崎県側にあります。祖母山系の登山口としては最も標高の高い場所にあり、30分ほどで稜線に出ることができるのでちょっぴり得した感じです。

トンネルの宮崎県側の入り口西の広い駐車スペースから登り始めます。杉林の中の急坂をジグザグに高度を上げていき、傾斜が緩やかになると緑鮮やかな広葉樹の森に変わり、一面に広がる新緑に心が弾みます。すぐに広くなだらかな休憩ポイントに出ると尾平越です。ここは、全山縦走に2泊3日を要する祖母傾縦走路上のポイントで、右は本谷山・笠松山を経て傾山へと続き、左は古祖母山から祖母山へ続いています。北側を見ると、大分県側川上渓谷の深い谷の向こうに大障子岩など、うねるような稜線が続いています。

アセビの多い道を少し登り傾斜が緩むと1231ピークです。この付近からアケボノツツジやシャクナゲが増えてきます。赤やピンクの花の中に、白いムシカリの花がアクセント。写真を写す時間が多くなかなか先に進めません。

シャクナゲ・アケボノツツジ・マンサクと百花繚乱の稜線歩き(写真=池田浩伸)

アケボノツツジは、和名「曙躑躅」四国や九州に分布する落葉低木。葉が開く前の枝先に美しいピンクの花を1つ付けます。5cmほどの丸みのある花を風下側に向かって付けることが多く、やさしく揺れる様子は蝶が舞っているようにも見えます。

ブナの間を通る道はよく踏まれ、花と展望の稜線歩きが楽しめます。

稜線を飾るミツバツツジとアケボノツツジ(写真=池田浩伸)

急坂に息を弾ませながら登っていくと「展望台」の小さな案内板現れます。今まで見てきた、障子岩や大障子岩の稜線左側には主峰祖母山がそびえ、更に障子岳まで続く天狗岩や烏帽子岩など岩峰群が鋸歯のように連なった絶景が待っています。

更に進むと見上げる巨岩が現れます。左側を巻くように進んで岩間にかけられた長いハシゴを慎重に登り、祖母山を間近に見ながら灌木帯に入ると、すぐに古祖母山頂です。豊玉姫が最初に降臨した事が、古祖母山の由来だと伝えられている山頂からは、南側の高千穂方面の展望が開け幾重にも重なった山並みは見飽きることがありません。

古祖母山頂から南側の展望(写真=池田浩伸)

下山は来た道を少し戻ると北側の露岩へ通じる踏み分けがあります。深い谷とそばだつ岩峰群を一望できる、私にとっておきの場所です。展望を楽しんだら往路を戻りましょう

山頂北面にある展望岩。後ろは祖母山(写真=池田浩伸)

 

 

プロフィール

池田浩伸

佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。

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