7月第3月曜日は海の日。例年だと梅雨明け直後の連休となるので、海の日は海に! ではなく、山に向かう方は多い。
そこで山名に「海」や、海に関連する「塩」の字が入る山はどのくらいあるのか調べてみたところ、国土地理院の「日本の主な山岳一覧」では「海」がつく山は6山、「塩」がつく山は3山あった。また、小社運営の山と溪谷オンライン「山のデータベース」で検索すると、「海」がつく山は12山、「塩」は7山だった。
今回は海の日にちなんで、「海」・「塩」の字がつく名前の山をピックアップしてご紹介する。
ちなみに、今回紹介する以外の山にも興味ある方は、山と溪谷オンライン「山のデータベース」で調べられるので参考にしてほしい。
※今回紹介する山には、岩場やクサリ場などの危険箇所があったり、長時間歩行を強いられるコースも含まれるため、登山を計画の際は、ご自身の力量をよく考慮して判断のこと。
天塩岳(てしおだけ)は北海道北部・北見山地の最高峰で、日本二百名山に選ばれている。天塩は「梁のある」という意のアイヌ語「テシウ」から由来し、岩盤が川を横切り、梁のような形をしていることからついたといわれる。
天塩岳を源流とする天塩川の流路延長は、信濃川、利根川、石狩川についで全国4番目の長さである。256kmもの長い距離をたどって、天塩町で日本海に流れ出る。
天塩岳山頂部は大雪山以北最大の高山植物帯となっており、周辺一帯は天塩岳道立自然公園に指定されている。コースとしては、新道コース、旧道コースと前天塩岳を経由するコースがある。
旧道コースの場合は、天塩岳ヒュッテが登山起点。旧道分岐で旧道と分かれ、展望のよい前天塩岳へ。鞍部から登り返して着く天塩岳は大雪山の展望がすばらしい。下山は新道コースを下って西天塩岳ヒュッテ、円山を過ぎ、旧道への分岐から旧道に合流して往路を登山口まで戻る。
高低図
鳥海山(ちょうかいざん・ちょうかいさん)は山形県・秋田県境に位置する東北の名峰で、日本百名山に選ばれている。遠方からでもそれとわかる端正な姿が美しく、裾野は日本海にまで達する巨大な独立峰だ。
山頂部は火山特有の景観が広がり、山麓には清らかな伏流水に育まれた豊かな森や湿原をいだいている。また鳥海山の伏流水は日本海の海底にも湧き出て海の幸を育む。鳥海山の恵みは広範囲に及び、地域の生活・文化にも密接に結びついている。
登頂コースは四方からのびる。麓から登るコースはどれも長丁場だが、中腹まで鳥海ブルーラインが通っており、象潟口五合目と吹浦口四合目の2箇所、登山口がある。
象潟口五合目、ビジターセンターのある鉾立から御浜に着くと、眼下に鳥海湖が美しい。御田ヶ原から七五三掛(しめかけ)に上がり、外輪山方面へ。七高山の手前から新山へ。新山は、まさに鳥海山が火山であることを物語る、圧巻の溶岩ドームだ。
山頂からは日本海の展望がすばらしい。下山は、千蛇谷を下っていき、七五三掛で外輪山コースに合流し、往路と同じ道を鉾立まで下る。
高低図
福島県南会津町・栃木県日光市にまたがる日本三百名山。福島側では荒海山(あらかいさん・あらかいざん)、栃木側では太郎山と呼ばれ、日本海側に流れ出る阿賀野川上流部の山である。
山名の由来は定かではないが、地形図を見ると荒海山の北東に「貝鳴山」という山がある。もしかしたら海に関連する隠れた伝承があるかもしれない。
山の中腹はブナなどの林に覆われ静かな山歩きが楽しめるが、荒海川沿いに登るコースは近年の台風の影響で荒れている部分があるので注意のこと。また大雨の影響を受けやすいため、降雨時は控えた方がよいだろう。
登山起点は八総鉱山跡。登山口まで荒海川沿いの林道を進むが、近年の台風被害により荒れている箇所もあるので注意だ。登山口から急坂を登って尾根に出る。アップダウンを繰り返し、南稜小屋を見送ると、山頂に到着。山頂からは日光連山などの展望がすばらしい。下山は往路を戻る。
高低図
八海山(はっかいさん)は、新潟県・南魚沼に位置する日本二百名山。越後駒ヶ岳、中ノ岳と合わせて越後三山と称される。八海山と聞くと、真っ先に日本酒の銘柄を思い浮かべる方も多いことだろう。かの蔵元は、もちろんこの八海山の山麓にある。
八海山というピークがあるわけではなく、最高峰の入道岳をはじめとする岩峰群から成る。頂稜部は八ツ峰と呼ばれる険しい岩場で構成され、古来より信仰対象にもなっている。「八海」の名は、峰々が八つの階層で次第に高くなるために「八階」から転じて八海、山中に八湖あるので八海、など諸説あるようだ。
八海山へは、八海山ロープウェイを利用して登るコースがよく歩かれているが、八ツ峰の岩稜帯は険しく、岩場歩きの技術と経験が必要だ。歩行時間も長いため、初心者は安易に取りつかないようにしたい。
ロープウェイ山頂駅から女人堂へ。ハシゴやクサリのついた岩場、薬師岳を経て千本檜小屋。この先から険しい八ツ峰となり、クサリとハシゴなど危険箇所が連続する。大日岳の長い垂直のクサリ場を下ると八ツ峰は終わり、八海山最高峰の入道岳に到着。帰路は迂回路を行くが、こちらもクサリのトラバースなどがあり気を抜けない。千本檜小屋前で往路と合流し、もと来た道を戻る。
高低図
上信越にも黒姫山があるが、こちらは新潟県糸魚川市に位置する黒姫山。同じく新潟県柏崎市にある黒姫山と区別して青海黒姫山(おうみくろひめやま)と呼ばれる。石灰岩の独立峰で、日本三百名山にも選ばれている。
かつてこの近辺は青海町の行政区分であったが、2005年市町村合併により糸魚川市の一部となった。「青海」という名前は、硬玉が海岸に流れつき、海が青く輝くというような連想もでき、ロマンをかき立てられる。
現在登ることのできるコースは清水倉道のみ。駐車場のある登山口から登り、一本杉峠を過ぎ、急登を経て水場のある金木平へ。さらに急登や岩場を過ぎ、通行止めとなっている鉱山道と合流して西稜のピークに飛び出すと視界が開けて山頂に到着。山頂からは、日本海や北アルプスの展望がすばらしい。下山は往路を戻る。
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「すかいさん」と読む、栃木県・群馬県境に位置する日本百名山の一座。もともとは笄(こうがい)山と呼ばれ、「皇開山」とあて字され、それが皇海山となったといわれているが、海との関連性は定かではない。
以前は群馬側の林道を経由して登るコースがあったが、近年の台風や大雨の影響で林道が閉鎖され、現在は栃木側からのコースのみ。ただしこのコースは、小屋に一泊しても長時間の歩行を強いられ、庚申山から鋸山周辺は危険箇所が連続する。岩場歩きの経験や体力を備えた健脚向きのコースである。
登山起点は、国民宿舎かじか荘がある銀山平。一ノ鳥居を経て鏡岩や夫婦蛙岩などを過ぎ庚申山荘へ。庚申山の先の見晴台あたりから鋸山まではアップダウンを繰り返し、ロープやクサリ、ハシゴなどがつけられた危険箇所が続くので要注意だ。不動沢の鞍部まで下降し、登り返して皇海山山頂だが、展望はない。
下山は鋸山まで戻り、六林班峠から鋸尾根を巻くような道を進む。樺平を過ぎ、庚申山荘からは往路と同じ道を銀山平へと下る。
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塩見岳(しおみだけ)は南アルプスの中央に位置し、日本百名山の一座に選ばれている。山名の由来は、山頂から海が見えるからつけられた説、または山麓で塩が採れ、その奥にある山だから、など諸説ある。実際に山麓の鹿塩には塩泉が湧き、かつては製塩が行われていたという。山深いこの地になぜ塩泉が湧くのかについては、中央構造線が付近に走っていることもあり地質的な要因が関係しているともいわれている。
塩見岳は山頂部が東峰と西峰に分かれる双耳峰。以前は三角点のあった西峰の標高3047mが塩見岳の標高とされていたが、2020年、国土地理院の計測によって東峰の標高である3052mに標高改訂となった。
塩見岳へは、鳥倉林道から三伏峠を経由する鳥倉ルートがよく歩かれているが、無理なく山小屋に宿泊するプランがよいだろう。
鳥倉登山口が登山起点。豊口山間のコルを経て、塩川ルート(2022年現在通行止め)合流点を過ぎ、三伏峠へ。三伏峠小屋で一泊する。本谷山を過ぎて進み、ゴーロ帯となり左から塩見新道(2022年現在通行止め)が合流する。塩見小屋に着き、宿泊手続きを済ませて山頂に向かう。天狗岩を巻き塩見岳西峰に着く。少し先に最高地点の東峰が見える。どちらのピークからも周囲の大展望が広がる。塩見小屋まで戻りもう一泊し、往路と同じ道を鳥倉登山口に下る。
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最後に紹介するのは神奈川県横浜市にある円海山(えんかいざん)。山名は麓の寺院、円海山護念寺から由来するといわれている。
標高153mと低く、山というよりは丘陵に近い。番外編としたのは、山頂が私有地のため立ち入り禁止になっているためであるが、円海山周辺には大都市横浜の中でも豊かな自然が残っており、ハイキングコースも整備され、市民に親しまれるオアシス的な場所となっている。富士山が眺められる箇所や木道歩きの谷戸があるほか、リスなどの小動物も顔を出し、目を楽しませてくれる。
円海山だけであればハイキングや自然散策に近いが、横浜市最高峰の大丸山を経て鎌倉までつなぐコースもよく歩かれており、近年ではトレイルランナーの姿もよく見かける。港南台駅を起点として、いっしんどう広場から歩きやすい道を進み、横浜市最高峰の大丸山へ。関谷奥見晴台、市境広場を過ぎれば、もう鎌倉エリア。天園からは鎌倉宮、鶴岡八幡宮を経て鎌倉駅へ。
高低図