小川谷三又 8の字周回はクマと遭遇のおまけがついたワンデイハイク
タワ尾根、ウトウの頭、四間小屋尾根、三又、石楠花尾根、坊主山、長沢背稜、七跳山、ゴンパ尾根、三又、上滝尾根、長沢背稜、タワ尾根、東日原バス停( 関東)
パーティ: 1人 (加藤キーチ(モンターニャ) さん )
タワ尾根、ウトウの頭、四間小屋尾根、三又、石楠花尾根、坊主山、長沢背稜、七跳山、ゴンパ尾根、三又、上滝尾根、長沢背稜、タワ尾根、東日原バス停( 関東)
パーティ: 1人 (加藤キーチ(モンターニャ) さん )
晴れときどき曇り、尾根上のみ風あり。
その他:
立川駅のネットカフェに前泊、
行き_
立川駅04:47~06:31東日原バス停
帰り_
東日原バス停17:50~18:17奥多摩駅18:58~20:49新宿駅
※平日ダイヤ
(丸ガッコ内は地理院地図の表記)
.
06:55~東日原バス停スタート
07:15~一石山神社
08:50~ウトウの頭~09:03
〈この区間、四間小屋尾根の下降〉
10:07~三又(P1205の南300m)~10:20
〈石楠花尾根の登り〉
11:28~坊主山(P1702とP1595の中間P)~11:41
12:04~七跳山(P1651)~12:15
〈ゴンパ尾根の下降〉
13:39~三又~14:01
〈上滝尾根の登り〉
14:40ごろ~(P1480付近でクマに会う)
14:52~長沢背稜
15:06~タワ尾根下降地点(滝谷の峰の南200m)
15:37~ウトウの頭
16:55~一石山神社~17:00
17:19~東日原バス停フィニッシュ
奥多摩小川谷・三又を8の字に周回して4本の激坂の尾根を登降しました。念願かなったwクマとの遭遇談を、長めの追記に残します。
.
タワ尾根(一石山神社~ウトウの頭)登り
四間小屋尾根(ウトウの頭~三又)下降
石楠花尾根(三又~長沢背稜)登り
ゴンパ尾根(長沢背稜~三又)下降
上滝尾根(三又~長沢背稜)登り
タワ尾根(長沢背稜~一石山神社)下降
.
○ プランニング
小川谷を上流に向かい、滝谷(大京谷とも)・酉谷・悪谷(割谷)に分かれる三又はなんとも魅力的な場所だ。川岸沿いの旧道が崩落したため、たどり着くにはMさんと有志のみなさんが手を入れてくださっている細いトレイルを林道終点から歩くにせよ・タワ尾根や長沢背稜から降るにせよ、容易ではないオフトレイル(=バリエーション)を長く歩く必要があるのも秘境の趣を増している。
三又で水の流れは大雑把にいえば十字のかたちになっている。バッテンには、したがってよっつの尾根が降りてきている。地図を眺めながら「四本の尾根をつなげて歩けないだろうか」と思いついたのがプランのはじまりだった。
唯一登ったことのある四間小屋尾根のコースタイムをもとに、ネット上の記録を参考にして計算するとなんとかなりそうだった。無理となればエスケープのルートはたくさんとれる。前泊してスタート時間を早め「激坂との闘い」にのぞむことにした。
当初は、林道終点広場から三又に入り8の字に周回して広場に戻るプランだった。しかしネットカフェでひと晩過ごし目覚めたとき「タワ尾根は降るばかりで登ったことがない。それに登り2本では時間が余りそう」だと気づき、急遽タワ尾根経由で三又に入るプランに変更した。
.
○ タワ尾根をウトウの頭まで登る
東日原バス停から2時間弱、麓の神社からは1時間35分。経路上の問題はとくにない。三又の周辺を歩くには、タワ尾根を技量的にも時間配分的にも「まったく問題なく歩ける」ことが前提になる。
.
○ 四間小屋尾根を降る
登りでいちどだけ歩いた四間小屋を下降する。降りはルートを求める難易度が上がる。上部~中部は尾根間違いに注意が必要だった。標高1200m付近でむかしの水源林巡視路に出会うが、これを見逃し尾根を直進するとおそらく厄介なことになる。頼りない踏み跡が北面=進行方向左にあらわれるので、ロストしないようにしたい。
【最後に、重大な危険箇所があった】。四間小屋尾根の旧巡視路は三又の東250mで右岸の下段歩道に降りる(廃道・写真10)。これを西にたどって三又に降りるのだが、三又直前の顕著な崩落箇所がおそらく長雨の影響だろう、とても悪い状態になっている(写真11)。オフトレイルを歩き倒して「悪慣れ」していない限り、この崩落地点の通過はきわめて危険だと思う。記録者は数分をここで費やした。
ウトウの頭から三又までほぼ1時間。梅雨が明けた沢の水量は多くなく、爪先を濡らす程度で渡渉可能だった。
.
○ 石楠花尾根を登る
三又からわずかに上流に歩き、酉谷と悪谷(割谷)のあいだに下りてきているのが石楠花〈シャクナゲ〉尾根、長沢背稜の坊主山(P1702とP1595の中間P)に突き上げる。取り付きは急斜面だ。数十メートル我慢して登ると四つ足から解放されないにせよ、なんとかやっていける傾斜になる。幅の広い尾根なので、振り返って三又を見下ろしたときに「どっひゃ~」な緊張感を感じずにすむのはありがたかった。
上部まで何段かの急斜面があり、ヤセ気味の区間もあったと記憶する(写真18)。変化に富んだ尾根だった。
三又から坊主山まで1時間ちょっと。予定より早く、坊主山と七跳山(P1651)でずいぶんのんびりした。
.
○ ゴンパ尾根を降る
ゴンパ尾根はヤマレコ「みんなの足跡」でもドットがつかない。おそらくいちばん難しいのではないかと踏み、ならば難易度を上げ降ってみようと考えた。
ガレとザレがひどく、下降はたいへん苦労した。三又までもう少しの標高1130m付近で岩にあたる。先端まで行ってみたが降りられない。傾斜のゆるい進行方向右(北面)を巻く。標石もテープもない尾根なのに、ここだけは踏み跡がついていた。急になり・細くなり・ヤブがうるさくなってくる。左方に緩斜面(=相対的表現)が見渡せるところで進路を曲げる。予想より苦労することなく、ストンと小川谷の左岸歩道に降りることができたのは意外だった。
ただし道中のザレた斜面に苦労して1時間半弱かかっている。
.
○ 上滝尾根を登る
取り付きの急斜面を除けば苦労することなく歩けた印象だ。テープも散見され、四間小屋尾根同様わりと歩かれている印象だった。P1480付近で熊に遭遇、顛末については後述する。
疲れてはいたが、1時間足らずで長沢背稜の縦走路に出た。
.
○ タワ尾根を下降する
登り降りして気づいた点。タワ尾根はウトウの頭前後の岩稜でテープに導かれる場面が多いが、そのとおり歩くのが安全で効率が良いかは疑問だ。ウトウの頭をすぎて右(西面)を巻くトラバース道などはあまり気が進まず、直進してみると岩場の下降はまったく問題がなかった。
日原街道まで残り150mくらいから踏み跡が錯綜する。惑わされてアクロバチックな降りかたをした経験があり最後を心配したが、どなたか手を入れてくださった様子で進路は明確、問題なく車道に出た。
.
● 熊との出会い~エピローグ
かなり風変わりな熊との遭遇体験になる。
まず前提として、記録者は「早くクマと出会わないかなあ」と常々願っていた。人に話すことも多く、山に登る人・登らない人ひっくるめて「怖さを知らないのか」「本気ではなく冗談でしょ」「(アホかコイツ)」の反応と冷ややかな視線を浴びる。それでも本人がいたって真面目なのは、これだけワケのワカらない山歩きをしながらいまだクマとの遭遇がない点において、自らのハイカー歴の大きな瑕疵だと思いこんでいたことに由来する。いや、しょせんは出戻って2年半、「ハイカー歴」なんて大それたものにはほど遠い。それでも「クマ?ええ、遭ったことありますね。臆病な生き物だそうですから、出会い頭でなければおそらく危険なことは」なんて吹聴できて0.8人前、このままではいつまで経っても半人前ではないか。そんな焦燥を感じていたらしい。
.
上滝尾根はP1480付近で左から上がってくる支尾根に乗り換える必要がある。わりと傾斜があり、左にまわりこんで尾根末端から取り付くか・直進して横からジグザグに上がるのか、ルートを探すために顔を上げていたのは幸いだった。
歩きながら前方を眺める視界のなかでかすかに黒いものが動く。その瞬間、まだ物体を特定していないのにニヤニヤしてしまう。やっとその日か!これでオレも(以下略)。
距離は40~50mの進行方向正面、スピードを変えずに30mまで近づいたところで木の陰に身を寄せる。相手は倒木が何本か重なるあたりをうろうろし、ハイカーに気づいていないようでもあり・先に気づいて倒木の陰に隠れたようでもある。それほど大きな生き物ではないんだな。遠目だが毛艶が良いなあ。
しばらく観察のあと、退いてもらうことにした。どうルートを取るにしてもそこにいられては前に進めない。細い木の陰で両手を広げ、ゆっくり上下に動かしながら「ほーいっ!ほーいほいっ!」と叫び、ここに人間さまがいるぞアピールをする。しばらく続けたが効果がなく、声を出しながら両手を強く打ち鳴らした。
ようやくクマに緩慢な動きがあり、しかしよりによって近づいてくるではないか。
.
これはマズいなと思う。忙しく頭を動かす。
とっさに浮かんだのは、やっぱりユルいんだろうな、ということだった。
14年間、サイズの大きな犬と一緒に暮らした(写真50)。外に出て人にかまってもらったり・ほかの犬に出会うのを生きがいにしていたから、平日は3回にわけて3時間・週末は昼過ぎに出かけ夜もどる半日を散歩にあてた。イギリスの貴族が育てたブリードを、貧乏人が飼うとこういう羽目に陥る。あっちなら「広大な庭があり、犬の世話をする使用人がいる」わけだから。
ともかく、大声を出し手を強く打ちながら記録者の心情には
― よう、ひさしぶり。こんどは真っ黒か。どう、元気でやっているの。
の気分が2~3割混ざっていたことは否定できない。もっとあったかもしれない。出している声音が
― あっちへ行け!
ではなく
― オイデオイデ
になってしまっているのだった。
.
距離は20数メートルm。心を鬼にする。出す大声も打つ手も変わらないが、まじりっけなしに「あっちに行け、我々のコンタクトは不幸を招くぞ」のメッセージをこめる。
以前、辺見尾根で鹿よけネットにからまっている鹿を助けたときがそうだった。野生動物は人間なんかに触られるのは大きな恐怖だからもがきにもがく。しかしそれでは網をほどけない。大声で「ステイ!」と犬向けのコマンドを発すると、しばらくおとなしくなった。
要は気合である。同時に、こっちの本気をしめすために木の陰から出て前に踏み込んだ。
.
2m進み距離が20mになったところで「これは近づいたらアカンやっちゃ」と気づいたらしい。向きを変え小走りに逃げていってくれたのは良いが、尾根を登ってゆく。そっちじゃないんだよな、それじゃ進行方向が一緒だろ。苦笑いしながら、だが決着はもうついた。気合の大声を出し手を打ち鳴らしながら後を追った。
.
最後に。
植村直己さんが登ったままのアラスカのデナリ国立公園を、25年前に訪れた。こちらはシャトルバスに乗り公園の入口周辺を半日まわっただけだけれども。公園のビジターセンターで学んだ「グリズリーに遭遇したら」のトピックを、写真51~53のキャプションに添えた。いまではハウツーが変わっているかもしれないし、ツキノワグマとグリズリーでは習性が異なるかもしれない。なにより記録者がクマに全然詳しくないこともあわせ、留意のうえお読みください。
.
(了)
【その他】 ラ・スポルティーバのウルトララプター。タイツにモンベルのショートパンツ。モンベルの長袖、ペツルのヘルメット、100均の作業用グローブ。ザックはロウアルパインの25リッターにモンベルのギアホルダーを外付け、ココヘリ発信機・ヘッドランプ・スマホ(カメラ+GPS)・バッテリー充電器と予備電池・雨具、ロールペーパー。キャメルバックのハイドレーションに水1L・調理パンみっつ・非常食・下山後の着替え一式・サンダル。スタート時重量7.0kg。 |
みんなのコメント