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遠征を終えて。帰国後に待ち受けるのは「空白の43日間を埋める作業」

アウトライヤー 萩原編集長のヒマラヤ未踏峰挑戦記
ガイド・記録 2020年05月10日

バックキャラバンの締めくくりは2日間のロングドライブ。未踏峰への登頂の余韻に浸る間もなく、他のメンバーよりもひと足先に日本に帰国した萩原編集長を待ち受けていたものは・・・。

 

長い長いドライブを経て、ようやくカトマンズへ到着

Date 2013年10月24日(木)


10月23日23時、2日間のジープと貸切バスの行軍を経て、ようやくカトマンズのホテルに戻ってきました。下山地のタプレジェンからは、超満員天蓋荷物積載量完全無視のジープに乗って、標高2000m台の山岳ドライブを経てイタハリへ。ここからは標高300m台のタライ高原の一本道を、派手にデコレーションされた貸切バスに乗ってカトマンズへ……。それぞれ朝の6時から夜遅くまで乗りっぱなしの長い長い移動でした。

タプレジェンに到着。この町が大都会に感じられた


そりゃ無理でないの? と言いたくなるような暴力的荷物積載風景。この車に山盛り荷物を積んで、隊員10名が乗車して12時間のドライブとなった


途中、高級紅茶の産地で有名なイラムを通り、大草原の中に点在するネパールの田舎町でダルバート(ダル豆のスープとごはんの組み合わせで食べる国民食?)を食べながら、でこぼこの道で何度も頭を車の屋根にぶつけつつ、無事にカトマンズに帰着。稲刈り前の青々とした水田地帯や、民家を彩るバナナの林、そして沼に水牛が遊んでいる様子を車窓から眺めていると、7000mの氷雪の世界に閉じ込められていたことが遠い昔のような感覚です。

ドライブの前半は山岳地帯の高原ドライブ。棚田が広がり、民家の裏にはバナナの林


標高300m台のタライ平原にやってくると、ここはもうほとんど熱帯!背景がキリマンジャロでもおかしくない雰囲気


とりあえずホテルの部屋で会社アドレスのメールを開き、1万通近い未読メールにため息。気にしてくれていた海外の登山メディア関係者に今回の記録を軽く整理して送ったところでいちどダウンし、今、うっすらとさしてきた朝日のなかでふたたびこれを書いています。

ネパールでは2日前にようやく梅雨が明けたとのことでした。これほど遅い梅雨明けは近年では珍しいらしく、私たちがBCで雪に閉じ込められた頃は、ベンガル湾に発生したハリケーンが各地に雨を降らせていたとのことです。逆に言えば、その不安定な天気のなかでよく登ることができたものだと、あらためて今回の幸運に感謝しています。天気のこと以外にもブログでは詳しく書けなかった登頂のドラマがあったのですが、これはまたあとで整理して紹介することにしましょう。

今日は終日、登山に使った荷物の整理をしたのち、日本大使館やネパール山岳会の方々を招いて登頂記念パーティを開く予定です。その後、本隊は28日のフライトで帰国予定。私だけが仕事の都合で、25日深夜発のフライトに変更してもらい、28日に出社予定です。

白き神々の座で遊ばせていただき、未踏峰での「世界最幸」の瞬間を味わった山岳雑誌編集長から、ふたたび「世界最忙」の仕事人に戻る日が近づいてきました。あと2日間、ネパールで少しだけリハビリ(仕事メールなど・・・)をして、40日間考え続けた「日本に帰ったらあれ食べたい」リストを胸に、日本に帰りたいと思います。

 

無事に帰国。43日ぶりの出社で待ち受けていたものは・・・

Date 2013年10月30日(水)


カトマンズ近郊の岩場でクライミングを楽しんでから帰るという仲間を置いて、仕事に追われる私だけが26日午後、香港経由でひとり帰国。残っていたメンバーたちも、29日午後に成田空港に戻ってきました。今後も報告書作成などの作業が残っていますが、これをもって今回の遠征はひとまず終了となります。先発隊にとっては51日間という長期の山行となりましたが、苛酷な環境のなかでだれ一人、大きな怪我も病気にかかることもなく、元気に帰ってくることができたことをうれしく思います。

今回、登ったアウトライアー南西壁の登攀ライン


「ヒマラヤの生き字引」エリザベス・ホウリーさんの取材を受ける


43日ぶりに出社してみると、郵便物の束と書類が崩れかけた波のように机を占領し、PCを開けばエベレストの標高を超えるたくさんの未読メールが壁となって立ちはだかります……。ひたすら地味に未読メールの整理をしていると、他の編集部から原稿の依頼が。そして部員からは月末締切の書類の山が。さらに帰国に合わせて締切日を設定していた『ROCK&SNOW』誌の原稿が雪崩のように押し寄せてきて、今にも吹き飛ばされそうな勢い。日本に戻って、いきなりレッドゾーンの激労が待ち受けていました。

そして本来の業務以外にも、「山の日」制定協議会の活動(議員連盟が頑張っています!)や、日本山岳会関連の集会、そして「ピオレドール・アジア」の審査会(ソウル市開催)など、あれこれのイベントが次々とカレンダーを埋め、はやくも身動きの厳しい状況に・・・・・・。やはり空白の43日間を埋める作業は容易ではありません。

なお、今回の登山につきましては、日本山岳会の年次晩餐会(2013年12月7日)で報告会を予定しているほか、『山と溪谷』2月号(2014年1月15日発売)で詳しく紹介いたします。また、本ブログにおきましても「今だから書ける登頂裏日記」を唐突にアップする予定ですので、気長にお待ちいただければ幸いです。

サンセットビューホテルで開いていただいた登頂祝賀会にて

 

教えてくれた人

萩原 浩司

モットーは「ウラヤマからヒマラヤまで」。あらゆる山登りに対して深い興味と愛情を注ぎ、南高尾山稜の陽だまりハイキングから北アルプスの縦走登山、残雪の南会津スキーツアーに奥秩父の沢登り、小川山のフリークライミングや八ヶ岳のアイスクライミング、中央アルプスの冬季登攀、そしてたまには海外登山と、オールラウンドに山を楽しんでいる。普段の仕事は山と溪谷社の編集者。

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