天候が悪く停滞の日々。最後は「晴れ男」パワーに期待!?

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ここまで順調に進んでいた計画が一転、安定しない天候に阻まれ停滞の日々が続く。登頂に向けてのタクティクスも練り直しを余儀なくされ、最後の最後に期待するのは萩原編集長自身の「晴れ男」パワー!?

 

青空はいずこに……標高5600mのC1でステイ中

Date 2013年10月05日(土)


10月3日は標高6800m地点のキャンプ3に向けてのルート工作。

あいにく天気が悪く、昨夜からの雪で、C1の周囲はすっかり雪化粧となってしまいました。ルート工作も視界不良のために途中で断念。午後は休養にあてています。

雪化粧したC1(標高約5600m)。朝の気温は1℃


今日はほとんど太陽が姿をあらわさないためにソーラーチャージもうまくいかず。残り18%のバッテリー残量でこれを書いています。

10月に入ってから天気が安定するはずなのに、今のところまだ、終日、晴れ続けるような日はやってきません。朝だけ晴れてあとは雲の中という、2011年の夏山(記憶にある人はかなりの登山通です)みたいな天気が連日、続いています。

翌4日も、太陽が姿をあらわしたのは朝の7時まで。あとは薄雲のなかからぼんやりと太陽の形が見えるだけで、アウトライアーの姿も早朝のほんのわずかな時間しか見ることができませんでした。結局、視界不良のためC2への移動とC3へのルート工作は明日に持ち越すことにして、今日は停滞。ひたすら太陽を求めてソーラーチャージにつとめます。

登頂を数日後にひかえている今、これまででいちばん不安定な天気の周期に入っていることが気がかりですが、乾季を前にした好天の周期に変わることを期待しています。プロトレックの気圧計も510hPaから上昇のきざしを見せはじめ、今は513hPaです。

今後の計画では、明日、5日に登頂隊員4名がC2入り。6日はルート工作にあてて、7日に標高6800mのC3泊。そして8日が最短での登頂予定日、となっています。この間に、天候や雪質、隊員の体調などによってレスト日を1~2日入れるかもしれませんが、臨機応変に対応するしかありませんね。いちおうC2にもPCと衛星モデムを持ち上げますが、しばらく登攀に集中するため更新が途絶えるかもしれないことをあらかじめお知らせしておきます。

C2の荷揚げから戻る村上隊員と本田隊員


とりあえず今は青空に期待して、青山学院大学らしくお祈りのことばを・・・。

 

(詩篇121篇より)

目を上げて、わたしは山々を仰ぐ。

  わたしの助けはどこから来るのか。

わたしの助けは来る。

  天地を造られた主のもとから。

どうか、主があなたを助けて

  足がよろめかないようにし、

まどろむことなく見守ってくださるように。

(以下、略)

 

どうか太陽の恵みが、

われわれ登山隊メンバーの身にあまねく降り注ぎますように…。

と、殊勝なことを書いてみましたが、

やはり海外登山には運がつきもの……。

最後の最後は隊長自身の「晴れ男」パワーに期待したいものです。


元気づけのための夕食メニューは「ヤクステーキ」

 

C2にて停滞中。登頂に向けてのタクティクスも練り直し

Date 2013年10月07日(月)


5日は登頂隊員全員でC2(標高約5800m)に上がり、可能なところまでルート工作をする予定でしたが、天候が悪くルートはC3までつなげることができませんでした。

昼ごろから本格的に降雪が始まり、翌朝、起きてみると10~15センチほどの積雪量。これではルートに取り付くこともできません。6日は早々と停滞と決定し、登頂に向けてのタクティクスを練り直しているところです。気圧も497hPaまで下がり、高度計は5910mを指しています。残念ながら悪天の周期はもう少し続きそうです。

大雪原の丘の上にポツリと設営されたキャンプ2。ここに4名の隊員が生活している。たぶんあと2~3日後まで……。


それにしても、今年の10月は天気が悪いです。

1日から今日まで、ソーラーパネルがフル稼働できたのは1日(実質は半日)だけ。雪も少量ですが3日連続で降っています。よりによって登頂を前にした大切なときに天候に見放されるとは、困ったものです。信心が足りないのか、ラマ僧さん(実は自分たちでプジャをした日の夜、ヘッドランプをつけてBCにご登場なされ、翌朝、1時間ほどお祈りをささげてくださった)が、雨乞いのお祈りまでサービスしてくださったのか(もちろん冗談です)。

ちなみにここ、標高約5850mのC2は、正面にアウトライアー南西壁を仰ぎ、足元にはブロークン氷河の大クレバス地帯を見下ろす、小高い雪の丘に設立されています。晴れると、この上なく快適な場所なのですが、昨日のような雪模様だとトイレに行くのもひと苦労。当初の予定では明日、頂上に向けて出発の予定でしたが、雪質と天候の安定を待って、あと2~3日はここに落ち着くことになりそうです。次のブログ更新の可能性は天候次第でなんとも言えませんが、ほどほどにご期待ください……。

C2からブロークン氷河の大氷原と、C1方向を見下ろす(C1は氷河の右岸の丘の上にある)

⇒次号/萩原編集長、ついにアウトライヤーの山頂へ!

プロフィール

萩原浩司(はぎわら・ひろし)

1960年栃木県生まれ。青山学院法学部・山岳部 卒。
大学卒業と同時に山と溪谷社に入社。『skier』副編集長などを経て、月刊誌『山と溪谷』、クライミング専門誌『ROCK&SNOW』編集長を務めた。
2013年、自身が隊長を務めた青山学院大学山岳部登山隊で、ネパール・ヒマラヤの未踏峰「アウトライアー(現地名:ジャナク・チュリ/標高7,090m)」東峰に初登頂。2010年より日本山岳会「山の日」制定プロジェクトの一員として「山の日」制定に尽力。
著書に『萩原編集長危機一髪! 今だから話せる遭難未遂と教訓』、『萩原編集長の山塾 写真で読む山の名著』、『萩原編集長の山塾 実践! 登山入門』など。共著に『日本のクラシックルート』『萩原編集長の山塾 秒速!山ごはん』などがある。

アウトライヤー 萩原編集長のヒマラヤ未踏峰挑戦記

NHKの「実践! にっぽん百名山」の解説などでおなじみ、萩原編集長こと萩原浩司氏は、2013年秋、ネパール・ヒマラヤ未踏峰、「アウトライアー(現地名=ジャナク・チュリ)」を目指した。 母校である青山学院大学の山岳部のOB会長も務める萩原氏は、自ら総隊長としてこの遠征隊に参加、その準備から登頂、そして帰国までを萩原氏の目を通しながら伝えていく。

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