夏まっさかりの八甲田山に登り、秘湯の一軒宿・蔦温泉で足元湧出の極上湯に浸かる

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第7回は夏の八甲田山と足元湧出の極上湯へ。


青森県の八甲田山は、冬は日本有数の豪雪地帯として知られますが、夏の間は火山らしい風景を日帰り登山で楽しめる山です。
青森駅前から路線バスに乗り、1時間ちょっとの乗車で八甲田ロープウェイ乗り場に着きます。以前、酸ヶ湯温泉からの周回ルートで登ったこともあるのですが、今回はちょっと楽をしてロープウェイに乗って一気に標高をあげることに。

標高1305メートルの山頂公園から歩き始め、田茂萢(たもやち)湿原を通り抜けて八甲田大岳に向かいます。途中に通過する井戸岳では、すり鉢状の火口を間近に眺めることができました。

広い大岳の山頂でお昼ご飯を食べていたら、白い雲がもこもこと湧き上がってきます。
いかにも夏山らしい景色の中を、酸ヶ湯温泉の登山口に下山しました。

酸ヶ湯温泉からはまたバスに乗り、十和田湖方面に向かいます。40分ほどの乗車で本日のお宿、蔦温泉旅館に到着です。なお、2020年は八甲田・十和田湖方面を結ぶ路線バスは減便して運行していますので、お出かけの際は最新の時刻表をご確認ください。

蔦温泉旅館はブナの原生林の中にある秘湯の一軒宿。 明治時代から100年以上続く歴史ある宿で、正面玄関の周辺は「本館」と呼ばれる、大正時代に建てられた趣ある建物です。チェックインの手続きをしながら、ロビーでりんごジュースをいただきました。登山で疲れた体に染み渡ります。

今回宿泊する西館3階のお部屋に案内していただきました。
室内の雰囲気はお部屋のタイプによって異なるそうですが、広々としていて室内も設備も新しく、大きな窓からは外の緑が眺められる快適なお部屋です。

室内にコーヒーマシンが置いてあって好きなときにコーヒーが飲めたり、色浴衣と一般的な浴衣の両方が用意されているのもうれしいポイントですね。

部屋で一休みした後は温泉です!
蔦温泉旅館には「泉響の湯」と「久安の湯」という2つの大浴場があります。まずは「泉響の湯」に向かうことに。


内湯ですが天井がとても高く、浴槽から梁までの高さが12メートルあるという泉響の湯。天井からキラキラと光が差し込む、雰囲気ある浴室でした。

蔦温泉の浴室は、源泉の湧いている場所の真上に浴槽があって、浴槽の底板の間から源泉がポコポコと湧き出ています。湧き出たばかりのとびきり新鮮なお湯を楽しめる「足元湧出」の貴重な源泉をゆっくりと楽しむことができました。

お風呂の後はお楽しみの夕食です。前菜が十和田湖産のワカサギ天ぷらだと知り、1杯目から日本酒を注文してしまいました。「豊盃」という弘前市の酒造のお酒をいただきます。

天ぷらには、岩木山の麓で取れる「嶽きみ」という糖度の高いとうもろこしもありました。前菜から青森県産の食材が目白押しでうれしいですね。

お刺身は十和田産の紅鱒や三沢産の北寄貝、焼き魚は十和田産の岩魚です。

茶碗蒸しのような料理は「焼き卵豆腐」です。具は、こちらも青森県の特産品である帆立ですね。
鍋料理は南部煎餅を具にした「せんべい汁」という八戸の郷土料理です。津軽産の鴨も入っており、出汁がしみこんだ煎餅はしみじみとおいしく、これまで食べたことのない味わいでした。

デザートはりんご水ようかん。前菜からデザートまで青森県産食材にこだわったメニューで、大満足で夕食を終えました。

翌日は早起きしてもう一つの浴室「久安の湯」へ。
「久安の湯」は、以前は混浴だったものを、現在は男女で時間を分けて入れ替え制としている浴室です。21時30分から翌朝8時までが女性時間帯です。

透明なきりっと熱めのお湯に浸かり、源泉が浴槽の底からポコポコと湧き出てくるのを眺めながら、昨日の登山や旅館ですごしたすばらしい時間のことを思い出します。青森、遠かったけど来てよかったなあ、また必ず来たいなと心に誓いました。
 
朝風呂の後は朝食会場へ。
品数豊富なバイキングの朝食で、板前さんがその場で作ってくださるオムレツをはじめ、蒸し野菜やサラダなど、素材を活かした料理が並び、朝からしっかりといただいてしまいました。

現在は朝食はバイキングではなく、和食のセットメニューでの提供に変更されているそうですが、すばらしいお湯と青森県産食材を楽しめる蔦温泉に、いずれまた伺いたいと思っています。

(取材日=2019年10月)

*掲載情報は、取材時の内容です。

蔦温泉旅館

料金:1泊2食付き/1室1名17000円~、1室2名15000円~
住所:〒034-0301 青森県十和田市奥瀬字蔦野湯1
電話:0176-74-2311
HP:https://tsutaonsen.com/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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