厄除け登山で山の神仏から元気を頂く! ~高尾山のパワースポット&空海の足跡を巡る~

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いよいよ薬王院へ…境内を徹底解剖!そして山頂へ

さあ、いよいよ薬王院に到着です。大小の堂宇が立ち並ぶ壮大な伽藍、それぞれの由緒を知ってご参拝することで、より深いご利益が得られるのではないでしょうか。写真ではご紹介できませんが、当日は大本堂での護摩焚きにも参加し、安全登山を祈願して頂きました。薄暗い堂内に響くほら貝と導師たちの朗々たる声、その中心で揺れる炎はまさに神秘的。最後に間近で拝観できる御本尊と対面する時、参拝者の心には何が訪れるのでしょうか。

薬王院境内の史跡と山頂(ヤマタイムを元に作成)

 

【16】四天王門(してんのうもん)

薬王院の山門である四天王門。その名の通り、北方の多聞天・南方の増長天・東方の持国天・西方の広目天が、各方位を守護しています。ちなみに多聞天は単独でも信仰の対象になっており、単独の場合は「毘沙門天(びしゃもんてん)」と呼び名が変わります。戦国武将・上杉謙信が自らをその生まれ変わりとしたことでも有名ですね。

四天王門

 

【17】大天狗(おおてんぐ)・小天狗(こてんぐ)像

四天王門を潜ると右手に現れるのが大天狗・小天狗の像です。団扇を持つ大天狗は煩悩を吹き払い、刀を持つ小天狗は弱い心を断ち切るとされています。心が煩悩に惑わされていたり、気が弱っていると感じたりした時は、天狗たちに会いに高尾山を訪れるのも良いかもしれません。

大天狗・小天狗像


高尾山のシンボルとも言えるこの天狗像に目を奪われがちですが、その奥にある小さな祠にも、それぞれ由来があるのです。

 

【18】八大龍王堂(はちだいりゅうおうどう)

龍は水を司る存在とされており、手水場の湧出口に龍がいる寺社は多数ありますね。仏陀が生まれた時に“アムリタ”という不老長寿の香水で、その身を清めたのも龍であると言われています。

八大龍王堂

 

【19】倶利伽羅堂(くりからどう)

この2体の龍も不動明王の化身と言われています。縁結びにもご利益があると言われており、中央の剣で煩悩を断ち切ることで、良縁を呼び寄せることができるかもしれませんね。

倶利伽羅堂

 

【20】修行大師堂(しゅぎょうだいしどう)

高尾山内八十八大師めぐりでは石像である弘法大師像ですが、こちらではきちんとお堂の中に安置されています。こちらでも、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と3回お唱えしながら、お参りしましょう。

修行大師堂

 

【21】仁王門(におうもん)

参拝記念品や土産物の売店を過ぎ、右手の階段を昇り詰めると、その先にそびえるのが仁王門です。那羅廷金剛力士像(ならえんこんごうりきしぞう=阿形/あぎょう)・密迹金剛力士像(みっしゃくこんごうりきしぞう=吽形/うんぎょう)の二体の金剛力士像が安置されており、阿吽(あうん)の呼吸という表現でもおなじみです。

仁王門

 

【22】大本堂(だいほんどう)

薬王院で最大の建築物でもある大本堂では、護摩焚きが行われます。護摩木などの供物を導師たちが燃やし、その火で煩悩を焼き清め、その炎に祈りを託し、護摩木に記した諸願を成就させるという真言密教ならではの修行は、高尾山ならではの体験といえます。

護摩焚きも行われる大本堂

 

【23】大師堂(たいしどう)

弘法大師を慕って登拝した人なら、本堂の後に必ず訪れたいのが大師堂です。実はこのお堂の周囲だけでも、八十八ヶ所めぐりができるのです。

大師堂


大師堂の周囲を囲む88の石柱には、四国八十八ヶ所を構成する各寺の御本尊の名が刻まれています。足元にはそれぞれの寺院の砂が敷き詰められており、大師堂の周囲をめぐるだけで「お砂踏み」という四国八十八ヶ所霊場めぐりと同じ功徳を得られる体験ができます。

大師堂を巡るお砂踏みの道

 

【24】愛染堂(あいぜんどう)

縁結びのご利益があると言われる愛染明王ですが、煩悩の中でもとりわけ強く不浄な「愛欲」を強い浄化に変え、清らかなものに変えてくれる力をお持ちです。その真っ赤な姿は、衆生の気持ちに寄り添って流した血の涙で染まっている証だとされています。

愛染堂

 

【25】飛飯縄堂(とびいいづなどう)

本社飯縄権現堂へ向かう階段の傍にある飛飯縄堂はイボをはじめ皮膚病にご利益があるとされています。高尾山のある八王子市のお隣、日野市にある飯綱権現社から飛んできたという伝説から、この名が付けられたという伝説が残っています。

飛飯縄堂

 

【26】本社飯縄権現堂(ほんしゃいいづなごんげんどう)

大本堂より一段高い場所に位置する本社飯縄権現堂は薬王院の中心的な存在です。ところで、行基が6世紀に高尾山を開山した際の御本尊は、薬王院の名の通り「薬師如来(やくしにょらい)」でした。天然痘という恐ろしい疫病が流行したこの時代、薬草についての知識も豊富だった行基は、薬師如来の生まれ変わりであると信じられていたそうです。

その後、12世紀に高尾山で修行した俊源大徳(しゅんげんたいとく)が「飯縄大権現」を御本尊として高尾山を中興し、南北朝〜室町〜戦国時代と戦争が絶えなかった時代に、戦勝の神として多くの武将の支持を集めたのです。時代背景によって御本尊が変わるということも、興味深いものですね。

本社飯縄権現堂

 

【27】福徳稲荷社(ふくとくいなりしゃ)

本社飯縄権現堂の傍にある福徳稲荷社、シンボルである狐は食物神である宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)のお使いであるとされています。「稲を荷(担)う」の文字通り、豊作を願う人々に信仰されました。春になると山から里へ下りてきて、秋になると里から山へ帰る狐の習性が、山の恵みをもたらす存在であると信じられていたのでしょう。

福徳稲荷社

 

【28】奥の院・不動堂(ふどうどう)

境内でも最奥にあたる急峻な尾根上に位置しているのが、奥の院です。その名の通り不動明王を御本尊としますが、高尾山を開山した行基、高尾山を中興した俊源も祀られています。

奥の院

 

【29】富士浅間社(ふじせんげんしゃ)

奥の院の近くにひっそりとたたずむ富士浅間社、普段は通り過ぎてしまいがちな場所ですが、高尾山の信仰を語る上では欠かせない存在です。御祭神である木花咲耶姫(このはなさくやひめ)は、火を放った産屋の中で3人の子供を出産した伝説を持つ、火難除けの神さま。噴火を鎮める願いを込めて富士山頂の富士山本宮浅間大社にも祀られています。

富士登山は女人禁制とされた江戸時代、女性でも登拝が許され富士山を遥拝できる高尾山は、女性たちの信仰の対象としても大切な存在だったのです。

富士浅間社

 

【30】高尾山頂・大見晴園地

高尾山頂の大見晴園地からは右手に富士山、正面左手に丹沢・大山を臨むことができます。江戸から近い大山も、庶民が大山講という登山サークルを結成し、高尾山以上に多くの参詣者で賑わいました。

また富士講の人々にとっては、高尾山が「前立ち」・富士山が「御本尊」・大山が「後立ち」の山であり、この三座をめぐることが富士山詣の本来の姿だったそうです。

高尾山頂・大見晴園地

 

自然は大きな教室!高尾山で厄除け登山

仏教の修行においては経典の読解だけでなく“身体で学ぶ”ことが重要とされます。歩いて修行することを「歩行=ぶぎょう」と言いますが、登山はまさにその典型と言えるのではないでしょうか。

山岳修験道の本質は、自然を教室にして神仏から学びを得てご利益を授かること。高尾山という自然の教室の中の“小さな自分”が、大宇宙とつながっていることを意識しながら、歩いてみませんか。

神変堂で参拝する太田さん

 

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山登りがもっと楽しくなる「山と神仏」の雑学集。人気登山ガイド、太田昭彦さんによる「山と神仏」にまつわる書き下ろしエッセイ。山に関連する神様の話や、登山道で見かける宗教遺跡の謎、山麓に伝わる伝説などについて、わかりやすい語り口で解説。

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プロフィール

太田昭彦

高校ワンダーフォーゲル部時代に登山の魅力に目覚め、社会人山岳会で経験を積み、旅行業から山岳ガイドに転身。また、20歳の時に高野山で十善戒を授かってから神仏とのご縁が少しずつ深まり、42歳で巡礼先達の道を歩み始める。登山教室「歩きにすと倶楽部」を主宰して登山者に安全で正しい登山知識・技術を伝達しつつ、地元埼玉の秩父三十四観音霊場をはじめとする巡礼の道を歩く人々を先導する「語り部」としても活躍中。著書に『ヤマケイ新書 山の神さま・仏さま 面白くてためになる山の神仏の話』(山と溪谷社)ほか。

(公社)日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・埼玉山岳ガイド協会会長・四国石鎚神社公認先達・四国八十八ヶ所霊場会公認先達・秩父三十四ヶ所公認先達。
https://www.facebook.com/alkinistclub

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