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燕岳で空模様と天気図を読み合わせ 初冬の天気のポイントを解説

山の天気を知って安全に登山を楽しもう!
基礎知識 2020年12月01日


冬の山は危険なイメージが付きまといます。周囲の人を安心させるためにも、せめて万全な気象条件を選んで登りたいものです。今回、冬というには早すぎますが11月の燕岳に登って、これなら天気の面でのリスクは少ないだろうという条件を考えました。これからの季節の山行に役立てていただければ幸いです。

 

まずは現在の天気を把握しよう

夏でも冬でも、天気の予想にはまず現在の状況を把握することが重要です。今回は2020年11月1日(日)、日帰りで燕岳の山頂を目指します。合戦尾根の登山口、中房温泉までの路線バスが運行する最後の週末です。

出発2日前の10月30日(金)は西高東低の気圧配置でした。寒気の影響で日本海には筋状雲が発生し、北陸から北海道では冷たい雨が降りました。


北アルプスは雨ではなく、雪が降り積もったことが推測されます。翌31日(土)になると高気圧が移動性になって本州付近にやってきました。北陸以北の日本海側でも日中は天気が回復して快晴の青空が広がったので、多くの登山客が入山したようです。前日に降った雪で、谷川連峰の仙ノ倉山では初冠雪が観測されています。

 

登山ができる天気か考えよう

天気予報を地上天気図、高層天気図を見比べながら、11月1日の天気を予想しましょう。晩秋以降の登山ではそもそも登山に適した天気なのかの判断が重要です。天気次第では入山しないという選択肢も含めて、夏以上に柔軟な行動を心がけましょう。 

まずtenki.jpサイト内の『山の天気』で、燕岳やふもとの気象情報を見てみます。『山の天気』ではふもとの街の天気予報や、山岳付近の数値計算結果を掲載しています。


1日の燕岳のふもとの大町市ではおおむね晴天が続き、風も弱いようです。ただ、この予報はあくまでふもとの天気予報であって、山頂の予報ではありません。山頂の様子を推し量るヒントになるものが数値計算結果です。それによると山頂に近い3100m付近の風速は午前9時で9.1m/s、午後3時には11.7m/s、翌日にはさらに風が強まる予想でふもととは傾向が異なることが示唆されています。天気の傾向をさらに詳しく知るために、高層天気図を確認しましょう。


地上の高気圧と対応している500hPaのリッジは1日9時の段階ですでに日本の東にあり、西からはトラフが近づいてきています。リッジが離れていくため地上の高気圧の中心は東に抜けて、日本列島は高気圧の後面に入っています。気温の予想を見ると、西から近づくトラフは中心に-39℃の強い寒気を持っています。


寒冷前線のだいたいの場所は、等温線や相当温位線の集中帯から推定できます。相当温位の予想図を見ると、夜にかけて寒冷前線は沿岸部に達することはなさそうですが、前線の前方にも湿り気が広がっているのがやや気になるところです。700hPaの湿り域が日本海に広がって夜には沿岸部にかかりそうです。前線が接近する前に、日本海側では雲が広がってくるかもしれません。また、前線の南側では南西の風が強まります。数値計算結果による風の強まりは、この南西風を表現しています。

以上のことから、11月1日は天気の崩れはなさそうですが、次第に雲が多くなり、寒冷前線が近づくにつれて南西風が強まることが予想されます。翌2日には寒冷前線の通過に伴って風向が西から北西に変わり、寒気移流が強まることで冬の荒天になりそうです。

晴れるかどうかという指標と同じくらい、寒気移流が強くないか、また風が強くはないかを確認しておくことが重要です。移動性高気圧の前面では、北西からの季節風が残るため日本海側の山岳では平地に比べて風や雪が長引くことが少なくありません。陸風が吹く夜間は一時的に天気が回復しても、陸風がやむ日中はガスに包まれ視界も悪くなりがちです。一方、移動性高気圧の後面では次第に巻雲などの上層雲が目立つようになりますが、風が弱く、さらに風向きが南よりになるため日本海側の山岳で天気が回復します。冬の山では、ただ高気圧を待つというよりも、今回のような高気圧の直下~後面を狙うとより安全です。

 

当日の天気をリポート 危険はなかったのか

当日の天気を実際の写真を交えて紹介しましょう。

私の住む甲府から燕岳の日帰りは難しいので、今回は安曇野穂高で前泊しました。早朝の穂高上空は快晴。風も穏やかだったので冷え込みが強く、放射霧が発生しました。


合戦尾根は北アルプス3大急登に数えられています。稜線に上がるまで雲が広がらないことを祈りますが、なかなかペースが上がりません。合戦尾根の上部には2日前までに降った雪が残り、雑に歩くと滑って危険です。やっと展望が広がるころには巻雲や巻層雲が目立つようになってきました。


午前9時半ごろに稜線に上り詰めたころには一面の薄曇り。予想よりも雲の広がりは早かったようです。また、合戦尾根では吹くことのなかった西風が吹き抜け、ウィンドブレーカーなしでは少しつらい状況でした。数値予報だと10m/s程度の風が予想されていましたが、やはりそれくらいの風は吹いていたのではないかと思います。

それでもこれ以上雲が低くなることはなく、大きな危険はない中で雪をまとった北アルプスの大パノラマを望むことができました。写真の撮れ高も十分です。


稜線の山小屋で気になる会話を耳にしました。あすの天気はどうだろうと尋ねる登山客に、山小屋スタッフが、「冬型になるからダメだろう」と応じると、登山客は「一応冬の装備は持ってきたけれど……」と少しびっくりしたようでした。

合戦尾根は山脈の東側に延びているので北西風はある程度遮られると思いますが、稜線は西風が吹き抜け荒れそうです。少なくとも冬の山の天気は他人任せではなく自分で把握しておきたいものです。

天気 雪山・冬山
教えてくれた人

宮田雄一朗

日本気象協会所属の気象予報士。山梨県で気象キャスターをしています。天気予報をきちんと伝えられるように奮闘中。日々の天気の話題の中で、登山にちょっと役立つ知識もお届けします。

日本気象協会

日本の気象コンサルティングサービスのパイオニアとして1950年に創立。以来、気象・環境・防災などに関わる調査解析や情報提供を行っている。
近年ではAIやIoT、気象ビッグデータの活用を通じ気象の調査解析、情報提供の精度を向上させ、気候変動への適応など持続可能な世界を実現する活動を支援している。
 ⇒tenki.jp

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