深田久弥+有識者による2つの視点での百名山を紹介! 『山と溪谷』1月号大特集

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

12月15日に発売した『山と溪谷』2021年1月号は、特集と連動する2大付録がついた大ボリュームの一冊。今回は、大特集「深田久弥と『日本百名山』」の注目ポイントを紹介しよう。

12月15日に発売した『山と溪谷』2021年1月号は、特集と連動する2大付録がついた大ボリュームの一冊。今回は、大特集「深田久弥と『日本百名山』」の注目ポイントを紹介しよう。

★関連記事:なぜ、いま「日本百名山」なのか。日本百名山の魅力に迫る大特集&2大付録!


深田久弥の名著『日本百名山』は、深田が登頂した日本中の何百という山々から、100の名峰を選定し、その山を登った際の出来事、山名の由来、地元や登山客にどのように親しまれてきたかなどが記されている。本特集では、なぜ深田がその山を百名山に選定したのか、選定した当時と現在とで変わったこと、そして今なお変わらずに人々を迎える山の様子などを、全国各地の有識者が分析し語っている。ここでは特集の一部を紹介しよう。


 

5 大雪山 [ 標高=2291m(旭岳)/ 所在地=北海道 ]

5 大雪山

標高=2291m(旭岳)/ 所在地=北海道

「内地へ持ってきたら、それ一つだけでも自慢になりそうな高原が、あちこちに無造作に投げ出されている。このぜいたくさ、この野放図さが、大雪山(たいせつさん)の魅力である」。そう記して深田は彷徨するように大雪山――今でいう表大雪の山々を歩いた。

百名山突破をめざす人々のなかには、旭岳(あさひだけ)だけを登って「大雪山登頂」とするケースも多いようだが、それでは深田の説いた魅力を半分も感じられないのではないか。

ぜひ「四通八達している」道を自由に結び、圧倒的な高山植物群落や溶岩円頂丘と呼ばれるいくつものピーク、神が描いたかのような残雪模様などを存分に味わってほしいと思う。層雲峡(そううんきょう)、湧駒別(ゆこまんべつ、旭岳温泉)、ともに、ロープウェイができる以前の古い登山道を使えば、大雪山の大きさ深さをさらに実感できるだろう。

文・写真=長谷川 哲


 

85 聖岳 [ 標高=3013m(前聖岳)/ 所在地=静岡・長野 ]

85 聖岳

標高=3013m(前聖岳)/ 所在地=静岡・長野

深田は聖岳でも山名の由来を述べているが、「こんな語源など忘れてしまった方がいい。そして初めから聖岳(ひじりだけ)という美しい気高い名があったことにしよう」と提案していることは興味深い。

話題の中心は山行記録になっていて、二度の敗退を経験した後、単独で聖岳登頂をめざし、大井川東俣林道、現在出会所跡と呼ばれる場所、聖平と3泊してようやく山頂に立ったと記されている。

聖岳のすばらしさは、深田が言うように日本アルプス最南端の3000m峰である点ももちろんだが、第一はその姿の美しさにあると私は思う。聖岳を望む最良の場所は上河内岳(かみこうちだけ)で、近くの百名山では赤石岳(あかいしだけ)と光岳(てかりだけ)からだが、残念ながらその両座に深田が登頂した際は天気が芳しくなかったようで、文章として残してくれなかったのはとても惜しまれる。

聖岳の第二のすばらしさは山頂部で、奥聖岳山頂手前のチングルマが咲く石庭のそぞろ歩き、山頂標識からは空に飛び出して見える赤石岳、下降意欲をそそるナイフリッジの東尾根を見下ろし、そして笊ヶ岳(ざるがたけ)のかなたに浮かぶ富士山の展望も楽しみで、深田の書くように何時間でものんびりとしたい場所だ。

文=岸田 明、写真=宮本宏明

 

百名山全山踏破をめざす登山者は、おそらく効率のよいルートで登頂する人が多いだろう。しかし、それだけでは深田が百名山に選定した魅力を満喫できるとはかぎらない。

長谷川さんの言うように、最高峰や効率を重視するのではなく、長大な縦走を思い描いたり、いにしえの登山道から山頂をめざすというように、イマジネーションがふくらみ、登ったことのある山でも新たな山行欲が刺激されれば幸いだ。

また、岸田さんは「こんな語源など忘れてしまった方がいい」という『日本百名山』の聖岳の稿を引用して紹介しているが、深田はいったいどんなことを綴ったのか、書籍の内容やその続きが気になる要素もちりばめられている。

深田と有識者、2つの視点が加わった山の紹介文はそれだけでも読み応え充分なのだが、本特集を読んで気になった山があれば、書籍『日本百名山』もぜひ手に取って読んでほしい。年末年始は『山と溪谷』と『日本百名山』で、二度楽しい読書体験になるだろう。

『山と溪谷』2021年1月号

山と溪谷2021年1月号 山と溪谷2021年1月号

2大別冊付録「山の便利帳2021」「日本百名山ルートマップ」
大特集「深田久弥と『日本百名山』」
第2特集「新型コロナウイルスに対処する 新・登山マニュアル」
特別企画「丑年に登りたい!牛の山」


Amazonで見る

発売日:2020年12月15日  価格:本体価格1182円(税別)
ページ数:236  商品ID:2820901029
http://www.yamakei.co.jp/products/2820901029.html

『山と溪谷』2021年1月号

山と溪谷2021年1月号 山と溪谷2021年1月号

2大別冊付録「山の便利帳2021」
「日本百名山ルートマップ」
大特集「深田久弥と『日本百名山』」
第2特集「新型コロナウイルスに対処する 新・登山マニュアル」
特別企画「丑年に登りたい!牛の山」


発売日:2020年12月15日
価格:本体価格1182円(税別)
ページ数:236
商品ID:2820901029

Amazonで見る

 

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

Amazonで見る

From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

編集部おすすめ記事