山で膝痛が生じる人は「登山の基本」ができていない可能性も? 「膝痛」と「登山力」の深~い関係

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現在発売中の『山と溪谷』2021年3月号。特集は「よくわかる!登山の膝痛解決法」だ。

★関連記事:痛む部位に合わせた解決アプローチで膝のトラブルを解消しよう!

登山での膝痛を解消する最も効果的な方法は、下半身の筋トレやストレッチとされることが多い。しかし、本特集の監修をしてくださった医師・北村大也先生によると、こういったトレーニングではなく、登山前や登山中の「意識」によっても、膝痛を予防することができるという。ここで挙げているものを当たり前のように思う人もいるだろうが、山で膝痛が生じやすい人は、この「登山の基本」ができていない可能性が高いのだ。

現在発売中の『山と溪谷』2021年3月号。特集は「よくわかる!登山の膝痛解決法」だ。

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登山での膝痛を解消する最も効果的な方法は、下半身の筋トレやストレッチとされることが多い。しかし、本特集の監修をしてくださった医師・北村大也先生によると、こういったトレーニングではなく、登山前や登山中の「意識」によっても、膝痛を予防することができるという。ここで挙げているものを当たり前のように思う人もいるだろうが、山で膝痛が生じやすい人は、この「登山の基本」ができていない可能性が高いのだ。

イラスト=fancomi


TIPS 1 余裕をもつのも立派な予防

山での膝痛。余裕をもつのも立派な予防

登山の膝痛にはさまざまな原因があるが、膝の痛みを引き起こす要因の一つに「筋肉の疲労」がある。登山なのだから疲労するのは当たり前と思うかもしれないが、少しでも疲労を軽減させるような意識や対策をしていれば、痛みを防ぐことは可能だ。

たとえば、「コースタイムは長いが日帰り可能な山」に行くことを想定してみよう。行程が長いと感じても日帰りができるなら、日帰りで計画を立てるのが一般的だろう。しかし、ルートの情報を集めていくなかで、苦手な急坂や膝に負荷のかかる急な下りが続くコースだとわかる場合も多い。そんなとき、少しでも不安が生じたのであれば、日帰りができるとしても自分には合っていないということ。そういったときは、無理をせずに1泊2日などの計画を検討しよう。

休息を挟むことで、日帰りよりも筋肉の疲労を大幅に軽減でき、膝の痛みに苦しみながら下山……という結果を防げる。逆に言えば、登山終盤で膝に痛みが生じる場合、自分の体力に対して計画に無理がある可能性が考えられる。


TIPS 2 疲れないペースを守る

山での膝痛。疲れないペースを守る

山での膝痛。疲れないペースを守る

※主観的運動強度・・・運動中のきつさを言葉と数値で表わしたもの。表の左側の数値は、10倍すると心拍数の目安になる。たとえば、13の「ややきつい」は、心拍数130程度になる。

山での膝痛。疲れないペースを守る

※主観的運動強度と疲労の関係・・・10人の登山初心者である大学生が山道を登ったときのもの。太い線は平均値を示している。13「ややきつい」の感覚で歩くとLT(乳酸性閾値)を超えてしまうことが多い。12「きつさを感じる手前」だと越えないで歩ける。


※主観的運動強度・・・運動中のきつさを言葉と数値で表わしたもの。表の左側の数値は、10倍すると心拍数の目安になる。たとえば、13の「ややきつい」は、心拍数130程度になる。

※主観的運動強度と疲労の関係・・・10人の登山初心者である大学生が山道を登ったときのもの。太い線は平均値を示している。13「ややきつい」の感覚で歩くとLT(乳酸性閾値)を超えてしまうことが多い。12「きつさを感じる手前」だと越えないで歩ける。

鹿屋体育大学の山本正嘉さんの研究によると、心拍数が早く「ややきつい」「きつい」と感じるなかで運動を続けると、血中の乳酸値が急激に増加し、疲労を感じるようになるという。先ほども示したように、「筋肉の疲労」は膝痛の敵。

「きつさを感じる手前」のペースをキープして行動することが重要だ。「きつさを感じる手前」というのは、おしゃべりをしながら歩けるくらいのペースと覚えておこう。活動量計や心拍計を持っている人は、心拍数120回/分以下をキープして行動するように心掛けるとよい。


TIPS 3 体からのサインを見逃さない

山での膝痛。体からのサインを見逃さない

膝の痛みがひどくなって動けなくなるという最悪の事態を避けるためにしておきたいのは、体が発するサインにいち早く気付くことだ。

休憩時に栄養補給はするけれど、体のケアはあまりしないという登山者も多いだろう。膝の違和感だけではなく全身に注意を払い、「筋肉が張ってきたな」「疲れが出てきたな」などと思ったら、その場でストレッチをしてみよう。全身のコンディションを整えておくことが、結果的には負荷がかかりがちな膝への負担を減らす手助けになる。


TIPS 4 こまめな栄養補給

山での膝痛。こまめな栄養補給

山での膝痛。こまめな栄養補給

※水分補給と体温の関係・・・気温38℃の部屋でトレッドミル(傾斜を設定できるランニングマシン)を上り坂にし、1時間ごとに小休止を挟んで歩いたもの。①(全く水を飲まない)は、4時間をすぎると疲労困憊になってしまうことがわかる。また、水と一緒に塩分を補給したほうが疲れにくい。


TIPS 2でも挙げた、山本正嘉さんの別の実験結果を見てみよう。

登り坂に設定したトレッドミルを、1時間ごとに小休止を挟みながら歩く実験で、「①全く水を飲まない」「②自由に水を飲む」「③汗と同量の水と塩を飲む」の3チームに分けたところ、③のチームの疲労度の上昇が①や②のチームと比べて顕著に緩やかだった。

言い換えれば、疲れていないからと休憩をほとんどとらず、水をあまり飲まない人は疲労しやすいということ。また、こまめに水分を補給するのではなく、少ない休憩で水をがぶ飲みしたり、水は飲んでも塩分の摂取をしない人はやはり疲労しやすい。

登山中の疲労を抑えることが膝痛予防のカギであることは、これまで言ってきたとおり。意識して、こまめな休息をとり、少量の水と塩分の補給をその都度行なおう。


まとめ

TIPS 1からTIPS 4までで紹介した内容は、安全な登山計画や、快適に登山を楽しむ行動中の意識など、「登山の基本」と言われるものばかり。一見、膝痛とは関係がないように思えても、「登山の基本」は、医学的にも科学的にも膝痛予防につながっている。当たり前を見直し、初心に戻って実践することを心がけよう。 ここで紹介した「登山の基本」以外の膝痛解消方法を知りたい人は、『山と溪谷』3月号を読んでほしい。

『山と溪谷』2021年3月号

山と溪谷2021年3月号 山と溪谷2021年3月号

特集「よくわかる!登山の膝痛解決法」
 ・第1章「“膝痛”はなぜ起こる?」
 ・第2章「登山の膝痛はこれで治す!」
 ・第3章「もっと快適に歩く」
第2特集「快適に使い続けるための山道具メンテナンス レインウェア&ダウン製品編」
特別企画「名物団子を味わう、春のハイキングガイド」
別冊付録「トレッキングポールのABC」


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発売日:2021年2月15日  価格:本体価格1200円(税別)
ページ数:196 商品ID:2820901031
https://www.yamakei.co.jp/products/2820901031.html

『山と溪谷』2021年3月号

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価格:本体価格1200円(税別)
ページ数:196
商品ID:2820901031

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From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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