茨城栃木県境・花瓶山 イワウチワとカタクリ、春の妖精たちの群生地をめぐる山旅
イワウチワやカタクリをはじめとする花々で人気の山…その名も花の山にふさわしい「花瓶山」の紹介です。栃木県と茨城県の県境にある静かな山域も、春には花とそれを求める登山者で賑わいます。
栃木の八溝山につながる花瓶山は、普段は登山者もまばらな静かな山域ですが、最近は、春にはイワウチワの群生が咲き誇る山として知られてきました。イワウチワに続いて咲き始める、まだ知る人の少ない自然のままのカタクリの群生地の探索もかねて行ってきました。
この年は、4月に入ってから雪が降るなど天候不順が続く中、久しぶりの晴れ間を得て、イワウチワの貴重な群落のある花瓶山に向かいました。
花瓶山登山口から時計回りに周回するのが通例のようですが、朝一番のイワウチワの開花をとらえたくて、向山への尾根をたどる踏み跡から登り始めることにしました。赤いリボンのところから踏み跡をたどっていったのですが、いつまでも尾根へ上がりそうにありません。しかたなく斜面をヤブ漕ぎして強引に尾根へ上がることになってしまいました。最初に尾根の末端にあるはずの群落を見逃したようです。そこは起点に戻ってから再度見に行くことにして、向山を越え、大倉尾根を進みます。
途中で、ちらほらとイワウチワの白い花がが見え始め、やっと小さな群落をいくつか見つけることができました。久しぶりの陽光を浴びて、いっせいに咲き出したかのようです。陽を浴びて、群舞するかのようなイワウチワの姿をじっくり捉えることができました。
花瓶山の山頂は展望のない樹林帯のなかにひっそりとありました。
花瓶山から先の尾根に足を伸ばし、いくつかの群落を見つけました。さらに八溝山に続く尾根道を、次郎ブナ、太郎ブナ跡をへて、高度720m付近まで足を伸ばしましたが、踏み跡が次第に不明瞭になり、ほとんどヤブ漕ぎになってきたところで引き返すことにしました。山頂から先は道標がほとんどなく、作業道のような踏み跡がいくつもあって、迷いやすいところです。
山頂に戻り、次は東南方向の尾根に沿って進み、カタクリの群生地を探索します。踏み跡をたどると、ほどなくカタクリの花が見えだし、やがて斜面一面のカタクリの群落地にたどり着き、優美なカタクリの花たちに出会うことができ、感激です。
帰路は花瓶沢から林道を経てうつぼ沢出合へ戻りました。
今年は、すでにイワウチワが咲き始めているようです。カタクリもまもなく開花が始まりそうです。(取材日=2015年4月12日)
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
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