甲斐駒ヶ岳の大展望とクモイコザクラ 南アルプス前衛・鞍掛山へ

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山梨県・鞍掛山は、お隣の日向山に比べるとマイナーな山ですが、甲斐駒ヶ岳の大展望地です。初夏には新緑とクモイコザクラやツヅジの花々が楽しめます。

堂々たる山容を見せる甲斐駒ヶ岳

日向八丁尾根は、甲斐駒ヶ岳へのマイナーで長大なルートですが、その途上にある鞍掛山は甲斐駒ヶ岳の大展望が得られることで知られます。

初夏には鞍掛山山頂付近の岩稜地帯に咲くクモイコザクラの群生も楽しみです。

稜線上はヤセ尾根もあり、コースタイムも長いことから、健脚向けのコースです。

モデルコース:矢立石登山口~鞍掛山~日向山~矢立石登山口

 

コースタイム:日帰り約9時間20分

⇒鞍掛山周辺の登山地図

矢立石の日向山ハイキングコースの入口よりスタート。崩壊して荒れた林道を、落石に注意しながら進みます。

日向八丁尾根へ向かう前に、まず錦滝へ。水しぶきが降りかかる岩壁にしがみつくように咲く可憐なユキワリソウを見ながらひと休み。

厳冬期には氷瀑にもなる錦滝。さわやかに水しぶきを上げていた

 

錦滝の岩壁に咲くユキワリソウ

錦滝からは、木の根や岩をつかんだり、クサリ場もまじえた急登が始まります。往路では日向山へは寄らず、日向八丁尾根へ直接上がるルートをとります。踏み跡はややうすく、落ち葉に隠れたりしているので、慎重なルートファインディングが必要です。一汗かいて、尾根筋の登山道に出ます。

新緑がまぶしい痩せ尾根がつづく日向八丁尾根の登山道

鞍掛山への稜線は、しばらくは、やせ尾根が続き、気を抜けません。ブナの輝くような新緑にトウゴクミツバツツジの燃えるような赤紫の花が映えてみごとな景色です。樹間からは甲斐駒ヶ岳もしだいに大きく見えてきます。

新緑と美しいコントラストをつくる赤紫のトウゴクミツバツツジ

樹林帯の尾根道をさらに登り続けて、ようやく駒石の分岐点へ。鞍掛山へはコルまでいったん下った後、再びの急登です。途中、ようやくお目当てのクモイコザクラの群落に出会えて、感激ひとしお、長い登りの疲れも癒やされます。

鞍掛山山頂付近の岩場にのこるクモイコザクラの群落

鞍掛山山頂は展望はありませんが、山頂から6分で展望台へ。甲斐駒ヶ岳の堂々たる全容が一望の下です。

帰路は砂浜を思わせるようなザラ場に特異な岩峰が立ち並ぶ日向山を経由して、ヤマツツジの美しいなだらかなハイキングコースをたどり矢立石へ戻りました。(取材日=2016年5月21日)

鞍掛山データ

 

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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