ミヤマキリシマが咲くくじゅう連山へ。扇ヶ鼻・星生山を日帰り
くじゅう連山が賑わう季節。ミヤマキリシマが咲く星生山&扇ヶ鼻へ。日帰りでのアクセスが良く、比較的混雑が避けられるコースです。
今年は例年より早い梅雨入りで山に登れない日が続いていますが、そんな雨の多い5月下旬から6月初旬にしか見られない花があります。
それは、この時期だけに咲くミヤマキリシマです。
九州特産のツツジ科の半落葉低木で枝先に2~3個の紫紅色花をつけ、雲仙・阿蘇・くじゅう・霧島など火山性の山に多く見られます。くじゅう連山では広い範囲に群生地があり、くじゅうの代名詞とも言える花です。
梅雨の晴れ間を狙って九州の屋根でもある、九重へでかけました。
ミヤマキリシマは、平治(ひいじ)岳や大船(たいせん)山にもっと大きい群生地があることで知られていますが、今回は登山口までのアクセスと混雑を避けて、扇ヶ鼻と星生(ほっしょう)山に登ることにしました。
モデルコース:牧ノ戸峠~沓掛山~扇ヶ鼻~星生山~沓掛山~牧ノ戸峠
コースタイム:日帰り約4時間5分
牧ノ戸峠(30分)沓掛山(50分)扇ヶ鼻分岐(20分)扇ヶ鼻(20分)扇ヶ鼻分岐(15分)西千里ケ浜(20分)星生山(20分)西千里ヶ浜(15分)扇ヶ鼻分岐(40分)沓掛山(15分)牧ノ戸峠
登山口は、由布院から阿蘇小国までを結ぶやまなみハイウエイ(県道11号)の最高所にある牧ノ戸峠(標高約1330m)です。
レストハウスもあり登山者と観光客でいつもにぎわっています。くじゅう連山に登る登山者の利用が最も多い登山口です。
途中、2箇所の展望所がありそこまでは観光客も歩けるようにコンクリートと階段の遊歩道が整備されています。
そこから先は、岩混じりの登山道に変わり、岩が積み重なった沓掛(くつかけ)山からは、久住山へ一筋に道が延び、その先には三俣(みまた)山や星生山、扇ヶ鼻など、九重連山の名峰たちを見渡すことができます。
下山時は光の角度が変わり、朝とは違った景色に出会える場所ですが、足場の悪い岩場であるうえに、登り下りで一番混雑する場所なので注意をして通過します。
扇ヶ鼻分岐までは稜線上の緩やかな登り道です。
小広場になった分岐には、腰掛けるのにいい岩があり毎回ここでひと休み。
そこから急坂を登りきると、扇ヶ鼻山頂手前の肩のような場所につきます。
扇ヶ鼻の「鼻」は飛び出した地形を表す言葉らしく、扇型に張り出した台地が広がっていることが名前の由来のようです。この草原状の台地一帯がミヤマキリシマの群生地で、たくさんの野草も咲くお花畑を、ぐるりと周回できるように道がついています。
ミヤマキリシマにばかり目を奪われがちですが、ふと足元を見るとハート型の葉を2枚広げ鶴が舞う姿にたとえられたマイズルソウの白い小さな花や、光沢のある丸い葉から伸びたピンクで愛らしい花のイワカガミも咲いています。
前方に大きな岩が見える場所が山頂です。北に飯田高原、南に久住高原、その奥には阿蘇や祖母山がそびえる雄大な展望が広がっています。
展望を楽しんだら、今度は東側の周回路を歩いてみます。同じ溶岩台地の広がりを見せる肥前ヶ城の荒々しい西斜面の景色を見ることができます。その奥の先鋒が久住山です。
扇ヶ鼻分岐まで戻り、次は星生山へ。
ケルンが立ち並ぶ西千里ヶ浜から見上げる急坂を登りきった尾根を、右へ進むと星生山頂です。大岩が累々と積み重なった山頂からは、今も火山性の噴気を上げる硫黄山や山頂部がミヤマキリシマに染まった三俣山、平治岳、大船山などの展望を楽しみました。
星生という素敵な名前は、法性という仏教用語からきているそうです。
下山は往路を戻り、牧ノ戸峠レストハウスで名物のソフトクリームに舌鼓で花の山旅を終えました。
プロフィール
池田浩伸
佐賀県佐賀市在住。8年間NPOで登山ガイドや登山教室講師を務めた後、2019年くじゅうネイチャーガイドクラブに所属し、阿蘇くじゅう国立公園をメインに登山ガイドや自然保護活動を行なう。著書に『九州百名山地図帳』『分県ガイド 佐賀県の山』(山と溪谷社・共著)がある。
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