素早く浄化できて取り扱いも簡単な浄水器 プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L|高橋庄太郎の山MONO語りVol.90

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、プラティパスの「クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L」です。

文・写真=高橋庄太郎

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

僕は毎年、北海道へ登山をしに行く。そのときに必ず持参するのが「浄水器」である。生水を飲むとエキノコックスという寄生虫の卵が体内に入る可能性があるからだ。また、最近は本州などでも以前は安全だった水場の水が、信用しきれなくなってきてもいる。日本アルプスのある水場では、水をくむ場所のすぐ目の前にトイレットペーパーで用を足した跡があったし、沢の上流で人間の汚物を発見したこともある。シカやイノシシの数が増え、水源となる土の中に彼らの排せつ物が大量に混入している可能性もある。だから、“あの水場は怪しい”と思ったら、北海道以外の山々でも浄水器を大いに活躍させているのだ。

浄水器といえば、大量の飲み水が必要になる夏場のイメージがあるかもしれない。しかし、実際は沢の水が最も少なくなり、なかば流れが止まって溜まっているような水すら探さねばならなくなることもある晩秋から冬にかけてこそ、必要となる場合も多い。

 

まずはパーツをチェック

そんなわけで、今回取り上げるのはプラティパスの浄水器の新作「クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L」である。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

これは手のひらに乗るサイズの小型フィルターと、1.0Lのリザーバー(水筒)のセットだが、リザーバーを除いたフィルターのみの単体でも「クイックドローマイクロフィルター」という製品名で発売されている。

パッケージの中身は、このような感じ。収納袋くらいは付属していてもいいのにと思うほどシンプルで、フィルターが内蔵された青いカートリッジとリザーバーのみのセットだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

カートリッジのサイズは、長さ13㎝、直径3.5㎝。丸めた状態のリザーバーも、カートリッジと同じような大きさだ。

次に、リザーバーを広げた状態である。当然ながら同社で販売されている1.0Lのリザーバーと同様のサイズ感だが、口の部分がかなり大きいことには注目しておいてほしい。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

このリザーバーには「DIRTY」という文字が印刷されている。これは浄水する前の水をリザーバーに入れ、フィルターを通してきれいにしていくことを意味している。

最重要なカートリッジとフィルターを改めて確認しよう。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

このフィルターが浄水できるのは、毎分3.0L。リザーバーを握ったりして圧力を加え、フィルターを通して水を押し出したときのスペックだ。カートリッジの両端にはキャップが付けられていて、内部のフィルターの繊維が汚れないようになっている。重量はたった61g(リザーバーを加えると101g)しかない。

はじめにお見せするのは、リザーバーとつながるほうのキャップを外した状態だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

中央に並んでいるのが、フィルターの繊維である。汚れてしまうのでお勧めはしないが、実際に指で触ってみると、まるで弾力性が高いゴムのような質感だ

次に、きれいな水が出てくるほうのキャップを開けた状態である。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

直接、口をつけて飲めるように直径1.5㎝ほどの小さな口になっている。

さらに同じキャップをまわし、完全に取り外した状態が、こちら。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

左側の大量の白い点ひとつひとつがフィルターの繊維で、これが先ほどお見せした反対側のフィルターの末端になっているというわけである。

 

使い方は簡単! 素早い浄化が可能

ここからは実際の使い方に入っていく。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

まずはリザーバーのキャップを外す。リザーバーの口のサイズは3.5㎝あり、水を入れやすい大きさだ。

そして、浄水したい水をリザーバーに入れる。リザーバーの口の部分につけられているハンドル部分を持つと、流水が内部へ行っていきやすい。細かい部分だが、気が利いたディテールだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

だが、浅い水溜まりのような場所から水を得るときは、このようにスムーズにリザーバーへ水が流れ込んでいかない。どのような場所で水が汲めるかわからないときは、必ず小さなコップのようなものを持参し、組み合わせて使いたい。僕も以前、コップなしで池の水をこのようなリザーバーに入れようとして、非常に苦労した経験がある。

そして、カートリッジをねじ込むようにして取り付ける。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

緩んでいると、リザーバーに圧力をかけたときに漏れてしまうので、注意してほしい。

あとはリザーバーに圧力を加えるだけだ。片手で握っただけでも、浄化された水がドンドン出てくる!

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

先ほど、僕がこのフィルターの浄水能力を「毎分3.0L」などとさらっと書いておいたが、よく考えると毎分3.0Lというのはものすごいことなのである。

キャップを外して様子を見ると、フィルターの細い繊維1本1本から染み出すように、浄化された水が流れ出していることがよくわかる。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

それぞれの繊維は極細だが、それが何百本も集まることで、すばやい浄水を可能にしているのだ。

このような状態で浄化された水が流れ出してくる浄水器は僕も初めてだが、見ているだけでなんとも面白かった。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

じつは同社の「グラビティワークスフィルターシステム4.0L」という浄水器を、僕は長らく使い続けてきた。これは「グラビティ=重力」というわけで、リザーバーを握ったり押したりして圧力をかけるのではなく、浄化する前の水を入れたリザーバーを高いところにつるし、その水の重さでフィルターに水を流し込んで浄水していく方式だ。この製品の浄水能力は毎分1.75Lで、クイックドローマイクロフィルターに比べると半分強である。

だが実際に使ってみると、もっと遅いというのが正直なところ。浄化する水によっては4.0Lを浄水するのに30分くらいかかることも珍しくはない。リザーバーとフィルターを連結したら、あとは放置しておくだけで浄水でき、非常に便利な存在で愛用し続けてきたが、ときどきもどかしくなることもなかったわけではない。それに比べると、クイックドローマイクロフィルターの性能は驚くべきものだ。製品名に「クイック」という言葉が入っているのは伊達ではない。

浄化された沢水は、本当においしい。今回のテストでは、本来ならば浄水する必要がないきれいな水も浄水して飲んでみたが、そのままダイレクトに飲んでも、フィルターを通したものを飲んでみても、ほとんど味が変わることはなかった。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

もちろん山の水の冷たさもそのままだ。山の水に含まれる雑菌は煮沸しても除去できるが、それではその場で冷たい水が飲めなくなる。やはり浄水器のほうが安全、簡単、燃料いらずと、メリットばかりだ。

カートリッジに口を直接つけて飲むのではなく、より大型の別のリザーバーやボトルなどに浄化した水を移すと、行動中の飲み水として保管しやすい。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

ただし、この作業はちょっと面倒かもしれない。というのも、ボトルのようなものであればどこかに立て、そのなかに浄化した水を流し込めばいいのだが、プラティパスのリザーバーのように柔らかな素材のものは、地面に凹凸がある場所では立てておきにくく、そもそも立てることができない形状のものもある。すると、上の写真のように宙に浮かした状態で浄化した水を流し込んでやるしかない。片手で浄化するリザーバーを握って圧力をかけねばいけないため、少々疲れるし、時間もかかってしまうのである。浄化した水を入れるリザーバーと、もっと確実に連結できるなんらかのパーツが開発されるとよさそうだ。

地味な点だが、僕がうれしかったのは、取り外したリザーバーのキャップとカートリッジのキャップのちょっとしたコンビネーションだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

これらは口径が合い、以下の写真のように連結できるのである。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

浄水中に外しているキャップの内側が汚れにくくなり、地面や泥の上に落としても衛生的。また、キャップというものはなくしやすいものだが、このように連結すれば目立つ大きさになり、紛失する恐れも軽減してくれる。

 

ペットボトルとの組み合わせも可能

キャップを外したカートリッジの内側には、さらに螺旋状のミゾが刻まれている。これはペットボトルの口の螺旋に合わせた口径となっている。つまり、クイックドローマイクロフィルターはペットボトルとも連結して使用可能なのである。そこで、ここからはペットボトルと組み合わせたときに使用した様子を紹介していきたい。

ペットボトルは柔らかな素材のリザーバーとは異なり、溜まった水でも汲みやすいという長所がある。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

かさばるのが短所だが、ほとんどタダで手に入れられるのもいい。浄化する前の水を入れれば当然汚れるが、帰宅後には気軽に捨てられる。

次の写真は池から汲んだペットボトルの水。このなかには、細かな泥や粉砕された落ち葉が大量に浮遊していた。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

いくら高性能のフィルターでも、これだけの浮遊物が混じった水を通すと、あっという間に目詰まりを起こしてしまう。

そこで……。浄水器とともにコーヒーを淹れるのに使うペーパーフィルターのようなものを持参しておき、浄水する前に大きな粒子だけでもあらかじめ除外する。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

これはクイックドローマイクロフィルターに限らず、フィルターを使った浄水器を使用する際の鉄則である。

一見では濁りが取れた池の水。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

だが、微粒子や細菌まで除去されているわけではない。

このペットボトルにカートリッジを連結。じつに手軽である。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

ペットボトルを主体にして使用すれば、「クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L」というセットではなく、「クイックドローマイクロフィルター」のみを購入すればよく、いくらか安上がりに済ませることができる。すでにプラティパスの他のリザーバーを持っている方なら、それを組み合わせて使ってもいいことは言うまでもない。

フィルターを通した水は、ここでもうまかった。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

この池の水はもともと比較的きれいなこともあり、僕は思い切って浄化する前の水も口に含んでみたが、そのときはいくらか土臭かった。だが、フィルターを通すと土臭さはほとんどなくなっていたのである。

水を浄化するフィルターの性能というものは目に見えず、メーカーが公表したスペックを信じるしかない。クイックドローマイクロフィルターはメーカーの説明によれば、0.2μm(ミクロン)以下の微粒子は除去できないという。しかし逆に言えば0.2ミクロンよりも大きい微粒子は取り除けるということ。化学物質やウィルスも除去できないが、細菌や寄生虫の卵、泥などを浄化するのには十分すぎる機能性だ。ウィキペディアによれば、大腸菌の大きさは「短軸0.4-0.7μm、長軸2.0-4.0μm、直径0.25-1.0μm」。また、エキノコックスの卵の大きさは30μm程度なのである。

ところで、気を付けて使っていても、ときどき掃除のようなことをしてやらないと浄水器のフィルターは次第に目詰まりしていく。浄水器によっては“バックフラッシュ”といって、フィルターへ反対向きに水を流し込み、濾し取っていた微粒子を流しだす作業をやらねばならず、少々面倒な作業だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

だが、その点でクイックドローマイクロフィルターはラクなのである。水を入れたリザーバーやペットボトルと連結し、ただ振るだけでよいからだ。水と接するフィルターの面積が広いため、わざわざバックフラッシュを行なう必要がないのだろう。これもまたこの製品の大きな長所なのであった。

 

まとめ:取り扱いもメンテナンスもラクな優れもの

僕はこのクイックドローマイクロフィルターを夏から秋にかけて、大いに使った。おそらく数十リットルにはなったはずだが、フィルターが目詰まりを起こすことはなく、じつに快調。フィルターの寿命は約1,000Lとされているので、まだまだ使うことができるはずだ。先に述べた僕が愛用しているグラビティワークスフィルターシステム4.0Lはすでに目詰まりを起こし始めているようだが、まだ1,000Lどころか、その半分程度しか使っていない。今回の数か月のテストだけでは判断できないが、本当にクイックドローマイクロフィルターが1,000Lの浄水に耐えられるものであれば、大したものである。

なにより、浄水にかかる時間が短いのが本当にすばらしい。行動中に流水や水溜まりを見つけたらすぐに浄水することができ、時間のロスがない。重量61gはいつも持ち歩いていてもあまり負担を感じない。わざわざ大量のきれいな水を持ち歩くよりも、途中に沢や池があることがわかっている場所であれば、確実に装備を軽量化できるだろう。

これは相当に優れた浄水器だ。僕もこれまでの愛用品から乗り換えたくなってしまった。ひとつ持っていて損はないはずである。

 

今回のPICK UP

プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

プラティパス/クイックドローマイクロフィルター&リザーバー1.0L

価格:6,050円(税込)
重量:101g(本体、リザーバー)

メーカーサイトへ >>

プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
Facebook  Instagram

高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!

編集部おすすめ記事