南木曽岳山頂へ安全に登るのに欠かせないハシゴや木段の維持補修を継続。南木曽山士会|日本山岳遺産の横顔 vol.12

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。第12回は、中央アルプス南西部の南木曽岳で長年、登山道整備を続けている南木曽山士会を紹介する。

写真=南木曽山士会 取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年12月号掲載記事

写真=南木曽山士会
取材・文=一ノ瀬伸
『山と溪谷』2021年12月号掲載記事

 

■日本山岳遺産候補地を募集中!

南木曽山士会

南木曽山士会 〈 2015年度認定 〉

Area:南木曽岳
Main activity:登山道整備
Group profile:
地元有志が集まり、30年以上前から南木曽岳で登山道整備などのボランティア活動を行なっている。登山者参加型の整備イベントも実施。2015年の日本山岳遺産認定に際し、グループ名を「南木曽山士会」とした。
https://nagisodake.hatenablog.com/

中央アルプス南西部に位置し、御嶽山(おんたけさん)・木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)と並んで「木曽三山」に数えられる南木曽岳(なぎそだけ)。豊かな木曽五木が覆う急峻な独立峰で、古くは信仰の対象として修験者らに登られてきた歴史ある山だ。その裾野には旧中山道(なかせんどう)の宿場町であった妻籠宿(つまごじゅく)や馬籠宿(まごめじゅく)といった名所があり、観光やトレッキングで国内外からの高い人気を得る。

南木曽岳山頂への道は急登が続く。そんなハードなコースを安全に登るために欠かせないハシゴや木段の維持補修を続けているのが、南木曽山士会だ。

活動が始まったのは30年以上前。JR中央本線南木曽駅前で土産店を営む現会長の石川文雄さんの呼びかけで、地元有志が集まり登山道の清掃をしたのがきっかけだった。その後、登山道補修やササ刈り、山頂にあるトイレの管理などにも取り組むようになった。

南木曽山士会

登山道の木段を補修する南木曽山士会のメンバーたち

長い間、南木曽町内の観光業関係者、町職員ら10人ほどのメンバーで作業をしてきたが、2016年からは長野県の「みんなで信州の山岳を守ろう! キャンペーン」に合わせ、一般登山者を募って活動を実施している。参加者はメンバーとともに資材の荷上げを行なう。コロナ禍で昨年と今年は一般募集を停止したが、多い年は県内外から100人以上が集まる盛況ぶり。同会事務局の西尾真一さんは感謝を口にする。

「1回目のキャンペーンを終えて、『楽しかったからまたやろう』という話になり、毎年恒例のイベントになりました。メンバーだけでは人手が足りない部分があるので、登山者のみなさんの協力を得られてとてもありがたいです」

南木曽山士会

2020年の作業後、南木曽岳の蘭(あららぎ)登山口にて

キャンペーンを通じて、南木曽岳の魅力を伝えるとともに、新メンバーの加入にも期待する。

「今後も登山道を守っていくために活動の継続が大切になります。大変な作業ではありますが、やりがいを感じてもらってメンバーが増えるとうれしいです」

重い木材を運び込み、傷んだ道を一つひとつ直していく。登山者の安全のために地道な作業を続ける。簡単なことではない。

「登山道で『ありがとう』『お疲れさま』と声をかけてもらえると、やってよかったなと心から思いますね」

★日本山岳遺産認定地 詳細:南木曽岳[ 長野県 ]南木曽山士会(2015年)

日本山岳遺産候補地および助成団体を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体。
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体。
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体。

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費。
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費。
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費。

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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