登山中にスズメバチに出会わないようにするには? それでも刺されてしまったら?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

8~10月は、スズメバチが最も活発に動き回る時期。とくに9月~10月にかけては新しい女王蜂が誕生する時期で、スズメバチの攻撃性も高く、刺されるリスクも大きい。登山中に刺されないようにするために、刺されたときにすべき行動は?

 

ハチに刺されたくない! 対策について

質問:
先日ある山で、登山中ずっとハチに追い回され、悩まされました。ハチは色や臭いに寄ってくるなど聞いたことがありますが、ハチ対策にはどんなものがありますか?

 

あれは、何年か前の北アルプス最北端・栂海新道を下降している時でした。長かった朝日岳からの下山も大団円間近。木々の間から日本海もチラホラして、あと5分ほどで坂田峠に着く、という時・・・。いきなりバチンと頭を叩かれたような痛み、そしてブーンという羽音。

「やっちまった、ハチだ」と思った途端にしゃがみ込んだ。人生何回目かに、スズメバチにやられた瞬間――。

ハチは何回も刺されると抗体の形成からショック症状を起こすことがあり、何か所も同時に刺されると死ぬ事もあると聞いていた。「キンカン」を塗っておけば良いわけではなさそうだ。

医療関係に詳しい友人に携帯で電話。「今、震えなどがなければ、安静にして様子を見る」「患部をボイズンリムーバで吸い出す」「水で洗い流す」などの指示を受けました。 

――結局、痛みを堪えて親不知の海へ。そして、しばらく痛みは続きました。

 

刺されないための対策と、刺されてからの対策を!

スズメバチに刺された時の対処は、医療機関に診断してもらうのが先決ですが、山の中では、なかなかそうはいきません。私が指示されたように、「患部をボイズンリムーバで吸い出す」、「水で洗い流す」、「震えなどがなければ、安静にして様子を見る」を行うと良いでしょう。

そのためにも、刺されたときの対策グッズを、スズメバチの時期は用意しておきたいものです。ボイズンリムーバーのセットはパーティーに一つ、準備しておくと良いでしょう(アウトドアショップで1000~5000円程度)。

そのうえで、刺されないようにする対策です。スズメバチは、いきなり襲ってくる奴もいますが、まずは偵察に来るそうです。山で見かけた際には、手で払ったりせずに、静かに遠ざかるのを待ちましょう。刺された場合でも、静かに現場から離れる、という行動が必要になるそうです。

また、どうも黒い物に攻撃する制汗剤に寄ってくる、などの習性があることが知られています。活動期には黒系の服は着ない、髪の毛を極力出さない、制汗剤は使わないなどの対策は有効なようです。

なお、過去に刺されたことのある人はエピペン(蜂毒に起因するアナフィラキシーショックを応急処置する自己注射薬)などのショック対策をご自身で準備することも大切です。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」
 ⇒質問・お悩みはこちらから

山の疑問・難問、山岳ガイドが答えます!

登山に必要な知識は、どのように学んでいますか? 今知るべき、知識や技術に関する質問を、山岳ガイドが次々に回答していきます。

編集部おすすめ記事