定番の山フライパン&合わせて使いたい調理器具を深堀りレポート! ユニフレーム/山フライパン17㎝|高橋庄太郎の山MONO語りVol.92
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、ユニフレームの「山フライパン17㎝」です。
文・写真=高橋庄太郎
山での調理器具といえば、なんといっても「鍋型」の金属製クッカーだ。丸型を中心に角形なども販売され、たんなる形状だけではなく“深さ”によってもバリエーションが展開されている。簡単に言えば、口径よりも縦のほうが長い“深型”と、口径よりも縦のほうが短い“浅型”である。
そのなかでも、とくに浅い形状のものはフライパンとして扱われていることもある。山ではなく日常生活で使うものならば、「鍋」と「フライパン」は使用素材やパーツの形状などは大きく変わるものだが、山道具となると、鍋とフライパンは深さ以外にはほとんど大差ない。ただ、フライパンと呼ばれるタイプのほうが、焦げを防止するために内側へ樹脂などをコーティングしたものは多い。
定番の山フライパンに加え、フタとロースターの3点をテスト
さて、今回取り上げる製品のひとつは、ユニフレームの「山フライパン17㎝」だ。特別変わった新製品などではなく、むしろ“スタンダード”というのにふさわしい定番的存在である。まずはその特徴を確認しよう。
本体の素材はアルミニウムで、内側には焦げを防止するフッ素樹脂加工が施されている。収納時のサイズは直径約17㎝・高さ約4cmで、容量は約0.8L。重量は約170gだ。
ハンドルのみ素材が異なり、ステンレス。
他のメーカーのアルミ製クッカーには、ハンドルもアルミで作っている製品が多いが、アルミは柔らかくて曲がりやすく、その結果、この形状のハンドルはクッカーから外れやすくなることがある。しかも一回外れやすくなるとクセが付いてしまい、使いにくくなる。そんなことを考えると、このようにハンドルだけ硬いステンレスというのは賛成だ。アルミニウムよりも少し重くはなるが、外れたり、曲がったりするよりはマシである。
今回、このフライパンには別売りの「山リッドSUS」というフタを組み合わせた。メニューによっては必要ないが、やはりフタがあったほうが調理の幅は広がる。
サイズは直径約16.9㎝、ツマミを含む厚みは約2.6cm。ステンレス製で重量約115gだ。このフタもアルミ製であればもっと軽量に作れたはずだが、ステンレスには熱が伝わりにくいという特徴があり、フタの材質として選ばれたようである。
フライパンとフタのセットへさらに組み合わせたのが、「ミニロースター」。つまり、焼き網だ。バーナーパッドに使える細かなメッシュが付き、収納時は直径約15㎝、厚み約1.5cm。焼き網の素材はクロームメッキを施した鉄で、メッシュは特殊耐熱鋼FCHW2である。
重量は合わせて約135g。金属は針金のように細いと火にかけているうちに酸化しやすく、これがただのアルミであればすぐに劣化して壊れてしまうだろう。だから、重量がかさんでもクロームメッキで酸化しにくくした鉄で作るのは理にかなっている。
焼き網とメッシュは組み合わせてもセパレートでも使え、簡単に着脱可能だ。
ここまで紹介した3点は、以下のように重ねて収納できるサイズで選んだ。ただし、このまま収納するとフライパン内側のフッ素加工が傷む恐れがあり、ミニロースターはなにか別の袋に入れてから収めたほうがよいだろう。
重量の合計は、約420g。登山向けのクッカーは軽量なアルミが主体で、さらに軽いチタンも人気だ。それを考えると、アルミ以外にステンレスや鉄を使ったこのセットが少々重くなるのは仕方ない。
言い忘れたが、山フライパン17㎝には収納袋も付属している。水分が付着しがちなクッカーを入れるためか、素材は乾燥しやすい化繊のメッシュである。
出っ張ったツマミのままでフタを合わせても、かなり余裕をもって入れられるサイズだ。
さて、今回はなぜこのような組み合わせを選んだのか?
非常に個人的なことで恐縮だが、この記事を書いている僕は年間に野外で100泊する年もあるほどテント泊を行なう日数が多く、その際はほとんど自炊をしている。
このとき、一般的な「鍋型」クッカーを使っていると、メニューは必然的に「煮る」ものになりがちだ。焦げ防止加工がプラスされたクッカーであれば、ときどき「炒める」料理にすることもないわけではないが、深さがあるクッカーは炒めものが少ししにくく、調理後にきれいにするのにも手間がかかる。また、直火で「焼く」料理は不可能だ。オートキャンプのようなときならともかく、登山中は軽量性を重視するため、アルミやチタンの鍋型クッカー以外は選択肢としてほとんど考えてもいなかったともいえる。
だが、僕はそんな「煮る」ばかりの野外料理にはもう飽きてしまった。そこで自分の野営料理に「煮ない」メニューを加えたくなり、スタッキングできるサイズ感の“フライパンとロースター”の可能性を試してみたかったのであった。そのためには調理器具が少々重くなっても仕方ない。
調理をしながら検証スタート
そんなわけで、まずはフライパンを使って「チャーハン」を作ってみた。材料として用意したのは、コンビニで買ったオニギリ2個のみで、油や調味料すら使わないメニューだ。味は選んだオニギリの具材で決まるが、それぞれのオニギリを別の具材にして、自分好みの味を考案するのもおもしろい。
じつはこのコンビニのオニギリで作るチャーハンは、昔は僕の定番料理。だが、焦げ防止コーティングなどがなされていないクッカーでおいしいものを作るのは難しかった。炒め切る前にクッカーが焦げ付き、大変面倒なことにもなるためだ。だから、最近はほとんど作ることがなくなってしまっていた。
今回は作り方を説明する記事ではないので、以下の写真はすでにできあがった状態である。
ノリは外し、ゴハンと具を突き崩しながら、油さえ加えず、ただただ炒めるのみで完成する。
もともとはオニギリだったとは思えないほど、ゴハンにしっかりと焦げめがつけられた。
チャーハンというよりも焼きメシといったほう近いが、これくらい炒めたほうが香ばしくてうまい。
食べ進むと、フライパンのどこも焦げていないことがわかる。細かな食べ残しも付着せず、さすがはフッ素樹脂加工のフライパンだ。
よく見れば、ハンドルを取り付けるリベットの部分だけは焦げていたが、これも簡単にはがすことができる程度のものだった。
はじめに作ったチャーハンは大成功である。
次に、ミニロースターのメッシュをバーナーパッドとして利用し、「焼き鳥」の缶詰を温めてみた。
バーナーパッドのおかげで火の熱が缶の底面全体に広がっているようだ。缶詰をじかに火にかけると底面で熱が受ける場所にムラが出るので、このほうがやはり均一に加熱しやすい。ただしドロっとした焼き鳥のタレもスチール缶に入っているので、弱火でジワジワ加熱しないと全体が加熱される前に焦げ付いてしまう。注意が必要だ。
焼き鳥を食べ終わった後はメッシュの上に焼き網を加え、今度はモチを焼いてみた。
これもまたバーナーパッドの効果で熱が広がり、さらに焼き網が一段高くなることでモチが火に直接触れることもなく、なかなかいい感じに焦げ目がついていく。
焼き終わったら、先ほどチャーハンを作ったときに残していたオニギリのノリで巻き、磯辺焼きに。塩気としてはこれまた先ほどの焼鳥のタレの残りをモチに塗った。この成り行きで考案した味付けが意外とうまい。
いや正直なことを言えば、たしかにうまいのではあるが、焼き鳥と連続して食べると、やはり同じタレの味。新鮮味はなく、すぐに飽きる。やはり醤油でも持ってくれば、もっとうまかったはずだ。
次に再びフライパンを使い、今度はレトルトのモツ煮に野菜を投入し、具を増やして煮込んでいく。
加えた野菜はタマネギとニンジンである。
モツ煮は水分が飛ぶと味が濃厚になりすぎるので、ある程度の量の水も加え、フタをして加熱していった。このようにフライパンでも「煮る」料理ができるのは言うまでもない。
最後に刻んだネギを投下して、完成。
モツ煮はチャーハン以上に焦げ付きやすい料理だったが、フライパン内部に一切の焦げはない。
フライパンよりも鍋型クッカーのほうが作りやすかったかもしれないが、1~2人分であれば、このサイズのフライパンでもあふれることはない。
ここまでひとりで作り、撮り、すべてを食うと、さすがに腹がいっぱいになってしまった。本当はもう食いたくはないが、僕は最後に焼き網でベーコンをあぶることにした。
もともとは大きなブロックをステーキのように焼いてみようと思っていたのだが、胃袋が限界だ。テストは小さめの一切れで許していただこう。
脂が落ちないようにじっくり火を通していくと、うまそうな焦げ目がついていった。本来は僕の好物だけに、空腹のときに食いたかったと考えながら、胃に収めた。
しかし、結果的にはこの一切れでよかったのだと思う。ステーキのように大きいものを焼くと火が通る前に余分な脂が流れ出し、おそらく焼き網とバーナーパッドに過度な焦げが付いてしまっただろう。この一切れでも少し焦げは付いたが、帰宅後にこすって洗えば簡単に流し落とせる程度だった。
スタッキングについての一考
ところで、最後に今回使ったフタについての一考をお伝えしたい。
「山リッドSUS」の外輪には、よく見ると2重のミゾが切られている。じつは「山フライパン17㎝」には「山フライパン17㎝深型」という深さ違いの製品があり、それも加えてスタッキングするときのためにミゾが二重になっているのである。
スタッキングの方法は本筋の話から逸脱するので省略させていただくが……。
ともあれ、その結果として、このフタは裏返してもぴったりと「山フライパン17㎝」に合わせられるのだ。そこで僕は考えた。うまくやれば、ツマミの出っ張りをなくして収納できるのではないか、と。
ツマミはネジ式で、簡単に取り外せる。
このように外したツマミを裏側につけ直しと、以下のような状態になる。
あまり違和感がない見た目で、使用時は左のように、収納時は右のようにしても使用できなくもない。僕個人としては、このほうが便利だ。
というのは、バックパックに押し込むように収納する場合でも、こうしておけばツマミが引っかからず、無用なストレスを感じないからだ。反対に取り出すときも引っかからず、すばやくスムーズである。
ツマミのような硬い出っ張りはバックパック内でのパッキングの際、かなり邪魔になるものだ。また、ツマミが押し付けられた他のものが壊れたり、キズついたりする原因にもなる。もしも僕がこのフライパン&フタを所有することになったら、おそらくこのようにツマミの位置を変えたままで使うことになるだろう。
そんなわけで、使用上の個人的な好みの話であった。
まとめ:山ごはんに幅が広がるアイテム
今回は思いつくままにいくつかの料理をフライパンとロースターで作ってみた。どれも山中で手軽に作れる、手間がかからないメニューだったが、こんなフライパンとロースターがあれば、現在の僕の山ごはんにももっと幅が出てくるに違いないと実感させられた。
とくに野外で食べる焼いたモチのうまさは、再評価せずにはいられない。モチは加熱するとすぐに食べることができ、日持ちもするので山に適した食材だ。しかし僕は煮込んで食べてもあまりうまいと感じていなかったが、香ばしい焼モチはこれから積極的にメニューへ加えたい。少量の油を持っていき、フライパンで焼いてもよさそうである。
普段からこのようなメニューを楽しんでいる登山者もいらっしゃるだろう。だが、山では多くの人は「煮る」料理がメインになっているに違いない。僕のように山料理がワンパターンになりつつある人は、このような調理器具をひとつ手元に加えるのも悪くはないだろう。
今回のPICK UP
ユニフレーム/山フライパン
価格:3,300円(税込)
サイズ:約Φ17×4cm(収納時)
重量:約170g
ユニフレーム/山リッドSUS
価格:1,600円(税込)
サイズ:約Φ16.9×2.6cm
重量:約115g
ユニフレーム/ミニロースター
価格:2,200円(税込)
サイズ:約Φ15×1.5cm
重量:約225g
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート!
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