ジオハイキングへの誘い 『石と地層と地形を楽しむ はりま山歩き』
評者=根岸真理(アウトドアライター)
コロナ禍によってなにかよいことがあったとしたら、足元に目をやるおもしろさに気づかせてくれたことか。
最初の緊急事態宣言のとき、遠出をあきらめ、登山も自粛した。運動不足を警戒し、自宅から徒歩圏内を毎日歩いていた。六甲の山麓に近いので、少し歩くと眺望のいい高台があるし、街と山の境界付近には自然公園もある。住宅街のいちばん上にある登山口をゴールに設定することもあった。来る日も来る日も似たようなところを歩いていたけれど、不思議と飽きることがなかった。舗装のすき間にも季節の草花が花を咲かせているし、街から見上げる空にも毎日異なる表情があった。
遠くの高い山はやっぱり憧れだし、まだ見ぬ景色に出会いたい旅への渇望は変わらずあるけれど、いつもの景色の中にも、まだまだ知らないことがたくさんある。そんなもののひとつが地質や岩石などの領域。山を歩きながら、これまでも気になることはいろいろとあったが、専門書を紐解くまでには至らなかった。そんな私にうってつけだったのが本書である。
「理科の先生が、地学を学ぶ遠足に連れていってくれる」ような感じで楽しめる一冊。兵庫県南西部、いわゆる播磨エリアの大地がどのように形成されたのか、太古からの歴史と、山や渓谷に刻まれたその証を目で確かめることができるおすすめコースが紹介されている。温暖で晴天率が高い播磨地方は晩秋から春にかけてがベストシーズンだと思う。本書を片手に、はりまの山歩きに出かけるとしますか。
(山と溪谷2022年3月号より転載)
登る前にも後にも読みたい「山の本」
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。
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