街にいるハトは、どこに帰りどこで寝るのか

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馬鹿っぽい、汚い、何考えているのかわからない……など、マイナスイメージも多く、時には害鳥として駆除もされる身近な鳥、ハト。そんなハトの世に知られていない豆知識がたくさんつまった本『となりのハト 身近な生きものの知られざる世界』(山と溪谷社)より、思わず誰かに話したくなるハトの秘密のエピソードをご紹介。

第5回目はハトのお家の話です。

写真=柴田佳秀

 

お腹もいっぱいだし、もう少しで日没だからそろそろお家に帰らなければならない時間だ。そのドバトたちのお家はどこにあるのか。

それは大きな建物にあることがほとんどだ。公園に体育館のような大きな建物があれば、その軒下にとまって眠るだろう。また、公園の外にお家があって、通ってくるハトも多い。街にはドバトが眠る大きな建物がたくさんあるからだ。

なかでも大型ショッピングセンターには、よくドバトのお家がある。たとえショッピングセンターが公園からけっこう離れたところにあっても、自慢の鳩胸エンジンを使って飛べば、そんな距離はなんでもない。仲間と一団となってお家に向かって飛んでいく。ドバトはたいてい群れで行動する鳥で、日中、行動するときはもちろん、夜にマイホームで過ごすときもいつも仲間たちと一緒だ。

さて、ショッピングセンターに到着すると彼らは立体駐車場の中に入っていく。どこにいるか探してみると、天井に張り巡らされた配管の上にとまっていた。ここが彼らのお家なのだ。立体駐車場の天井は、天板で覆われておらず配管がむき出しになっている。高い棚状になった場所をドバトは好んで寝床にするので、天井の配管は寝る場所としては最適である。

また、ドバトのお家は寝床だけでなく、巣を作り子育てをする場所でもある。普通、鳥の巣は木に枝を組んだ皿みたいな形がイメージだが、ドバトはかなり違う。棚になった平らな部分に木の枝を少し組んだだけの簡素な巣を作り子育てをする。

じつは、親鳥が寝る場所と営巣場所が一緒というのは、鳥ではたいへん珍しいことだ。よく鳥の巣は、人間の家みたいなものと勘違いされているが、巣はヒナを育てるためのベビーベッドのようなもので、親鳥が寝る場所ではない。ヒナが巣立ってしまえば、親鳥は巣に戻ってこないのが普通である。

ところがドバトは、寝る場所と営巣場所が一緒の極めてレアな鳥で、まさに人間の家と同じようなところに棲んでいる。朝、食べものを求めてお家から仲間と一緒に飛び立ち、夕方になると同じお家に帰ってくる。そんな生活を毎日、一年中続けているのである。

※本記事は『となりのハト 身近な生きものの知られざる世界』(山と溪谷社)を一部掲載したものです。

『となりのハト 身近な生きものの知られざる世界』

ハトの世に知られていない豆知識がたくさんつまった、身近な生きものの世界を見る目が変わる一冊


『となりのハト 身近な生きものの知られざる世界』
著: 柴田佳秀
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【著者略歴】

柴田 佳秀(しばた・よしひで)

1965年、東京生まれ。東京農業大学卒業。テレビディレクターとして北極やアフリカなどを取材。「生きもの地球紀行」「地球!ふしぎ大自然」などのNHKの自然番組を数多く制作する。2005年からフリーランスとなり、書籍の執筆や監修、講演などをおこなっている。主な著書・執筆に『講談社の動く図鑑MOVE 鳥』(講談社)、『日本鳥類図譜』(山と溪谷社)、『カラスの常識』(子どもの未来社)など。日本鳥学会会員、都市鳥研究会幹事。

となりのハト 身近な生きものの知られざる世界

ハトの世に知られていない豆知識がたくさんつまった、身近な生きものの世界を見る目が変わる一冊! 馬鹿っぽい、汚い、何考えているのかわからない……など、マイナスイメージも多く、時には害鳥として駆除もされる身近な鳥、ハト。 そんなハトには、知られざる驚きの能力と、人との深いつながりがあった。 本書より一部を抜粋して掲載します。

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