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手付かずの大自然が残る『地球の箱庭』/ニュージーランド随一の場所、ルートバーン・トラック

ガイド・記録 2017年10月10日

冬に向かい一般的な登山はオフシーズンに向かう日本だが、南半球・ニュージランドでは季節は逆。今まさに春から夏に向かっている。トレッキングを楽しむにはうってつけの時期が到来しようとしている。今回はそのニュージーランドで随一の人気を誇るルートバーン・トラックを紹介。

ルートバーン・トラック序盤のハイライト、キーサミットからの大展望

 

ニュージーランドは、国土の約3分の1にあたる面積が国立公園や自然保護区に指定され、手つかずの大自然が多く残っている場所です。

島国という特性上、ここでしか見ることのできない固有の植物や鳥が数多く生息し『地球の箱庭』とも称されています。今回はそのニュージーランドで随一の山岳展望を誇り、世界中のトレッカー達が憧れるルートバーン・トラックを紹介します。

 

厳選された「Great Walks」の中でも、最も山岳展望が素晴らしい場所

手付かずの自然がそのままの姿で残るニュージーランド(以下、NZ)。この国の本当の素晴らしさを実感するには、その中に飛び込むに限ります。大自然の中のロッジに泊まりながら歩くトレッキングが、NZを楽しむには最高に贅沢な方法です。

NZでは、数あるトレッキングコースの中でも特に眺望のよい9つのコースを厳選し、「Great Walks(グレート・ウォークス)」と呼んでいます。今回紹介する「ルートバーン・トラック」もそのひとつで、まさに“お墨付き”のトレッキングコースというわけです。

ルートバーン・トラックは南島のフィヨルドランド国立公園から隣接するマウント・アスパイアリング国立公園へと抜ける全長約38kmを2泊3日の行程で踏破するトレッキングコースです。山岳展望が特に素晴らしいコースで、縦走に慣れ親しんだ日本の登山愛好者におすすめのコースと言えます。

鬱蒼としたブナの森、氷河によって削られた荒々しい岩峰群、静寂の山上湖、迫力の滝、可憐な花々、エメラルド色に輝く清流、人懐っこい野鳥、新鮮な空気とおいしい水とバラエティに富んだ景観――、挙げるときりがないほど魅力が凝縮されているトラックです。

水しぶきを上げるイヤーランド滝の際を歩く

 

仲間やガイドと共にトラックを完歩する達成感!

それでは、実際に歩くトレッキングコースについて触れてみましょう。起点となるのは南島のリゾート地として知られるクイーンズタウン。世界中のトレッカー達がここに集結し、スタートします。

なお、ルートバーン・トラックは一般的にはガイド付きウォークで歩くことになり、2泊3日の行程を同じメンバーと共にします。1日の入山者数は制限されていて、ロッジの収容人数(40人程度)がその日の入山者数となります。

行動中は40人ほどの団体が数珠つなぎになって歩くわけではありません。ガイドは2~3名がグループの先頭と最後尾を歩きます。その間であれば自分のペースで歩くことができる仕組みなので、かなり自由に歩けます。

これはトレイルが整備されているのと、ニュージーランドには熊や蛇といった危険動物がいないため、少人数で歩いていても安全だからです。

ルートバーン・フラットを進む(3日目の行程の様子)

 

ロッジの魅力を満喫しよう!
トレッキング1日目(約13km/徒歩約6時間)

1日目はクイーンズタウンからバスに乗り、フィヨルドランド国立公園のディバイド峠へ、そしてマッケンジー小屋までを歩きます。

ディバイド峠からトレッキング開始して樹林帯を登り、まずはキー・サミットを目指します。キー・サミット頂上からは美しい湿原や山々の展望が素晴らしく、出発からわずか1時間ほどでサザンアルプスの大展望が広がります。その後、山の斜面をトラバースするように作られたトレイルを歩き、マッケンジー小屋に到着します。

1泊目となるマッケンジーロッジへ。絶好のロケーションに立っている

 

自然景観もさることながら、ルートバーン・トラックの魅力はロッジ抜きにしては語れません。ロッジ内は広く清潔で施設も充実しているうえに、ここでは3日間行動を共にする世界中のトレッカーとの交流が行われ、これが楽しみの1つといえます。

ロッジでは、1部屋あたり4~6人の2段ベッドが基本で、寝具はすべて備え付け。ハンドタオル、フェイスタオルもあり、到着後はすぐに温かいシャワーを浴びることができます。

洗濯場と乾燥室があり、その日着た服はそのまま洗濯することができるので、着替えをたくさん背負う必要がないため、3日間のトレッキングでも装備を増やす必要はありません。

山中にあるとは思えないほど清潔感のある寝室。施設も充実している

 

広々した乾燥室。洗濯しておけば、すぐに乾いてしまう

 

開放感のあるダイニングルームでは、ゆったりくつろぎながら、コーヒーやお茶など温かい飲み物をセルフサービスで楽しめます。夕食までの時間には、ちょっとしたおやつが提供され、ビールやワインなど豊富な種類のドリンクも楽しめます。

トレッキング後はリビングルームでゆったり休憩しながら明日の予定に思いを馳せることになる

 

夕食前までの時間には、スナックも用意されている

 

夕食は3コースで提供され、山の中にいるとは思えないほどです。3日間共にするガイドや世界各国からやってきたトレッカーとの交流も楽しみのひとつです。

なお、ロッジでのサービスはすべて“キャッシュレス”で、精算は最終日にまとめて行う形なのでセキュリティ面でも安心です。

 

氷河を抱く山脈と緑豊かな渓谷の大パノラマを楽しむ
トレッキング2日目(約15km/徒歩約7時間)

2日目は朝食のあとにランチ作りから始まります。みんなでテーブルいっぱいに並べられた食材で、お好みのサンドイッチを作りましょう。野菜も豊富で、自分で食べる量を調整できるのが何よりも嬉しい。

お昼のサンドイッチ作りも楽しいひと時となる

 

2日目行程は、稜線歩きとなります。ロッジを出発するとマッケンジー湖畔からジグザグに登り、オーシャンピーク・コーナーへと進みます。ここからがニュージーランドで随一の山岳展望が広がる場所で、氷河を抱くダーラン山脈と緑豊かなホリフォード谷が眼下に広がります。

大パノラマが続くハリス峠までの約3時間が今回のルートバーン・トラックのハイライトとなります。

山岳展望の素晴らしいトレイルが続く2日目の行程

 

世界で唯一高山に生息するオウムのケアが甲高い鳴き声とともに飛び交う姿もしばしば見られ、素晴らしい景観が続きます。ハリス峠からはマウントアスパイヤリング国立公園に入り、ハリス湖を見ながら広々とした谷を下り、ルートバーン・フォールズ・ロッジに到着します。

2日目は、高山植物をはじめ、数多くのNZ固有の植物観賞も楽しみのひとつとなります。特に人気の高いのは「マウントクックリリー」、11月下旬から1月上旬の時期に咲く世界一大きなキンポウゲ科の花で、大きな鮮やかな緑色の葉にシルクのような白色の花がよく映えます。

人気の高いマウントクックリリー。NZの固有種の高山植物

 

また、キク科のマウンテンデイジーは50種類以上にのぼり、時期ごとに異なる種類が見られます。厳しい環境に耐えられるように茎が短いマットデイジーや、固い丈夫な葉と手のひらサイズの大きな花が特徴のラージマウンテンデイジー、ほぼシーズン中咲き続ける小さなエバーラスティングデイジーなど、花の大きさや葉の形も多種多様です。

ほかにも、岩の割れ目には小さなニュージーランド・エーデルワイス、ユニークな形の数々のランもを見つけられるかもしれません。

 

仲間と共にした3日間の想い出と達成感に心打たれる
トレッキング3日目(約10km/徒歩約4時間)

最終日は昨日の稜線歩きとは対照的に、美しい南極ブナの原生林を歩きます。ルートバーン・フラットへと下るとトレイルはほぼ平坦となり、いくつもの吊り橋を渡りながら、ルートバーンの流れに沿って下ります。

2日目とうって変わって、3日目は美しい南極ブナの原生林の中を歩く

 

途中、美しい河原で昼食をとった後、トレイルエンドでトレッキング終了となります。

バスでクイーンズタウンに戻る途中、小さなパブに立ち寄り、完歩証の授与式が行われます。すっかり仲間となったメンバーとともに、トラックを完歩した達成感と、3日間の想い出を語らう瞬間は格別で、NZの最高の想い出の1つとなるはずです。

完歩して現地ガイドと喜びを分かち合う瞬間。達成感と充実感でいっぱいになるでしょう

 

いつも人気なコースだから、思い立ったら計画・予約!

NZには日本と同じく四季があります。しかし南半球に位置しているため、日本がちょうど冬の時期に夏を迎え、トレッキングのシーズンとなります。可憐な高山植物が咲く初夏の時期(11月~1月)から、天候が安定して晴天率の高い盛夏の時期(2月~3月)まで、ベストシーズンは幅広く、寒い日本から飛び出すにはうってつけの時期です。

日本からルートバーン・トラックに行くには、トレッキング行程を含めて9日間程度の旅がおすすめです。9日の日程で、ルートバーン・トラックに加えてニュージーランド最高峰のMt.クックを望むアオラキ/マウントクック国立公園に訪れ、ハイキングを楽しむことができます。

実際に歩く標高は500m~1,300mで、コース中に技術的に難しいところはありません。日本で登山を親しんでいる人であれば、技術的にはまったく問題ありません。

いちばんの問題と言えば、ロッジの収容人数に限りがあることです。先に説明したように、1日の入山数は40人程度、なかなか予約が取れないことも多々あります。

行きたい! と思ったときには、もういっぱいというのはよくあることです。シーズンが始まろうとしている今が計画の時期、決めるなら「今でしょ!」なのがルートバーン・トラックです!

海外
教えてくれた人

小林博史

アルパインツアーサービス株式会社/本社営業部。同志社大学山岳部出身。学生時代にはヒマラヤ8,000m峰の登頂経験を持ち、未踏峰の頂きも目指した根っからの山男。持ち前の語学力を活かし、ジョン・ミューア・トレイルをはじめとした世界各地のロングトレイルや、キリマンジャロ登山、スイスやカナダのハイキングまで、年間100日以上、ツアーリーダーとして「世界の山旅」を案内している。
〝鉄道オタク〟の一面もあり、日本中のあらゆる路線を制覇することも夢のひとつ。

アルパインツアーサービス株式会社

マッターホルン北壁の日本人初登攀を成し遂げた芳野満彦(アルパインツアー元会長)が、1969年に日本で初めてヨーロッパ・アルプスへのハイキング・ツアーを実施して以来、約半世紀にわたり、世界中の山岳辺境地の山旅を企画、実施してきた。「トレッキング」という言葉を日本に定着させた、世界の山旅のパイオニア的存在。

⇒アルパインツアーサービス

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