GW中の遭難事例――残雪による道迷い、単独登山、里山。万全の状況把握を　島崎三歩の「山岳通信」第261号

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年5月11日に配信された第261号では、大型連休中の遭難について確認・分析。事例から、単独登山や里山登山の危険性について言及している。

5月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第261号では、期間中に起きた9件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

4月26日、中央アルプスの空木岳で、4月23日から単独で中央アルプス空木岳に入山していた68歳の男性が、4月26日に下山予定のところ連絡が取れず行方不明になっていることを確認。県警ヘリが出動して捜索を行い、28日に男性を発見、死亡が確認された。男性は池山尾根を下山中に滑落した模様。
4月28日、北安曇郡小谷村地籍の鎌倉山で、2人パーティで入山した35歳と71歳の女性が、大網峠から「塩の道」を下山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。29日に大町警察署山岳遭難救助隊員が2人を発見・救助した。
5月2日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した68歳の男性が、登山中に意識を失い行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員及び北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動し、男性を救助したものの死亡が確認された。
5月2日、北アルプスの燕岳で、5人パーティで入山した59歳の女性が、下山途中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。安曇野警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。
5月4日、長野市の虫倉山で、2人パーティで入山した80歳の男性が、下山途中に転倒して約20メートル滑落する山岳遭難が発生。長野市消防局員が出動して男性を救助した。
5月4日、須坂市の四阿山で、3人パーティで入山した51歳の男性が登山中に足を滑らせて滑落し、技量不足により急斜面で身動きが取れなくなる山岳遭難が発生。須坂警察署員及び県警ヘリが出動して男性を救助した。

四阿山での遭難現場／長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況（週報）5月9日付

5月5日、北アルプスの涸沢で、3人パーティで入山した44歳の男性が、下山中にアイゼンを引っかけて転倒し、約30メートル滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス涸沢での遭難現場／長野県警察本部ホームページ山岳遭難発生状況（週報）5月9日付

5月6日、北アルプスの上高地で、5月2日から5月5日までの予定で単独で入山して上高地付近にテント泊していた74歳の男性が、テントを張ったまま行方不明となっていることがわかった。
5月7日、飯田市の風越山で、単独で風越山に入山した57歳の女性が、山頂から下山中に道に迷う山岳遭難が発生。飯田警察署員が出動して女性を救助した。

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

4月5週は、2件の遭難が発生しました。鎌倉山の道迷い遭難は、残雪により道が不明瞭だったことも遭難の一因と見られます。春先は日陰となる樹林帯に残雪が残り、登山道が不明瞭な場所があります。事前にルートの全容や迷いやすい尾根や沢の分岐点などを把握した上で入山しましょう。

5月1週は、死者1名、行方不明1名を含む7件の遭難が発生しました。行方不明は、単独登山による遭難でした。単独登山は、自分のペースで登れる、行きたいときに行ける、一人の空間を味わえるなどの良い点がある反面、何かトラブルが発生した場合、遭難をした場合には一人で対応しなければならず、その場所が携帯電話の通信圏外であれば、携帯電話で助けを求めることもできません。
今後、単独で登山を計画されている方は単独登山のリスクを理解した上で、必ず行き先・行程等を家族や職場の方などへ伝え、無事下山するまで気を抜かないようにしましょう。

また、標高の低い里山での遭難も発生しています。里山は、容易にアクセスしやすく、比較的日帰りで行きやすいと思われがちですが、登山道が不明瞭だったり、整備されていない道で躓いて転倒したりするなどの危険が潜んでいます。

今週末は、気圧の谷や前線の影響で曇りや雨の日が多い予報となっています。登山を計画されている方は、最新の天気予報を確認し、安全登山を心掛けましょう。