このエントリーをはてなブックマークに追加

「勝った・負けた」に一喜一憂しない! コースタイムについて考えてみよう

登山技術 2017年10月11日

登山地図や登山口の案内板などに記載されているコースタイム。この時間より早く歩けると何か嬉しい、遅れると何か悔しい――。そんな経験、誰もがしていると思われるが、そもそもコースタイムって何だろう?

 

コースタイムの考え方について教えてくしい!

質問:
私の山友達は、登山地図に記載されているコースタイムどおりに歩くことに強いコダワリを持っています。少しでも遅れると「次で取り返さなければ」と焦り始め、早く着くと「コースタイムに勝った」と余裕が出るようです。
私は、コースタイムより早いときもあれば遅いときもあると考えているのですが、どの程度コースタイムにこだわるべきなのでしょうか?

 

コースタイム=普通に歩いた多数派の行動時間

判るなぁ、「コースタイムより半分で登った。勝ったぁ!」の気分。逆にペースが遅いと「おい。コースタイムは1時間で書いてあるぞ。まだ半分も来てないじゃないか! さっさとしろよ。」とか、口には出さなくても密かに考えてしまうのは無理もないものです。

ところで、コースタイムとは何なのでしょうか? 国内で最も知られている登山用地図「山と高原地図(旧エアリアマップ)」を作成している昭文社が、登山地図の執筆依頼の際に要請するのは「通常の天候の下で、一般的な登山者が行動する実際の時間に若干の余裕を持たせた物、ただし、休憩時間は含まない」です。

うーん・・・、そうかぁ。

若干の余裕はあるけど休憩時間は含まないとは――、つまり、普通に(何が普通なのかはさておき)歩いた多数派の行動時間と考えれば良いようです。途中でコーヒーを沸かして飲んたり、花が咲いていたので腹ばいになって写真撮ったり、ななどという時間は入ってなくて当たり前と考えるべきです。

初心者や、自分なりの山の楽しみ方が確立していない登山者にとって、コースタイムはひとつの目安です。「オ~ッ、コースタイムの半分で登れたぞ!」と一喜一憂する初心者は、先の行程を考えたら、何もそんなにアクセク登らなくても良かったのでは? と考えてもいいかもしれません。

一方、一生懸命歩いたにも関わらずコースタイムの2倍も時間がかかってしまうような人は、その山が自分が挑むには少し厳しすぎた可能性があります。次に計画を立てる時には、「自分は、無理せずに登ると標準コースタイムの2倍はかかることがある・・・」と認識して、計画を調整する資料として使うことも可能です。遅れると「次で取り返さなくっちゃ」は山を楽しむ姿勢としてはちょっと残念です。

登山地図中のコースタイム(ヤマタイムより抜粋)。区間ごとに歩行時間の目安が記載されている。

 

時代とともにコースタイムも変わるのをご存じ?

ところで、コースタイムは時代や登山者の年齢の変化に対応しているって知っていますか? 一例を挙げると――、20年前の昭文社・山と高原地図の「奥多摩」では、東日原から横スズ尾根を通って一杯水までのコースタイムは「2時間」と記載されていました。

このコースタイムだと、比較的足が速いはずの筆者でも脇目もふらず、ため息もつかず登って、ようやく着くかつかないかの時間です。「厳しいなぁ」と思っていたら最近のものは2時間半に変わっていて、だいぶ実態に近づいたという印象です。これは、高校生や若手が主に歩いていた約20年前の時代と、中高年が主流となった今とでは、「実際にかかる時間に、若干の余裕を持たせた」時間が変わってきたものと考えられます。

一方で、最近少し気になるのが極端に時間のかかるパーティーの存在です。「安全のため」にゆっくり歩いているからなのしょうか?  ちょっと考えられないほど時間のかかっているパーティを見かけます。

例えば、先日はこんなことがありました。甲武信ヶ岳から西沢渓谷入口まで降りる「徳ちゃん新道」で、下山に決定的なトラブルがあったわけではないのに10時間以上かかったパーティーがいました。通常は時間がかかっても4時間程度のコース(※ヤマタイムのコースタイムでは3時間50~55分)。

仮に、登山道の整備状況が良いとは言えないコース――、例えば流水に道が遮られていたり、道の片側が切り立っていて危険だったりするコース――、であっても一般登山道でコースタイムの何倍もかかるのは計画そのものに無理があったのではないか? と疑うべきです。

コースタイムは「あくまで目安」と考えるべきでしょう。早くても奢らずに、極端に遅かった場合は今後の計画を見直す、そんな風に使えば良いと思います。

教えてくれた人

山田 哲哉

1954 年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。著書に、登山技術全書「縦走登山」(山と溪谷社)ほか、「奥秩父、山、谷、峠そして人」(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」

関連記事
同じテーマの記事
山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(2)絶対必要な冬山装備って?
雪山登山をはじめたいが、「はじめる=出費」はつきもの。そこで、できるだけコストを抑えて、雪山登山はじめる方法を考えてみよう。
山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(1)雪山の怖さと魅力って?
雪山登山に興味はあるけど・・・。正直、怖さがあって一歩が踏み出せません。雪山をやっている方、雪山の怖さ、魅力って何だと思いますか?
登山中の歩く速さ、どのくらいが適切? 歩行ペースの見極め方
登山中の歩くペースについて、「一定のペースで、ふだんよりゆっくり」と言われるが、この感覚的な表現を実践するのはなかなか難しいもの。とくにパーティ登山では他のメンバーのことも考えて歩かなければならないわけだが・・・。
不安な登山者・パーティーと山ですれ違ったとき。声をかけるべき?お節介は不要?
間もなく夕暮なのに登り始めようとする人、明らかに山に不相応な服装・装備な人・・・。そんな不安な登山者とすれ違ったとき、声をかけるべき? それともお節介は不要? 皆さんならどうします?
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

晴時々曇
明後日

晴時々曇
(日本気象協会提供:2017年12月15日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 生涯保証をうたう「ダーン タフ」など掲載中!
生涯保証をうたう「ダーン タフ」など掲載中! 抜群のタフさとクッショ性が特長のソックスブランド「ダーン タフ」など登山用ソックスを大特集!
NEW 3種の生地を使い分けた最強の行動保温着
3種の生地を使い分けた最強の行動保温着 保温性と通気性に、快適性までプラスした最強の行動保温「エイサームフーデッドジャケット」をワンゲル編集部がチェック!
NEW 雪が早い今年こそ! スノーシューで楽しもう
雪が早い今年こそ! スノーシューで楽しもう 用具レンタル、現地ツアーなどもあり、誰でも楽しめるスノーシュー。みなさんもトライしませんか?
NEW みなかみ町でスノーシューを満喫!
みなかみ町でスノーシューを満喫! 東京から1時間半、雪の多い谷川岳・水上エリアでは無数のフィールドでスノーシューが楽しめる。1月のイベントも注目!
NEW メリノウール製ミッドレイヤーをテスト
メリノウール製ミッドレイヤーをテスト 山岳ライター高橋庄太郎さんの連載「山MONO語り」は、アイスブレーカーのミッドレイヤーを晩秋の奥秩父でテスト
NEW 遭難体験・ヒヤリハット体験のアンケート
遭難体験・ヒヤリハット体験のアンケート 日本大学工学部の嶌田研究室と共同でアンケートを行っています。安全登山の研究のために、ぜひご協力ください!
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。
渋滞の心配なし! 駅から歩いてらくらく登山。 日没時間が早まる時期は、アクセス時間を減らして行動時間を長くするような登山にしたい。「電車で行ける・帰れる山」で時間を短...
ダイヤモンド富士&シモバシラ
ダイヤモンド富士&シモバシラ 都民の憩いの場の高尾山は、冬でも活気に溢れています! 12月はダイヤモンド富士とシモバシラが人気です!
日本昔ばなしで見た、あの山はここだ!
日本昔ばなしで見た、あの山はここだ! 山にはさまざまな伝説が残っている。山の名前の由来や、山にまつわる物語を紐解いてみると・・・。伝説・悲話・昔話の舞台となっ...
紅葉写真コンテスト、募集中!
紅葉写真コンテスト、募集中! 紅葉シーズンも最終盤。どんな秋の山を楽しみましたか? みなさんの秋の報告をご覧ください。
雪が降り凍結の始まる奥多摩の山々
雪が降り凍結の始まる奥多摩の山々 首都圏からの登山者を満足させる地・奥多摩は、冬山シーズンへ。冬の時期の奥多摩の楽しみ方を指南します。
山と自然に関わる仕事 求人情報
山と自然に関わる仕事 求人情報 新規求人情報を続々掲載! 山小屋アルバイト、ツアー添乗員、ショップ店員、メーカースタッフ…、山に関わる仕事の求人情報