札所めぐりを交えて梅雨時の琴平丘陵、 下山後のクラフトビールが心と体に染み渡る

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

秩父の名峰・武甲山の山麓、秩父鉄道と並行するように連なる琴平丘陵。みずみずしい梅雨時の低山歩きのあとで、秩父のクラフトビールを味わった。

写真・文=西野淑子

 

梅雨の晴れ間と休日が重なった。山でのんびり緑を楽しみたいと考え、琴平丘陵に行こうと思いついた。秩父鉄道の影森駅から羊山公園に向かうハイキングコース。羊山公園は芝桜の名所で、ゴールデンウイークには多くの人で賑わうが、時期をはずして静かな低山歩きはどうだろう。

写真の説明

琴平丘陵ではうっそうとした樹林の中を進む

秩父三十四カ所観音霊場、27番札所の大渕寺で御朱印をいただき、登山道へ。「ハイキングコース」と名付けられているが、岩が露出しているところもあり、なかなかワイルドな道だ。道中、崖に張りつくように造られた赤いお堂が目を引く。26番札所・円融寺の奥の院である岩井堂だ。しっとりとした濃い緑を満喫し、羊山公園までたどり着いた。

写真の説明

琴平丘陵ハイキングコース途中に立つ岩井堂

モデルコース: 琴平丘陵

 

コースタイム:影森駅(15分)大渕寺(45分)岩井堂(20分)長者屋敷跡(1時間)羊山公園(20分)西武秩父駅 合計2時間40分

アクセス:秩父鉄道影森駅下車

洒落た地ビールカフェでクラフトビールを飲み比べ

羊山公園から街中を歩いて西武秩父駅にたどり着く。 低山歩きとはいえだいぶ汗をかいた。ビールを飲んで帰りたい気分だ。

山仲間から、秩父に地ビールが飲める店があると聞いていたのを思い出した。
西武秩父駅から秩父神社方面に歩いて7分ほど、蔵造りの建物などが立ち並ぶ昭和レトロな雰囲気の通り沿いに、その店、まほろバルがあった。市内に醸造所を持つ、秩父麦酒醸造所のビールが味わえる専門店だ。

写真の説明

西武秩父駅から徒歩7分ほどの位置にある「まほろバル」

秩父は知られざる酒処だ。私の大好きな日本酒・武甲正宗も、ウイスキー好きに人気の高いイチローズモルトも、秩父のお酒。ワインの蔵元もある。初めて出合う秩父のビールはどうだろう。

カウンターとテーブル席、モダンな雰囲気の店内。山帰りで入ってよかったかなとちょっと気後れしつつ、カウンターの端っこに座る。

写真の説明

店内はモダンな雰囲気

おお、クラフトビールの飲み比べセットがある。10種類以上のビールから好きなのを選べるのか。3種と5種があるけど、とりあえず3種にしよう。メニューに書いてある特徴をもとに選んでみる。
おつまみは自家製ピクルスと、お店の人気メニューという自家製パテ・ド・カンパーニュ。毎度のことながら、「自家製」という言葉に弱いのだ。

すぐにピクルスが登場。
酸味と甘みのバランスがちょうどいい。パプリカ、きゅうり、にんじん、ズッキーニ、カリフラワー…、野菜の種類が多くて嬉しいし、どれもみずみずしく、それぞれの野菜の食感がしっかり生きているのもいい感じ。

写真の説明

みずみずしい自家製ピクルス(400円)

ピクルスをつまんでいるうちに、3種のビール飲み比べセットが登場。
うふふ、どれから飲もうかしらん。まずは定番っぽい色合いの「まほろばの熊」。…少し苦味がありつつ、飲みやすいぞ。茶褐色の「琥珀の熊」は黒ビールほどではないけどやや甘め。「シロクマ」はフルーティな感じ。どれも違う味わい、どれも「当たり」。うふふふ。

写真の説明

3種のビール飲み比べセット(990円)

そして、パテ・ド・カンパーニュ。噛みしめると、肉のつぶつぶ感とともに、うまみがじんわりと口に広がる。そしてビールを一口。ビールとの相性がすごくいいおつまみだよねえ、うふふふふ。

写真の説明

パテ・ド・カンパーニュ(600円)とビール

店内はビール好きらしいお客さんが何組も入って賑わっている。
ビールや料理を提供しながら、スタッフさんがビールの説明をしている。語り口から、クラフトビールが好きで好きでしょうがないのが伝わるし、お客さんも楽しそう。ビールに詳しくないから、自分から話しかけてあれこれ質問するのは無理だけど、こうやってビール好きな人たちの会話を聞くのはいいものだなあ。なにげに、自分が飲んでいるビールのことも解説してもらえて有り難い。

3種類のビールと2種類のおつまみで、ちょうどいい感じにお腹がふくらんだ。あとは特急電車に乗って、終点まで気持ちよく寝て帰ればいい。

ひとりでふらりと訪れて、カウンター席でちょっとだけ飲んで帰るのもいいし、誰かと来てあれこれ飲み比べて、おつまみをシェアするのも楽しいだろう。洒落た店構えに最初は気後れしたけれど、過ごしてみたらとても居心地がよくて幸せな空間だった。ありがとう。

山帰りにまた来よう。今度は気心の知れた山仲間と一緒に。

店名:まほろバル

古民家をリノベーションした複合施設の中にある、クラフトビール専門店。秩父麦酒の樽生ビールを定番から新作まで揃え、地元食材を使った小皿料理も充実している。

電話:0494-26-7303

住所:埼玉県秩父市番場町17-14

アクセス:西武鉄道西武秩父駅から徒歩7分

サイト: https://www.chichibu-lab.jp

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

編集部おすすめ記事