山上の聖地・高野山――。聖域の奥之院を取り囲む可愛い3つの山をめぐる

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和歌山県に位置する高野山は、標高約800mにある山上の聖地。弘法大師の御廟がある奥之院は標高1000m前後の山々に囲まれている。そのため高野山エリアは下界に比べて5~6℃気温が低く、平地ではまだまだ残暑が厳しい時期でも過ごしやすい。今回は、聖域・奥之院への入口である御廟橋から高野三山をめぐるコースをご紹介する。

写真・文=児嶋 弘幸

高野山スキー場からの高野三山

高野山スキー場からの高野三山。
左から楊柳山、転軸山、摩尼山


高野山は、明治初期まで女人禁制の山であった。そのため女性たちは高野山を取り囲む峰々をつなぐ結界線、女人道をたどって奥之院を遙拝したとされる。その奥之院を取り囲む峰々の代表格が高野三山と呼ばれる摩尼山、楊柳山(ようりゅうさん)、転軸山の三山だ。

中の橋参道入口の奥の院前バス停からスタート。隣の無料駐車場は大勢の参拝客で賑わっている。比較的新しい墓碑が立ち並ぶ参道を進むと、御廟橋に着く。橋を渡った先は、弘法大師空海の御廟を祀る、高野山の中で最も神聖とされる場所だ。御廟橋の右手、水向地蔵(みずむけじぞう)脇に高野三山巡りの石碑が立っており、石碑の右手から奥の院峠に向けて高野三山のトレッキングが始まる。

中の橋参道入口からスタート。こちらは奥之院に向かう裏参道になる

中の橋参道入口からスタート。
こちらは奥之院に向かう裏参道になる

奥之院の聖域への入口、御廟橋

奥之院の聖域への入口、御廟橋

水向地蔵の右脇に立つ三山参り碑。橋を渡って三山めぐりをスタートする

水向地蔵の右脇に立つ三山参り碑。橋を渡って三山めぐりをスタートする


歩き出すと一気に山深い雰囲気が漂う。あたりには、高野六木と呼ばれる高野槇、高野杉、アカマツ、ヒノキ、モミ、ツガの樹木が目立つ。高野六木は寺院の建築用材のため、伐採が厳しく制限されており、中でも高野槇は秋篠宮悠仁親王の紋章に選ばれたことで話題にもなった樹木だ。

深山の雰囲気漂う奥の院峠への道

深山の雰囲気漂う奥の院峠への道


奥の院峠は、かつて高野山が女人禁制の山であった頃に結界線が引かれていた峠。人々は、いわゆる高野女人道と呼ばれる結界線に沿って歩き、奥之院御廟を拝んだという。ひと登りで摩尼山山頂に至り、如意輪観音にお参りした後、次の楊柳山を目指す。

奥の院峠。ここから摩尼山への登りにかかる

「摩尼峠」の標識がある奥の院峠。
ここから摩尼山への登りにかかる。

楊柳山に向かう。しばらく小さなアップダウンが続く

楊柳山に向かう。しばらく小さなアップダウンが続く


緩やかなアップダウンの後、急斜面を登ると、高野三山の最高峰・楊柳山に登り着く。山頂の小広い台地には楊柳観音が祀られている。再び下って子継峠へ。右の道は黒河道(くろこみち)で、ここから左の広谷沿いの道を下る。ススキ原の開放的な道だ。一本杉分岐で車道を横切り、三山目の転軸山の登りにかかる。ちなみに車道を左に進むと、奥之院の御廟橋に戻ることができる。

三角点のある楊柳山山頂。手に柳の枝を持った「楊柳観音」が祀られている

三角点のある楊柳山山頂。
手に柳の枝を持った「楊柳観音」が祀られている

広谷沿いの道を転軸山へと向かう

広谷沿いの道を転軸山へと向かう


転軸山は杉林に囲まれた山頂で、弥勒菩薩が祀られている。シャクナゲ園に下って、中之橋霊園を通り抜け、奥之院参道に入る。老杉が立ち並ぶ参道は夏でもひんやりと、厳粛な雰囲気が漂っている。中の橋の手前を右にとると、奥の院前バス停はすぐだ。

ちなみに、高野三山トレッキング後のグルメ情報として、今回紹介のコースから少し離れているが、つくも食堂の釜飯、お菓子ではやきもち、みろく石などがよく知られている。時間があれば、寄ってみるのもよいだろう。

モデルコース:奥の院前バス停~御廟橋~摩尼峠~摩尼山~楊柳山~転軸山~奥の院前バス停

高野三山地図

⇒ヤマタイムで地図を確認する

コースタイム:約3時間半

プロフィール

児嶋弘幸(こじま・ひろゆき)

1953年和歌山県生まれ。20歳を過ぎた頃、山野の自然に魅了され、仲間と共にハイキングクラブを創立。春・夏・秋・冬のアルプスを経験後、ふるさとの山に傾注する。紀伊半島の山をライフワークとして、熊野古道・自然風景の写真撮影を行っている。 分県登山ガイド『和歌山県の山』『関西百名山地図帳』(山と溪谷社)、『山歩き安全マップ』(JTBパブリッシング)、山と高原地図『高野山・熊野古道』(昭文社)など多数あるほか、雑誌『山と溪谷』への寄稿も多い。2016年、大阪富士フォトサロンにて『悠久の熊野』写真展を開催。

世界遺産・高野山をめぐる巡礼の道

聖地・高野山の周辺には、数多くの巡礼道がのびている。いにしえの時代に思いをはせながら、歴史ある道をたどってみよう。

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