トロッコ道から、高野山と弘法大師空海が得度した施福寺往還の道・槙尾道を歩く

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槙尾道は、高野山と西国三十三所霊場の槇尾山施福寺との往来に使われた道で、長坂街道とも呼ばれた。そして槙尾道の宿場町、椎出集落の高野下駅には、高野山森林鉄道跡、いわゆるトロッコ道が通っている。今回は、九度山駅から高野下駅経由で不動坂女人堂に至る、トロッコ道と槙尾道をたどるコース紹介しよう。

写真・文=児嶋弘幸

竜王峡遊歩道。高野山森林鉄道跡が遊歩道として整備されている

竜王峡遊歩道。高野山森林鉄道跡が
遊歩道として整備されている

南海高野線九度山駅で下車。まずは駅ホームのおむすびスタンド「くど」で、おにぎりをチョイスし、高野山詣でをスタートしよう。役場前交差点を左、九度山町役場入口のY字路を左にとって龍王峡遊歩道に入る。この道は、かつて高野山で伐り出した木材運搬のために敷設されたトロッコ道。丹生川の渓谷を眺めながら、快適に歩を進める。

「くど」で、おにぎりをテイクアウト

「くど」で、おにぎりをテイクアウト


しばらくして朱色鮮やかな丹生川橋梁に到着。橋台にレンガが使われており、趣きと歴史を感じる。やがてレトロ感漂う高野下駅へ。森林鉄道のレールが敷かれていた頃の情景を思い浮かべながら、駅舎下をくぐる。トロッコ道はそのまま直進して下古沢・上古沢駅方面へと向かうが、ここでは光明橋を渡り、椎出郵便局前の三差路を左にとって槙尾道に入る。

遊歩道から眺める南海高野線の丹生川橋梁

遊歩道から眺める南海高野線の丹生川橋梁

遊歩道からは龍王峡の流れが美しい

遊歩道からは龍王峡の流れが美しい

高野下駅。右書きの駅名が、昔の面影を残している

高野下駅。右書きの駅名が、昔の面影を残している


明治34年のJR和歌山線の高野口駅、大正14年の南海高野線の高野下駅の開業を皮切りに、高野山詣での形態が徒歩から鉄道へと大きく変化し、最短ルートとして、ここ椎出は高野山詣での多くの参詣者で賑わうことになる。

かつての旅館街を進むと、すぐに御成婚記念道程標が目にとまる。大正4年の高野山開創1100年を記念した昭和天皇ご成婚の記念碑で、道程標も兼ねており、側面には「至高野山女人堂9000メートル」と記されている。ここを起点に新高野街道の改修が行われ、道程標が200mごとに立てられた。これより新・旧の道程標に導かれながら高野山上を目指すことになる。

椎出の御成婚記念道程標

椎出の御成婚記念道程標


すぐに新高野街道と槙尾道の分かれ辻に着き、ここでは左上の槙尾道に入る。『紀伊続風土記』の椎出村の項には「其間に長坂といふ坂あり」とあり、槙尾道が長坂街道と呼ばれる由縁とされる。一気に高度を上げていくが、これが結構つらい。右手から新高野街道が合わさると、苅萱堂(かるかやどう)跡はすぐだ。

神谷辻へと向かう槙尾道

神谷辻へと向かう槙尾道


しばし休息したのち、古道としての面影が残る山腹道を長坂地蔵、弘法大師堂から神谷集落へと向かう。やがて京大坂道との合流点、神谷辻に着く。ここを右に折れ、神谷集落の南端の十字路を直進する。

神谷辻。右手は槙尾道、正面が高野山女人堂方面

神谷辻。右手は槙尾道、正面が高野山女人堂方面

かつての神谷集落の中心地。旧白藤小学校を利用した「Coffeeしらふじ」がある

かつての神谷集落の中心地。
旧白藤小学校を利用した「Coffeeしらふじ」がある


神谷辻からは四寸岩を経て南海高野線の極楽橋駅へと向かうが、古道は極楽橋の構内に立ち入るため、ここでは迂回路の階段を下る。極楽橋の下をくぐれば極楽橋駅はすぐだ。

高野山上へは極楽橋を渡り、不動坂を登れば不動坂口女人堂に至る。なお神谷辻から女人堂へは、京大坂道のガイドに詳しく紹介してあるので、そちらを参考にしてほしい。

 

MAP

コースタイム:九度山駅~高野下駅~神谷辻~女人堂:約4時間35分

⇒ヤマタイムで周辺の地図を見る

プロフィール

児嶋弘幸(こじま・ひろゆき)

1953年和歌山県生まれ。20歳を過ぎた頃、山野の自然に魅了され、仲間と共にハイキングクラブを創立。春・夏・秋・冬のアルプスを経験後、ふるさとの山に傾注する。紀伊半島の山をライフワークとして、熊野古道・自然風景の写真撮影を行っている。 分県登山ガイド『和歌山県の山』『関西百名山地図帳』(山と溪谷社)、『山歩き安全マップ』(JTBパブリッシング)、山と高原地図『高野山・熊野古道』(昭文社)など多数あるほか、雑誌『山と溪谷』への寄稿も多い。2016年、大阪富士フォトサロンにて『悠久の熊野』写真展を開催。

世界遺産・高野山をめぐる巡礼の道

聖地・高野山の周辺には、数多くの巡礼道がのびている。いにしえの時代に思いをはせながら、歴史ある道をたどってみよう。

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