登山中の歩く速さ、どのくらいが適切? 歩行ペースの見極め方

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登山中の歩くペースについて、「一定のペースで、ふだんよりゆっくり」と言われるが、この感覚的な表現を実践するのはなかなか難しいもの。とくにパーティ登山では他のメンバーのことも考えて歩かなければならない。その目安のポイントについて考えてみよう。

 

楽に登るためのペース配分のポイント

質問:
登山中のペース配分について伺います。よく、「普段よりゆっくりしたペースで歩く」といいますが、その目安がなかなか判断できません。目安やコツやポイントがあれば教えてください。

 

ペース配分については、それぞれのグループの体力や年齢によって違うと思うので、今回は自分の場合を紹介しましょう。

歩き出しの最初の15分くらいは、意識的に、あまり呼吸がハーハーしない・心臓がドキドキし過ぎない程度の、ゆっくりしたペースで進みます。

そして、10分から15分程度歩いた所で、ちゃんとした休憩とは別の「ひと休み」を入れます。ここで靴紐の調子を見直し、服装を先のコースを考えて調整し、喉が乾いていなくても一口、水を飲みます。「今日、今ぐらいの歩き方で大丈夫?」と、なんとなく全員で確かめ合います。最初のゆっくりなペースで全員が無理なく進めるようだったら、少しペースを上げていきます。

なお、登りに漠然とした不安を持つ人は、ユックリであればあるほど疲れないと考えていますが、それは、必ずしも当てはまらない場合もあります。一定のリズムに乗って、歩き続けた方が疲れない場合の方が多いものです。

一番好調に歩けるペースを見つけて歩き続け、一定の行動で疲労が溜まってきて遅れそうな人が出てきたら、また、少しペースを落とす、そんな感じて行動しています。

 

難しいのは登りより下り。一定のリズムを心掛けよう!

体力的に弱いメンバーがいる場合、ペース配分が難しいのは実は下り道です。通常、登山では登りで足を支える力を相当使い込んでしまうので、下山時の下り道で一定のペースで降りるのが難しくなりがちです。下降時には、しっかりと膝を支えながら自分の思った場所に確実に足を下ろしていく作業が連続するので、リズムよく脚を運べなくなるものです。

こんなときに「ユックリと歩けばよい」と言えば、もちろんそのとおりですが、一歩一歩が連続せず、一つの歩みごとに立ち止まっているかのような降り方だと疲労は増すものです。これは、クルマでいえば止まる毎にエンジンを切っているようなもの、再びスタートする際には筋肉の負担は非常に大きくなります。どんなにゆっくりでも、一定のリズムを保って、トントンと降りていくペース配分を心がけたいものです。

パーティで登山していると「登りでも下りでも、どう考えても遅すぎる」という人がいることがあります。こんなときには、遅い人の荷物を空身にさせて全員で分けてしまうのも有効です。「たいした荷物じゃない」と本人が思っていても、背中の荷物がなくなれば、全身の負担は軽くなります。ペースが遅いうえに下り道でふらついたり、転ぶ回数が増えたりしている場合は危険信号です。荷物を軽減してみましょう。

良く知った親しい仲間同士であれば、多くの場合は問題なく行動できます。一方、難しいのは初めて一緒に行動する人がいたり、長らく山から遠ざかっていた仲間がいりした場合です。そんな時には、いつものペース配分とは違うリズムを一から作り上げる工夫も必要となります。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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