山以外の事故も補償する山岳保険。「個人賠償責任特約」と「携行品特約」は日常生活もカバー!

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山岳保険の聞くと「山専用」と思うが、ベースは傷害保険。実は山以外の場所で起きた事故や怪我もカバーしてくれるケースもある。山岳保険に加入している登山者必見! せっかく加入している山岳保険、最大限に利用してみては?

 

「急激かつ偶然な外来の事故による」ケガであれば登山以外でも対象!

前回、山岳保険でカバーされないケースについて説明しましたが、今回は逆に山岳保険なのに山とは関係ないケースでも補償されるケースについてです。知らなかったばかりに損をしたなんてことがないようにしましょう。

★「遭難捜索費用特約」でカバーできること・できないこと

以前に記載したように、特約型の山岳保険のベース(主契約)はケガの保険である「傷害保険」です。これに山岳遭難時の補償や賠償責任などの特約を付けて山岳保険として募集しています。

傷害保険は、本来的には登山者のための保険ではなく、誰でも加入できる一般的な保険です。年齢や職業などによって一部加入制限や割増がある場合もありますが、基本的には誰でも加入できるので、会社が従業員のケガに備えて入っているケースも少なくありません。

もう一度振り返ると、山岳保険(損害保険)の補償対象は「急激かつ偶然な外来の事故による」ケガのみで、病気は対象外です。偶然なケガをする確率には大きな差はないということで、生命保険と異なり年齢や性別によって保険料が変わることはありません。このため、基本的には誰もが同条件となります(リスクの高い職種は割増がある場合もあります)。

山岳保険では、ケガの補償部分について主に以下の2つのパターンを設けて募集をしているケースが多いようです。

  • 24時間補償(仕事中のケガもカバーされる=高リスクな職種には割増)

  • 就業中は対象外(職種に関わらず同一保険料率、自営業者や主婦、学生などは不可)

いずれも登山とは関係ないケガでも対象になりますので、24時間補償タイプであれば仕事中でも買い物中でも野球やサッカーをしていた際のケガでも、さらには自動車事故によるケガでも対象になります。就業中対象外タイプでも就業中以外のケガは同様に対象となります。

また傷害保険の特徴として、他の保険や賠償金とは関係なく支払われる点です。就業中であれば基本的には労災保険で治療費が全額カバーされますし、自動車事故などで被害者になった時も加害者の自動車保険でカバーされますが、それとは関係なく契約時に決めた定額の保険金(例:入院日額2000円など)を受け取ることができます。そのため、場合によっては損害額より多くの保険金を受け取ることもあります。

 

こんな時にも使えるかも!? 山以外でも便利な山岳保険

もうひとつ山岳保険として販売している傷害保険には、「個人賠償責任特約(日常生活賠償特約等)」が付帯されていることが大多数です。実は、これも登山とは関係のない事故でも補償されます。

この特約は「①居住の用に供する住宅の使用、管理に起因する偶然な事故および、②日常生活上に起因する偶然な事故」が対象となっていますので、登山中以外の以下のようなものも対象になります。

  • マンションで水漏れをして階下の部屋を汚損した。

  • 買い物中に商品を壊してしまった。

  • 飼い犬が他人に噛みついてケガをさせた。

  • 自転車で他人にぶつかりケガをさせた。

ちょっと登山に関連するものでは、例えば電車内でピッケルで他人の物を傷つけた、などというケースでも対象になります。しかも、補償対象は子供や配偶者などの同居の親族なども含まれます。

その他にも「携行品特約」がついている場合もあるでしょう。これも同様に、山以外の住宅外でカメラを落として壊れた場合や、財布が盗まれたなども対象となります。

こんなケースでも、「山岳保険」の補償の対象になるかも?


登山のために入った特約型の山岳保険に加入した場合、保険で登山以外でも幅広くカバーされていることが多くあります。もし登山以外でケガをしたり、他人のものを壊してしまったりした場合は、保険会社や代理店などに遠慮せずに相談してみてください。

プロフィール

井関 純二

千葉県出身。大学卒業後に保険会社勤務等を経て2014年にやまきふ共済会を設立。趣味は登山のトレーニングのために始めたランニングでサブ3ランナー。
やまきふ共済会の他に、山岳ガイドや登山者向けの各種保険を扱う(株)インスクエアコンサルティング代表取締役で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。
⇒やまきふ共済会

知らないと損する山岳保険の知識

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