水にも衝撃にも驚きの強さ! エレコム/NESTOUT モバイルバッテリー|高橋庄太郎の山MONO語りVol.98

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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、エレコムの「NESTOUT モバイルバッテリー」です。

文・写真=高橋庄太郎

 

NESTOUT モバイルバッテリー

近年、“山道具”のひとつとして存在感を増しているのが、モバイルバッテリーだ。いうまでもなく、その最大の理由はスマートフォンの普及である。GPS機能を持つスマートフォンを登山地図アプリと組み合わせて正しく使えば、もはや道迷いの心配はなく、万が一の怪我のときも電波さえ届いていれば、救助を求められる。最新の天気予報を得て、悪天候にも備えられるのだ。つまり、モバイルバッテリーはいまや重要な“緊急用装備”のひとつである。

しかしSNSやカメラなどの“あれば便利”な機能をできるだけ使わないとしても、気温が低く、電波が届きにくい山中ではバッテリーの消耗が驚くほど激しい。街中では丸一日余裕で使えるスマートフォンのバッテリーが日帰りの登山でももたないことは珍しくないが、いくらスマートフォンが高機能でも力を発揮してくれるのはバッテリーが残っているときだけである。

また、山の最重要装備のひとつであるヘッドランプも最新モデルはUSB充電式が大半で、乾電池を使えるタイプは減少する一方だ。ヘッドランプのバッテリー切れに対応するためにもモバイルバッテリーは必要になっている。

僕もこの数年で登山時にモバイルバッテリーを持参するのが当たり前になった。しかし、一般的なタイプは破損が怖く、山で使うことには少々不安もあり……。そんなときにエレコムから登場したのが、「NESTOUT モバイルバッテリー」シリーズだ。その特徴は、「防水性」「防塵性」、そして「耐衝撃性」。いかにもアウトドア向けの製品である。

NESTOUT モバイルバッテリー

バッテリーの容量は5000mAh、10000mAh、15000mAh の3タイプ。ブラック、サンドベージュ、オリーブなどのアウトドア用途らしいシックなカラー展開がなされ、形状には大小あれど、どれも角をなくし、丸みを帯びさせてある。耐衝撃性を高めるためのフォルムだろうが、結果的に手にもなじみやすく、他のモノを傷つける恐れも少ない。

このなかで今回のテストに使用したのは、真ん中の「10000mAh」だ。大きさは約126×61×36㎜と、まさに手のひらサイズ。重量は約241gである。フル充電しておけば、スマートフォンを約3.3回充電でき(バッテリー容量が約1800mAhのスマートフォンを電源オフの状態で充電する際の目安回数)、遭難などの緊急時にも余裕を持って対応できるようにと考えると、1泊2日程度の山行によさそうだ。

NESTOUT モバイルバッテリー

ちなみに、「5000mAh」は約135×36×36㎜、約140g。スマートフォンを約1.5回充電でき、1泊2日の山行には少々足りないが、日帰り登山に適している。「15000mAh」は約129×85×36㎜、約364g。こちらはスマートフォンを約4.8回充電でき、2~3泊の登山にも十分に対応する。

 

細部チェック

さて、細部を見ていこう。

NESTOUT モバイルバッテリー

サイドにある黒いスウィッチは、小さな楕円形。一度押すと「CHECK」でバッテリーの残量がわかり、二度押すと「GEAR」、長押しすると「ON/OFF」を変えられる。そのことはボディに文字とアイコンで印字されており、説明書なしでもわかりやすい。ただ、「GEAR」だけはなんのことかわかりにくいが、これは後述するランタンなどの“NESTOUT専用ギア”を使う際のモードである。

サイドには5段階のインジケーターがつけられている。

NESTOUT モバイルバッテリー

5本すべて点灯していれば80%以上の残量があり、それ以降は20%ずつ下がり、1本のみのときは20%以下となる。

このインジケーターの隣には、別に小さな丸いインジケーターもあり、こちらはバッテリーの「ON/OFF」の状態を表している。

NESTOUT モバイルバッテリー

光で表すインジケーターには明るいときはわかりにくいものが多いが、このインジケーターは優秀だ。ボディの内部に光源があるために、日中でも視認しやすいのである。

NESTOUT モバイルバッテリー

もちろん、暗いときはよりわかりやすい。

もうひとつ興味深いディテールが、最下部の「三脚穴」。カメラネジ規格のネジ穴である。

NESTOUT モバイルバッテリー

三脚などを取り付けるための穴がなぜここに?と思われるだろうが、これも後述する“NESTOUT専用ギア”を使うときのものなのであった。

最上部のキャップも見てみたい。このキャップを外すと内側にUSBポートが現れるという、「耐水性」に関する最重要部分だ。本体とキャップはゴム製のパーツで連結され、キャップを紛失しにくくしている。

NESTOUT モバイルバッテリー

地味な点ではあるが、個人的にうれしかったのは、このパーツがとても柔らかい素材であることだ。この部分がプラスチックのような素材ならば手になじみにくく、他のモノにも引っかかりやすくて、使いにくかったのではないだろうか。

このパーツは邪魔であれば、外すこともできる。しかし外れやすいとも言え、もう少しだけ固定力が強いほうがよかったのではないかと思われた。

NESTOUT モバイルバッテリー

この部分が絶対に外れない仕様になっていれば、カラビナなどを取り付けてバックパックに固定することもでき、便利だったかもしれない。

ともあれ、キャップを外した状態が以下になる。

NESTOUT モバイルバッテリー

ネジ栓のところで黒く輪になった部分が、防水のためのパッキン。これによる防水効果については、後ほどテストした結果を改めてお伝えする。

次は同じ部分だが、角度を変えたカット。

NESTOUT モバイルバッテリー

出入力用のUSB Type-Cポートと、出力用のUSB-Aポートが並んでいるのがわかる。キャップさえしっかりと閉めていれば、ここに水がかかることはない。

長さ18㎝のケーブルも付属している。

NESTOUT モバイルバッテリー

ただしAC充電器はついていないので、別に用意するか、他の機器のものを流用する必要がある。このとき18W以上の充電器を使わないと、充電時間が長くなるので注意したい。適切な状態で充電すれば、この「10000mAh」は空の状態から約2時間45分でフル充電できる。

 

耐衝撃性・防水性・防塵性をチェック

というわけで、山中に入り、休憩しながらスマートフォンを充電してみる。

NESTOUT モバイルバッテリー

行動中に地図アプリと連動させてログなどを取っているとバッテリーの消費はいっそう激しくなるが、このように休憩中にも簡単に充電でき、じつに手軽だ。

注意したいのは、付属するケーブルがUSB Type-Cであること。僕がこのとき持ってきたヘッドランプはマイクロUSBで接続するタイプだったために、付属ケーブルでは充電できなかった。

NESTOUT モバイルバッテリー

なんという凡ミス。忘れずに対応するケーブルを持ってくればいいだけなのに……。今回はあくまでもテストで、ヘッドランプを充電できなくても大きな問題ではなかったが、長期山行のときには絶対にしたくない失敗であった。

では、ここから本格的なテストに移っていく。

まずは「耐衝撃性」だ。NESTOUT モバイルバッテリーは内部のリチウムイオン電池をシリコンクッションで覆っており、その力で衝撃や振動を吸収するという。果たして、どれほどの強度なのだろうか。

そこで、水が流れる沢に入り、岩の上にNESTOUT モバイルバッテリーを落としてみた。高さは1.5mくらいである。

NESTOUT モバイルバッテリー

これを繰り返すこと、数度。しかし手に取って確かめてみると、外観にはまったく傷がついていない。角がないデザインでツルッとした質感のため、岩にぶつかったときの衝撃を受け流しやすいようで、あまり跳ね返りもしなかった。いかにも破損したような「ガチャン!」などという嫌な音も聞こえなかった。さて内部はいかがなものか。

このあとにスマートフォンと繋げ、改めて通電。だが、まったく問題なく充電ができた。これくらいの衝撃は、NESTOUT モバイルバッテリーにとって衝撃のうちに入らないのだろう。

そこで、さらに強い衝撃を加えようと、今度は手で握って岩へ強く打ち付けてみた。

NESTOUT モバイルバッテリー

板に釘を打ち込むほどの相当な力をこめ、「ガン」「ガン」「ガン」と3回ほど叩きつける。強く握っているので岩から伝わってくる衝撃の逃げ場もなく、1.5mの高さから落とすよりも数倍の衝撃がかかっているのは間違いない。メーカーのエレコムも、岩の上への「落下」は想定しているだろうが、意図的な岩への「打撃」は想定外だろう。これで壊れたとしても、メーカーに責任はない。

これはさすがに壊してしまったかな、と僕は考えた。

NESTOUT モバイルバッテリー

しかし驚いたのは、ボディの堅牢さだ。あれだけ岩に叩きつけたのに、傷がほとんどついていないのである。

さらには岩の上で踏みつけ、ボディへグリグリと体重をかけてみる。だが、形状に一切の変化はない。大したものだ。

NESTOUT モバイルバッテリー

これほど強靭であれば、クルマで轢いても壊れないかもしれない。

とはいえ、内部のバッテリーにダメージがあっては意味がない。だが、再びスマートフォンをつないでみても、これまで通り、まったく問題なく使えるのだ。さすがはアウトドア仕様のモバイルバッテリーである。たいしたものだ。

次に「防水性」を試すために、まずは水中へ。

NESTOUT モバイルバッテリー

休憩中、10分ほど水たまりに入れておいたが、またしても問題なし。NESTOUT モバイルバッテリーは「IP67」の防水・防塵性能を持ち、このように水圧がほとんどかからない状態ならば、水が入ってくることなど考えられないのだ。

防水機能は、水流が強い沢のなかでも同様に発揮された。

NESTOUT モバイルバッテリー

これもまた10分ほど水流にさらしてからキャップを開けてみたが、内部への浸水は一切なかったのである。

NESTOUT モバイルバッテリー

ちなみに「IP67」の十の位である「6」は防塵性を表し、6段階で最高レベル。“塵埃の侵入が一切ない”ことを示している。また一の位の「7」は8段階にわけられる防水性のうち、上から2番目に高く、“一時的に水中に沈めても機器が影響を受けない”ことを示している。それよりも上に当たる防水性「8」は“継続的に水中に沈めた場合でも機器が影響を受けない”という意味だが、NESTOUT モバイルバッテリーはそこまでの防水性はないとしても、山中で想定されるレベルの浸水や豪雨のシチュエーションならば、安心して持ち運べるということだ。

なお、今回のテストの後も僕はこの「10000mAh」を使い続け、いまだ長いテストを続けているともいえる状況。だが、あとになってダメージが出てくることもなく、バッテリーの出入力も安定したままである。

以前、僕が使っていたモバイルバッテリーは、道路に落としたら充電ができなくなり、結局廃棄してしまった。また、テント内の結露でモバイルバッテリーがズブ濡れになったこともあり、その際はUSBポートまで乾燥させるのにかなり手間取った(このときは乾燥させた結果、支障なく使える状態に復活したが)。これほどタフなNESTOUT モバイルバッテリーならばそのようなトラブルの心配は激減しそうであった。

 

付け替えできる専用ギア

さて、ここからは少し話を変え、“NESTOUT専用ギア”も簡単に紹介しておこう。

現在、用意されている専用ギアは4種類。太陽光を利用するソーラーチャージャーとランタンがそれぞれ大小2タイプである。

このなかで「登山」という視点で使いやすいのが、「LEDランタン LAMP-1」だ。これはNESTOUT モバイルバッテリーに直結でき、最大350lmの光量。バッテリーを固定するミニ三脚もついている。重量は約75gだ。

NESTOUT モバイルバッテリー

これよりも大型で最大光量1000㏐の「LEDランタン FLASH-1」もあるが、重量135gでかさばり、登山時というよりは、一般的なキャンプ向き。また、ソーラーチャージャーは小型のほうでも約535g。「10000mAh」の2倍以上の重量になり、陽に当てて充電する時間もかかるため、よほどの長期登山のときでなければ複数の充電済みモバイルバッテリーを持っていくほうが現実的だ。とはいえ、災害時の停電などを考えると、ソーラーチャージャーもひとつ持っていると安心できそうである。

話を「LEDランタン LAMP-1」に戻そう。

NESTOUT モバイルバッテリー

LAMP-1はライト部分の真下にあるUSB-Aでモバイルバッテリーに連結する。いったん接続パーツを取り外してから改めてバッテリーに連結させなければならないため、わずかに手間取るが、これはコンパクトさを保ちながら防水性をキープするための工夫である。

NESTOUT モバイルバッテリー

連結部分にはパッキンが使われ、防水・防塵性は「IP44」。モバイルバッテリー自体よりも防水・防塵性は低いが、“直径1㎜以上の固形物”を侵入させず、“あらゆる方向からの飛沫を防ぐ”性能を持っている。

最大光量350lmに対し、最小光量は10lmである。写真は350lmのときのもので、温かみがある電球色の光が魅力的だ。5000mAhで最大光量は約4.5時間、最小光量時は約26時間もつというスペックで、10000mAhならばその倍は使える計算である。

NESTOUT モバイルバッテリー

付属のミニ三脚はそれぞれの脚を調整でき、不整地でもランタンを直立させられるのがいい。

このミニ三脚の、脚の根元には吊り下げ用のループがあり、カラビナなどをつけられる。

NESTOUT モバイルバッテリー

この工夫により、木などから吊るし、下向きにして使用することも可能だ。

NESTOUT モバイルバッテリー

ちょっとしたことだが、使用時の応用度が高まっている。

「IP44」の防水・防塵性を試すために、ボトルに入れた水を何度もかけてみた。

NESTOUT モバイルバッテリー

ランタンが倒れてしまうくらい盛大に水をかけたが、連結部の内側への浸水はなし。

NESTOUT モバイルバッテリー

ライト部分に力を入れて触ると連結部分がいくらか揺らぎ、そのタイミングで水をかければ水が内部に入る恐れはある。しかし普通に置いて使っている分には、大雨のときでも大丈夫だろう。

 

まとめ:アウトドアで安心して使えるタフなモバイルバッテリー

「NESTOUT モバイルバッテリー」はたしかにタフなモバイルバッテリーであった。防水性、防塵性、耐衝撃性に関しては、一般的なモバイルバッテリーをはるかに上回る力を持っているのは確実である。

ただし、そのタフさを実現するために、少々重くなっているのは否めない。モバイルバッテリーで比較すると、現在、10000mAh程度のモバイルバッテリーの多くは200gを軽く切っている。それに対し、NESTOUT モバイルバッテリーは約241g。ざっくり言って、50g程度は重いのだ。また、約241gもあれば、一般的なモバイルバッテリーの15000mAhすら入手できる。

だが、このように重くなるのは、「安心・安全」のためだ。間違って破損・水没してしまい、その結果、充電ができなくなり、充電できないことからスマートフォンが使えなくなり、スマートフォンが使えないことから道迷いを起こし、さらには救助を求めることもできなくなったら……などと連鎖していくトラブルを考えれば、50g程度重くなっても仕方ないのではないか?少なくとも僕には許容範囲の重量増で、“安全を重量で補う”感覚なのであった。

最後にひとつ願望がある。以下は充電しながら行動中しているときに撮影したカットだ。

NESTOUT モバイルバッテリー

このままサコッシュのようなものに入れて歩くことはできるが、何かの拍子にケーブルが抜けそうになるばかりか、端子部分が壊れる恐れもあり、なにかと面倒だ。理想を言えば行動中には充電せず、宿泊中や休憩中に充電すべきなのだろうが、山ではバッテリー切れのスマートフォンを持ち歩いても意味がなく、このように充電しながら歩かねばならないシチュエーションはどうしても出てくる。この場合、バッテリーが浸水する危険も承知しているが、とくに緊急時はそんなことは言っていられない。

そこで、モバイルバッテリーから充電しながら、両者の位置を固定でき、ケーブルに負担がかからないような工夫はできないものだろうか。例えば、バッテリーにスマートフォンを固定するホルダーを付属させたり、モバイルバッテリーとスマートフォンがずれない位置に収められるアクセサリーポケットやポーチを開発したり。できれば何らかの形で、ある程度の防水性もキープしたい。そんなものがNESTOUT モバイルバッテリーの専用ギアとして製作できれば、ますます便利そうである。

 

今回のPICK UP

エレコム/NESTOUT モバイルバッテリー(10000mAh)

NESTOUT モバイルバッテリー

重量:約241g

価格:オープン価格

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プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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