愛する地元の山と自然で地域を元気に。泉・五家荘登山道整備プロジェクト
豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。今回は、熊本県の五家荘(ごかのしょう)エリアで登山道整備などに取り組んでいる「泉・五家荘登山道整備プロジェクト」を紹介する。
写真=泉・五家荘登山道整備プロジェクト、取材・文=一ノ瀬伸
泉・五家荘登山道整備プロジェクト(2011年度認定)
Area:九州中央山地・五家荘Main activity:登山道整備
Group profile:
五家荘エリアの宿の会や観光ガイド・インストラクター協会、しゃくなげ会などで構成され2008年に始動。地元観光協会、消防団、警察署、行政とともに登山道整備に取り組んでいる。
「この地域をみんなで元気にしよう」
そんな地元住民の声かけで2008年に始まった「泉・五家荘登山道整備プロジェクト」。景勝地として知られる熊本・五家荘エリアへ登山客を呼び込もうと、登山道整備や情報発信を行なっている。
会には宿泊施設や観光ガイドの関係者らが参加する。発起人である炭尚之さんは設立の経緯をこう振り返る。
五家荘エリアは、九州脊梁山地の急峻な山々に囲まれる。会では、熊本最高峰の国見岳(1739m)や平家の落人伝説がある白鳥山(1639m)などをつなぐ全長40km以上のルートを整備。ボランティア、自治体、消防団などの協力も得て、道標やレスキューポイントの設置、下草の伐採、危険箇所の修繕などに取り組んできた。またインターネットを使った登山情報の発信にも注力する。
八代市職員で、プロジェクト会員の小野康成さんは縦走路の特徴をこう説明する。
「九重山や阿蘇山のようにきれいな登山道ではないんですよ。それがよかところでもあるんですが、道迷いが起こりやすいので、こまめな整備や情報の更新が重要になります。傷んだロープを取り替えたり、危険箇所をチェックしたり、継続的に活動を続けています」
ときには40人以上で、ときには数人で山に入って汗を流している。
4月下旬に山開きを終え、いよいよ本格的な登山シーズンに入る。春、夏、秋と季節ごとの希少植物が咲き、登山者を魅了する五家荘の山。小野さんは「花好きには垂涎の場所ですよ」と自慢げだ。
炭さんは「コロナ禍がようやく落ち着いたので、みんなで集まってまた縦走路整備のような大きな目標を決めたいですね」と声を弾ませた。
★日本山岳遺産認定地 詳細:九州中央山地・五家荘エリア [ 熊本県 ]泉・五家荘登山道整備プロジェクト(2011年)
日本山岳遺産候補地を募集中! みなさまの活動を支援します
日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。
支援団体の条件
- 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体
- 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体
- 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体
助成対象となる活動費の主な用途
- 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費
- 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費
- 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費
助成金総額 250万円(予定)
詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html
(山と溪谷2023年6月号より転載)
プロフィール
日本山岳遺産基金
日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/
日本山岳遺産の横顔
日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!