雪山の行って良い場所、悪い場所。山の選び方。 山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(6)

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道具やウェアを揃えたら、次に悩むのは山選び。どの雪山からはじめたら良いでしょうか? 本記事では、関東に住んでいることを前提に具体的な山域名をあげて紹介しています。遠方の方も雪山の危険な場所や、ステップアップの考え方など参考にしてください。

POINT
  • 雪山で行ってはいけない場所はないが、危険が場所がある!
  • まずは、行ったことのある山でアイゼンの体験を
  • 次におススメなのは標高2000m程の“雪山らしい”チャレンジができる山
雪山の行って良い場所、悪い場所。また山の選び方。

質問: 関東に住んでいます。雪山装備を揃えたので、さっそく雪山登山計画を立てるところです。初心者でも楽しめて行きやすいオススメの山があれば知りたいです。また、雪山で行ってはいけない場所ってありますか?

覚えておきたい2つの危険な場所

まず、雪山で行ってはいけない場所はありませんが、行くと危ない場所はあります。登山道が冬で隠れているのでルートどりが自由な分、無雪期の登山と比べて危険な場所に行ってしまう可能性が高いのも雪山です。「大量に雪が積もった後の谷筋のルート」や「強い風が予想される日に痩せた稜線にルートをとること」は危険なので、必ず覚えておいてください。

 

経験のある低山→標高2000m程の雪山へ

全く雪山の経験がない場合、はじめての雪山経験におススメしているのは、都心で冷たい雨の降った次の日に、丹沢や奥多摩の登ったことのある山に行くことです。山にはうっすら雪が積もっているので、軽アイゼンをつけて雪山体験ができます。ただ、その際も谷筋のルートは避ける事が賢明です。トラバース道の凍結や、徒渉したい橋に積雪があるなど、トラブルに遇うことがありますので気をつけてください。

次の雪山としては、大菩薩や雲取山などの標高2000mちょっとの山を選ぶといいでしょう。こういった山域は連日で雪が降り続くことが少ないので、晴れると南面側の雪だけが融け、南北で積雪量が違います。雪が降れば一晩でトレースが消えます。また一般的に体感温度は、標高1000m上がると5~6度、風速1mごとに1度下がると言われています。今、東京で8度なら、雲取山2017mの山頂は無風でマイナス2度~4度。「雲取山も東京さ!」なんて思っていると、寒いですよ! そんな“雪山らしい”チャレンジができる山です。

 

森林限界も体験できる雪山としておススメなのは金峰山

さらにステップアップを目指すのであれば、関東では金峰山が良いでしょう。1月末まで(雪、天候の状況による)、週末のみ頂上直下の金峰山小屋が営業しています。

 

金峰山頂上直下の登り。瑞牆山、八ヶ岳をバックに。

 

金峰山は標高2599mの山。2500m辺りまでの樹林帯では、雪の原生林を抜けていく雪山山行が楽しめ、山頂付近では森林限界を越え、視界が開けた高山の雰囲気が味わえます。雪崩や滑落の危険が少ないこともお勧めするポイントです。軽アイゼン+ストックでも登頂できますが、アイゼン+ピッケルを体験してみてください(ワカンは必携)。

これらの体験をした後に北八ヶ岳などの本格的な寒さと、積雪の多い山に向かってみてはいかがでしょうか?

 

 

金峰山小屋を風雪の中、出発していることろ。一晩でついた霧氷が美しい

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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