【書評】山との調和をめざした建築のあり方『吉阪隆正+U研究室 山岳建築』
評者=大関直樹
吉阪は、世界的建築家ル・コルビュジエに師事し、コンクリートによる彫塑的な造形をもった独特の建築で知られているが、建築以上に熱心に取り組んだのが山行だったという。そんな彼が手がけた山小屋は厳しい自然と対峙するものではなく、山との調和や同化をめざすものであったというのが興味深い。
「山の無言の教えがまた私の良心を育てる。美的感覚を、詩情を養うと共に、そこでの困難をのり切るための正確な技術を習得していった。するとますます山に戻ることが、私の良心をたてなおす機会になっていく」
本書には、右記のような吉阪の詩とも箴言とも言える言葉が、あちこちにちりばめられており、その意味をひもときながら建築物の写真を見ていくのは楽しい。建築の専門的な知識がなくても山好きなら読んでみたくなる一冊だ。

吉阪隆正+U研究室 山岳建築
| 写真 | 北田英治 |
|---|---|
| 編著 | 齊藤祐子 |
| 発行 | 建築資料研究社 |
| 価格 | 2,750円(税込) |
評者
大関直樹(おおぜき・なおき)
1968年生まれ。フリーライター。本誌をはじめ、アウトドア関連の取材執筆を幅広く行なう。
(山と溪谷2023年8月号より転載)
登る前にも後にも読みたい「山の本」
山に関する新刊の書評を中心に、山好きに聞いたとっておきもご紹介。
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