どっしりとそびえる南アルプスの盟主・北岳 温泉の後で味わうがっつり定食
南アルプスの盟主、標高日本第2位の高峰・北岳。山とどっぷり向き合った後は、温泉で汗を流し、ボリューム満点の定食で頑張った自分にご褒美を。
写真・文=西野敏子
9月半ば、街中はまだまだ暑かったけれど、山は秋の気配だった。北岳を訪れるのはおよそ5年ぶり。前回は白峰(しらね)三山を縦走したが、今回は山小屋泊まりの1泊2日、広河原(ひろがわら)からの往復。テント泊じゃないから荷物も軽いし、気持ちよく歩けるぞと思ったが、そこは標高日本第2位の山。広河原からの標高差は1700m近く、難所はないものの全体を通してかなりの急登。息を切らし、へとへとになって今宵の宿、北岳肩の小屋に到着した。
夜中に起きて外に出てみると満天の星空。ベンチに座ってしばらく空を見上げていた。翌朝、小屋の前からはきれいな御来光が眺められた。軽い荷物で山頂を往復し、景色を楽しんだら下山。登るのはきつかったが、下るのはあっという間・・・。それでも急な下りで最後はふうふう言いながら広河原に到着した。
モデルコース:北岳
コースタイム:広河原(3時間10分)白根御池小屋(30分)大樺沢二俣(3時間)北岳肩の小屋(40分)北岳(30分)北岳肩の小屋(1時間50分)白根御池小屋(2時間)広河原 合計11時間40分(1泊2日)
アクセス:JR中央本線甲府駅から登山バス約50分、芦安で乗り換え約50分、広河原下車 *登山バスは開山期間のみ運行
巨大かつジューシーな唐揚げにかぶりつく!
広河原から路線バスに乗り、駐車場のある芦安(あしやす)で下車。
駐車場の脇にある白峰会館(はくほうかいかん)に立ち寄っていくことにした。温泉で日帰り入浴ができ、さらに食堂も併設されている。まずは温泉へ。男女別で内湯と露天風呂がある。無色透明、柔らかな肌触りの湯だ。汗を流し、楽しかった(きつかった)山行を思い出しながら、ゆっくりと体を温める。
風呂から上がるとお腹がすいている。併設の食堂で食事も済ませて帰ることにした。
なににしようか、レジ上に掲げられたメニューを眺める。定番のうどんやそばのほか、定食類、さらにはカレーもある。どれにしようか、どれもおいしそうだなと思いながら、からあげ定食をオーダーした。
広々とした店内、ガラス張りで周囲の緑が眺められて心地よい。テーブル席のほか、奥には畳敷きの間もある。小さめだが売店スペースもあった。同行者たちと今回の登山を振り返りながら待つことしばし、食券番号が呼ばれてからあげ定食が登場!
フレッシュな野菜とともに、巨大な鶏の唐揚げが5つも! いやちょっと盛りすぎじゃないか? ご飯と小鉢、具だくさんの味噌汁。ボリュームたっぷり。同じメニューを頼んだ同行者のひとりは「これ、食べきれるかね…」と呟いている。そうだよね、こんなに唐揚げが巨大かつ大量なのは想定外だ。
まず付け合わせの野菜を一口。山帰りはシャキシャキの生野菜が最高においしい・・・というか気持ちいいといつも思う。そして、唐揚げに油淋鶏ソースをかけてガツッと一口。ジュワッと熱い! 柔らかくジューシーな肉、揚げ具合が絶妙だ。噛むほどに味わい深く、ニヤニヤしながらご飯を一口。はぁ、至福。
同行者のひとりは厚切りカツカレーを頼んでいたが、こちらのトンカツもだいぶ分厚い。いいなあ、カレーもカツもおいしそうだ。それにしても、このからあげ定食、食べても食べても唐揚げがなくならない。なんて幸せなんだろう。味噌汁が優しい味わいなのもうれしいなあ。
食べきれるかな、なんて思ったけど、おいしく全部たいらげた。
ごちそうさまでした。お腹いっぱい、もう食べられない。
南アルプスは遠く山深く、自分にとってはなかなか訪れることのできない山域。だからこそよい山行ができてうれしいし、おいしいご飯で登山を締めることができてうれしい。感謝。
店名:南アルプス温泉ロッジ・白峰会館南アルプス登山の玄関口、芦安駐車場脇に建つ。温泉の日帰り入浴施設、レストランを併設し、宿泊も可能。6月中旬〜11月上旬営業。電話:055-288-2321住所:山梨県南アルプス市芦安芦倉1570アクセス:JR甲府駅から(快速)広河原行き登山バス50分、市営芦安駐車場下車すぐ
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。