偏光フィルター〜水流で違いを見る|山の写真撮影術(20)
光の反射を抑える偏光フィルターは、思いがけない変化を写真に与える。水流の写真を例にその効果を解説します。
文・写真=三宅 岳、イラスト=石橋 瞭
デジタルカメラは、撮影時にはカメラ自体で、撮影後にはパソコン上で、色や明るさなどさまざまな調整が可能なので、フィルム時代に比べ、撮影時にフィルターを使って調整する必要はほとんどなくなった。
しかし、偏光フィルター(PLフィルター)だけは、被写体の光の反射を除去したり、空の色彩を鮮やかにするなど、デジタル処理では追いつかない、便利で有効な機能がある。なかでも、水面は光の反射が大きいので、偏光フィルターによってダイナミックな変化が起こる。
なお、偏光フィルターにも多くの種類があるが、おすすめは円偏光フィルター(C‒PLフィルター)。レンズ先端にねじ込んで、ファインダーを覗きながら枠を回転させると、その効果がよくわかる。なお、フィルターによっては、色が変わったり、画面が暗くなることもあるので、それを考慮して撮影したい。
【作例1】
偏光効果なしで撮影
カメラ | ペンタックス KP |
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レンズ | smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR(36mmで撮影、35mm換算で54mm) |
ISO | 160 |
絞り値 | f14 |
シャッター スピード |
1/60秒 |
備考 | -2/3補正、シャッタースピード&絞り優先オート、偏光フィルター着用(効果なし) |
【作例2】
偏光効果最大で撮影
①偏光の効果は好みで調節
フィルター効果でしっかり河床まで見えている。しかし、何でも偏光フィルターを利かせて、隠れた色合いを引き出すというのは、どこか大人げない手法にも思えるし、変更効果なしの写真のように、柔らかな表情で流れ下るさまも捨てがたい魅力がある。そのときに撮りたい写真に合わせて使い分けたい。
②偏光効果で色彩も鮮やかに
ヴェールのような水の反射を除くだけではなく、落ちていた葉っぱの色も再現できる。黒っぽく沈んだ岩の河床だからこそ、この色が生き生きとする。
③思いがけない河床の色を写す
偏光フィルターの効果はいくつかあるが、反射を抑えることが最も大きな特徴である。フィルターの効果がなければ、水面はまるで絹糸の被膜がかぶさったような描写となるが、フィルターを利かせて反射を取ると、水流の底、岩の色がしっかり出てくるのだ。
カメラ | ペンタックス KP |
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レンズ | smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR(36mmで撮影、35mm換算で54mm) |
ISO | 640 |
絞り値 | f14 |
シャッター スピード |
1/60秒 |
備考 | -2/3補正、シャッタースピード&絞り優先オート、偏光フィルター着用(最大効果) |
まだまだある実用フィルター
デジタル時代でも有効なフィルターはほかにもある。僕はあまり利用しないが、レンズ前玉保護のため素通しのフィルター(プロテクター)は、多くの人が利用する。
また、クローズアップレンズも利用価値の高いものである。端的に言えば凸レンズ。レンズに装着する虫眼鏡だと思ってもらっていい。その倍率の違いでいくつもの種類がある。左の写真は、APS‒Cセンサーの一眼レフの50mmのレンズにAC5という比較的倍率の高いクローズアップレンズを装着しての比較である。ここまで寄れると迫力が出る。
もう少し寄りたい、接写したい、という欲望を比較的手軽に叶えてくれるクローズアップレンズも、そろえて損はないアクセサリーだ。
(山と溪谷2023年11月号より転載)
プロフィール
三宅 岳さん(山岳写真家)
みやけ・がく/1964年生まれ。丹沢や北アルプスの山々で風景や山仕事などの撮影を行なう。著書に『ヤマケイアルペンガイド 丹沢』(山と溪谷社)、『山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地』(昭文社)など。
山の写真撮影術
『山の写真撮影術』では、山で見られる風景から毎回テーマを設け、それに沿った写真撮影術を解説します。