コンパクトデジタルカメラ〜実はすごいぞ|山の写真撮影術(22)

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気軽に持ち歩ける高性能なコンパクトデジタルカメラ。小さなサイズでも侮るなかれ。一眼やスマホに負けない山に適した機能を持つ特徴的なカメラである。

文・写真=三宅 岳、イラスト=石橋 瞭


コンデジ。すなわちコンパクトデジタルカメラの影が、近年すっかり薄くなってしまった。高性能カメラが搭載されたスマホが普及したからだ。

だからこそ、販売が継続されているコンデジには特徴あるカメラが多い。なかでもアウトドアでの使用を前提にしたコンデジには、一眼レフやミラーレスという高級機にはないユニークで実用的な機能がある。

まずは頑丈で防水性が高く、水中での使用ですら気兼ねなくできる。さらに抜群の接写性能や強力な手ぶれ補正。加えてGPS内蔵ならば撮影場所の確認はもちろん、ログを記録することもでき、下山後の写真整理もいっそう楽しくなる。

こういった高機能が小型軽量のボディに凝縮されているというのは、登山中のこまめな撮影にも大きなメリットになる。実際、僕も撮影の際はコンデジを携行し、大いに働いてもらっている。

接写もできる

コンデジの多くは接写モードがある。その倍率も相当な拡大率を誇るものがあるので、肉眼での観察以上の不思議ですてきな自然を見つけることができるのだ。手ぶれ補正やLED照明を組み合わせれば、失敗も少ない。

力強く生えるブナシメジ。カメラはオリンパスTG-4。深度合成を利用して、手持ちでもぶらさずに深いピントの写真を得た

深度合成

接写では絞り込まない限り合焦範囲が浅い(下の写真)。そこで利用するのが深度合成。一度のシャッターで合焦位置をずらしながら複数枚が撮影でき、自動で合成される。デジタルならではの技術を手軽に使える。

水際・水中でもパチリ

コンデジには強力な防水を誇り、水中撮影できる機種がある。実際に渓流に浸しての撮影は思いどおりに構図が決められず案外難しいのだが、飛沫飛ぶ水際ギリギリでの撮影で、その強みはいかんなく発揮される。

吐竜の滝。オリンパスTG-6使用。無理な撮影姿勢、暗い天候、ISO200という条件だが、F2開放で撮影。手持ちでもブレがない

渓流釣り取材の際の一枚。リリースした岩魚を水中で撮影。アングルは勘なので、失敗も多くなる。その中でうまく撮れた一枚

峠道に沿った流れにて。浮かんだ落ち葉を生かして、水中と陸上を組み合わせた

上の写真の撮影後に、カメラを沈めて写した。葉っぱが強く出たが、このほうがテーマもはっきりしておもしろい一枚に仕上がった

『山と溪谷』2024年1月号より転載)

プロフィール

三宅 岳さん(山岳写真家)

みやけ・がく/1964年生まれ。丹沢や北アルプスの山々で風景や山仕事などの撮影を行なう。著書に『ヤマケイアルペンガイド 丹沢』(山と溪谷社)、『山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地』(昭文社)など。

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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