写真のすゝめ|山の写真撮影術(最終回)
2年にわたって続いたこの連載も今回で最終回。写真は技術も大事だが、最も大事なことは自分の写真を愛すること。
文・写真=三宅 岳、イラスト=石橋 瞭
「山の写真撮影術」も今回で千秋楽。お付き合いありがとうございました。
自分でも不思議ですが、こういった撮影術指南には、あるはずもない「いい写真」への志向が底流にあるのです。誰からも「いいね」を押してもらえるような写真への志向。これまでの教えを遵守してもらえば、それなりの「いいね」になるはず。
でも、それがあなたの写真なのか、ということはまったく別な話。写真には型も枠もなく、自分で切り開く表現です。撮影術を軽く飛び越えてください。そして思うような写真にならずとも、自分の写真を愛してあげましょう。それが最後の指南。今回の作例は、僕が愛する僕の山の写真を集めたものです。
締めの言葉には、日食なつこさんの楽曲「音楽のすゝめ」の歌詞から最後のフレーズをお借りします。(ズルいね)
また馬鹿な僕らで会おうぜ。
人の時のなかの山
山は人とともにある。その時を噛みしめる。人は古来、山に生かされ山に生きてきた。そのかけらを手ですくうように拾い集める。
悠久の時のなかの山
山は人と関係なくそこにある。手を伸ばしても届かない時間に腰を据えている。その切片を一つ、指先に仕留める写真冥利。
(『山と溪谷』2024年4月号より転載)
プロフィール
三宅 岳さん(山岳写真家)
みやけ・がく/1964年生まれ。丹沢や北アルプスの山々で風景や山仕事などの撮影を行なう。著書に『ヤマケイアルペンガイド 丹沢』(山と溪谷社)、『山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地』(昭文社)など。
山と溪谷編集部
『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。
山の写真撮影術
『山の写真撮影術』では、山で見られる風景から毎回テーマを設け、それに沿った写真撮影術を解説します。