第1回 3月 足もとの春を見つけに小下沢へ

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平野部にも降雪の多かった今年の冬も少しずつ春に向かっています。 小社刊のガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者であり、写真家の渡邉明博さんは、標高1000mに満たない山を知り尽くす「低山フォトグラファー」として活躍しています。そんなベテランの渡邊さんに、この季節ならではの低山の魅力とおすすめのコースを聞きました。

 

満開の小下沢梅林(写真=渡邉明博)

 

暦が3月を迎えると、私が気になるのは、高尾山の北側に広がる小下沢梅林(こげさわばいりん)と、川辺に咲き乱れるハナネコノメです。

小仏バス停から景信山に登り、城山を経由して日影沢林道で日影に下ります。そこから小下沢まで歩き、お花見を楽しむ――、これがこの季節の私の定番コース。早春を彩る美しい花たちと出逢えるのです。 梅林は、赤や白やピンク色の花が斜面を埋めつくし、とてもメルヘンチックになります。見逃してしまいそうに小さいハナネコノメは、この時期しか見られない愛らしい花です。

朝の斜光線では、景信山や城山からの展望を楽しみます。そして、太陽が高くなり、小下沢にも陽が差し、花に陽が入る頃に合わせて下山します。舞台で踊る花たちにスポットライトが当たるようです。 梅林は小下沢梅林の他にも、小仏川沿いにいくつもあります。ハナネコノメは、小下沢梅林近くの沢沿いや日影沢林道入口の小仏川沿いに多く見られます。

 

小さいハナネコノメは目を凝らして見つけよう(写真=渡邉明博)

 

ハナネコノメの花はとても小さいので、写真に収めようと思ったら撮影にはマクロレンズが必要です。スマートフォンのカメラ機能なら、かなり近づいても写せるのでおすすめです。私の場合は、撮影に夢中になって、時間も忘れてしまうほどです。

そして、小下沢梅林でお弁当を広げれば、そこはすぐにお花見の宴会場になります。柔らかい日差しと、梅の香りに浸って、春の訪れを感じることでしょう。

帰りは、そのまま小仏川沿いの高尾梅郷フラワーロードを歩けば、梅を鑑賞しながら、JR高尾駅や京王線高尾山口駅に向えます。 途中にある高尾駒木野庭園も、時間が許せば立ち寄りたいポイントです。

 

梅の香りいっぱいの高尾梅郷フラワーロード(写真=渡邉明博)

 

今回は、私のおすすめとして、東京周辺の低山、裏高尾の景信山、小仏城山から、小下沢林道のコースを紹介しましたが、同じような条件の低山は、みなさんのお住いの近くにもきっとあるはずなので、ぜひ春を探しに低山を歩いてみてください。

次回は4月上旬におすすめの低山をご紹介します。お楽しみに。

 

登山地図中のコースタイムヤマタイムで登山計画を立てる。

 

いかがでしたか? 渡邊さんには、今後も季節季節の「低山の魅力」を語っていただく予定です。

 
『高尾山と中央線沿線の山』

高尾山と中央線沿線の山々の徹底コースガイド決定版! 南に丹沢山塊、北に奥多摩というメジャーエリアに挟まれた中央線沿線の山々は、日本百名山のような有名山岳こそ含まれないものの、首都圏の登山者から四季を通じて親しまれている。鉄道駅から直接登ることができる身近さから、根強い人気がある。著者が140日以上に渡って実踏調査したコース案内と、写真集のような美しい山岳写真でまとめられたガイドブック。富士山展望の山も多数収録。

⇒『高尾山と中央線沿線の山』

プロフィール

渡邉 明博

1957年生まれ。富士山撮影をライフワークとし、最近では中央線沿線の山をはじめ、低山の四季折々の風景を撮り続けている。『すばらしい富士に出逢える!富士山絶景撮影登山ガイド』(山と溪谷社)をはじめ、富士山関連の著書を多数執筆。山岳写真ASA会長。(写真=水谷和政)

低山フォトグラファーの気ままな山歩き

冬場はもちろん、真夏であっても、低山には見どころがたくさんあります。 ガイドブック『高尾山と中央線沿線の山』の著者で、「低山フォトグラファー」の渡邉明博さんに、季節季節のおすすめ低山情報を聞きました。

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