山の危険な野生動物スズメバチ。近寄ってきたときは静かにやり過ごし、緊急時にはとにかく走って逃げる

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秋の時期の活発に活動するスズメバチ。今年は暖かかったせいか、11月下旬になってもまだ活動しているという。スズメバチに刺されないための秘訣は「静かにやり過ごし、緊急時にはとにかく走って逃げる」ことだという。

 

山で出合ってしまう危険な野生生物と言えばクマとスズメバチだ。スズメバチへの対応と、クマへの対応は違う。山での危険を避けるためには、そこを知っておく必要がある。

今年はツキノワグマの被害がよく聞かれるが、実は山歩きをしていて、もっと遭遇の確率が高い危険な動物がスズメバチだ。例年であれば11月にはスズメバチの活動はおさまってくるのだが、今年はまだ活動しているようなので注意が必要だ。

山はスズメバチのナワバリ。そのナワバリの中で活動するのだから、そのルールを知り、ルールに従って行動しよう。スズメバチ対策も音が重要。自然の中ではよく耳をすまし、自然の音からの情報を、よく感じ取る必要がある。

スズメバチに注意の看板を見たら注意しよう

 

スズメバチは絶対に手で払わない

スズメバチは普段は人間を襲うことはない。たまに一匹でうろうろするスズメバチを見るが、この時のスズメバチはエサを探している。「ブーーーーン」と安定した羽音を立てて飛んでおり、人間には興味を持っていない。しばらくすると去っていく。

この時、近づいてきても、決して手で払ったりしてはいけない。早く動くものにスズメバチは興奮して攻撃してくるからだ。手で払うと、興奮して攻撃されたとスズメバチは思いこみ、攻撃を始める。

お弁当を食べるときも注意が必要だ。スズメバチは甘いものが好きなうえ、肉食でもあるので、お弁当の肉や果物に寄ってくることもある。近くを飛ばれると怖いが、それでも決して払ったりしないように。そっと見守ろう。

花蜜に夢中のスズメバチの様子

最も危険なのは巣に近づいた時だ。スズメバチは、人間が巣に近づくと攻撃してくる。巣は見えない木の洞の中に作られていることもあり、簡単に見つけられないこともある。だからスズメバチのたてる羽音をよく注意して聞くことが重要だ。

巣にはたくさんのスズメバチが集まっているので複雑な羽音がする。この状態では特に危険がない。スズメバチの巣を見つけたら、スズメバチを刺激しないようにしながら、大きく迂回して巣を避けて歩こう。

 

襲ってきたら、全力疾走で逃げる!

気が付かないでスズメバチの巣の近くを通った時はたいてい、スズメバチが怒って飛び回って教えてくれる。スズメバチの巣の周りには、必ず番兵役のスズメバチがいる。近づくと人間に付きまとって「ブンブブブンブン」と激しく飛びながら「カチ!カチ!」と大きな音を立てる。番兵役のスズメバチの警戒音(威嚇音)を聞いたら、体を低くして、スズメバチを刺激しないように、巣と反対方向にさっと逃げるしかない。

番兵役のスズメバチが警告しても逃げなかったり、手で払ったりすると、番兵スズメバチは毒液をマーキング液として飛ばす。液が体に付くと、その匂いで働きバチまで興奮して液がついている生き物へと次から次へと総動員して襲ってくる。

スズメバチの死骸、死んでいても目が怖い

スズメバチが大勢で襲ってきたら、全力疾走で逃げること。立ち止まったらダメだ。巣から距離をとらなければ、払っても払っても、次から次へとスズメバチの増援が来る。大勢のスズメバチに襲われたら、とにかく、できる限り全速力で、スズメバチがあきらめるまで、できる限りの距離を逃げるしかない。

以前スズメバチに刺されたことがある場合は、ショック症状が出ることもある。その場合は刺されたら、できるだけ早く病院に行って治療を受けることが必要だ。

まとめると、スズメバチが近寄ってきたときは静かにやり過ごし、緊急時にはとにかく走って逃げる。この2点をしっかりと覚えておきたい。

プロフィール

髙橋 修

自然・植物写真家。子どものころに『アーサーランサム全集(ツバメ号とアマゾン号など)』(岩波書店)を読んで自然観察に興味を持つ。中学入学のお祝いにニコンの双眼鏡を買ってもらい、野鳥観察にのめりこむ。大学卒業後は山岳専門旅行会社、海専門旅行会社を経て、フリーカメラマンとして活動。山岳写真から、植物写真に目覚め、植物写真家の木原浩氏に師事。植物だけでなく、世界史・文化・お土産・おいしいものまで幅広い知識を持つ。

⇒髙橋修さんのブログ『サラノキの森』

髙橋 修の「山に生きる花・植物たち」

山には美しい花が咲き、珍しい植物がたくさん生息しています。植物写真家の髙橋修さんが、気になった山の植物たちを、楽しいエピソードと共に紹介していきます。

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