機能的でちょっとかわいい、山スカートを愛用していた頃のこと/書き手:西野淑子 ―私の山道具②

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脚は登山で最もよく動かす部位。機能を重視しつつ見栄えも気にして選んできた、自分のボトムスの歴史を振り返ってみた。

写真・文=西野敏子、イラスト=清水将司

山スカートを試し、ハマる

先日、旅番組で山スカートがちょっとした話題になった。岩場のある険しい山道を、女優さんがロングスカートで歩いていて、そんな格好で山を歩くなんてと批判の意見が出たのだ。しかし、登山が趣味のひとつだという彼女が身につけていたのは「トレイルスカート」という、アウトドア向けのスカートだったそう。

たまたま番組を見て、その後のニュースの流れも見ていて、私もスカートを愛用していた時期があったのを思い出した。2010年ごろ、いわゆる「山ガールブーム」直後から2020年ぐらいまで、低山ハイキングや縦走登山ではサポートタイツに山スカートやショートパンツの組み合わせが定番だった。

スカートをはくようになったのは、原稿書きの仕事がきっかけだ。2011年の夏、ボトムスについて解説を書くことになり、取り上げるメインはパンツだったが、山スカートのことも書きたいと思ったのだ。当時はスカートなんて歩きにくい、おしゃれだけで機能的ではないなど否定的な意見が多く、私もそうだろうと思っていた。でも、使ってもいないのによくないと決めつけるのはおかしくないか。自腹でスカートを購入し、山ではいて歩いてみたのだ。

選んだのはバーグハウスの「アドベンチャースカート」。かなりのミニ丈、紺色の生地に真っ赤なマチ付きポケットがふたつ、かわいすぎるデザイン。自宅を出て、電車に乗るのを躊躇したが、登山口に立ってしまえばこっちのものだ。そして歩き始めたら脚さばきがよく、快適に歩けることに驚いた。試したのは真夏だったが、パンツスタイルよりずっと涼しく心地よい。生地に適度な伸縮性があったので、一般登山道の多少の段差は全く気にせず脚を運べるし、歩いていて生地がずり上がってくるようなこともない。

なんだ、山スカート、なかなかやるじゃないか!

ハイキング本のコースチェックのときや、低山歩きの講座などで使うようになった。アドベンチャースカートのほか、巻きスカート風に見えるキュロットパンツ、さらにはかわいいデザインのショートパンツを愛用していた。当時のマイブームは「かわいすぎない山ガールスタイル」。機能がしっかりしているのは当たり前、そのうえで着るものを楽しんでもいいんだな。山にいる女子たちのコーディネートをさりげなく観察したり、講座の受講生たちと情報交換したり。山スカートは、私に登山の楽しみの引き出しを増やしてくれた。

現在のお気に入りは脚が美しく見えるロングパンツ

その後、もう少し大人っぽい色や柄のスカートが欲しくなり、探してみたのだが、店にスカートを置いていないことも多かった。スカート風のキュロットパンツは多かったのだが、パンツではなくスカートがよかったのだ。ちょうどいい好みのものに出合えないまま時間が過ぎ、2020年ごろからは、マイブームが「ストレッチ性のあるロングパンツ」に変わった。加齢とともにショート丈のスタイルの「寒さ」や、サポートタイツの窮屈さが気になるようになってしまったし、「ロングパンツはプロっぽくてかっこいい」と思うようになった。

今、主に使っているのはTHE NORTH FACEの「アルパインライトパンツ」だ。生地にストレッチ性があって脚さばきがよく、テーパードシルエットで脚が細く見える。脚が短く、腿やふくらはぎがやや発達している自分にとって「脚が細くきれいに見える」というのは大事な判断基準だ。講座の仕事でも、クライミングや雪山などでも愛用しており、もはや手放せない一着だ。

しかし今、あの女優さんがはいていたスカートがとても気になっている。山のウエアっぽく見えないロングスカートでのんびり低山を歩いたり自然散策をしたり。想像しただけですてきじゃないか。しかしあのスカートで本当に快適に山を歩けるのだろうか。試してみたくてウズウズしている。

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

私の山道具

お気に入りの山道具、初めて買った登山ギア、装備での失敗談・・・。山道具に関する四方山話を紹介します。

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