ヨーロッパ10サミッターを目指せ! 意外と手軽に登れるヨーロッパ“各国”最高峰への誘い Vol.1

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大陸最高峰を知っている人は少なくないと思うが、各国の最高峰を知っているという人は少ないだろう。意外な国の意外な最高峰はどこにあり、どんな山なのだろうか? 今回はヨーロッパの各国で、無理なく登れる最高峰への旅に誘う。

 

スペイン最高峰のテイデ山からの展望

現在、ヨーロッパは約50の国から形成されています。ヨーロッパの山といえばマッターホルン(4,478m)やモンブラン(4,810m)など、ヨーロッパアルプスを思い浮かべる人が多いと思います。しかし両山とも雪山の技術や歩行スピードを求められる難易度の高い山のため、夏山装備で気軽に登頂できる山ではありません。

しかし、ほかのヨーロッパに目を向けると、ヨーロッパアルプスに勝るとも劣らない魅力的な山がたくさん存在します。そこでヨーロッパの「各国最高峰」の中で、特別な登山技術を必要としない、おすすめの名峰10座を3回に分けて紹介していきたいと思います。

 

Vol.1 スペイン最高峰テイデ山(3,718m)

スペインの最高峰はヨーロッパ大陸にはなく、大陸から大きく離れた「カナリア諸島」という場所に聳えているのをご存じでしょうか? カナリア諸島の位置はモロッコの西約100Km、大西洋に浮かぶ7つの島からなる群島です。

スペイン最高峰は、ヨーロッパ大陸から離れた、アフリカの西にあるカナリア諸島にある

 

ヨーロッパの人々にとってカナリア諸島は手軽なリゾートとして有名ですが、日本人にとっては場所さえ分からない方が多く、まだまだ知る人ぞ知る穴場のエリアと思います。交通手段はスペインの首都マドリードからとなり、国内線で約3時間30分のフライトでテイデ山のあるテネリフェ島に到着します。

テイデ山登山のおすすめシーズンは5月下旬から6月にかけてとなります。その理由は何と言っても「エキウム・ウィルドプレッティ」というお花が咲く季節だからです。エキウム・ウィルドプレッティは、ムラサキ科の花で、高さは3mを越えるものもあり、深紅の花びらをびっしりと付けるその姿から「宝石の塔」とも呼ばれています。この花は固有種のためカナリア諸島でしか見ることができません。

カナリア諸島の固有種の花、エキウム・ウィルドプレッティの壮観な姿

 

テイデ山はコニーデ型の美しい山容で、登山する場合は通常、1泊2日の山小屋泊となります。登山口は標高2,350m、森林限界を越えているので大展望の中からの出発となります。現地ガイドから聞いた話では、「このエリアは貿易風の影響で標高2,000m付近に雲がたまることが多く、それ以上の標高地は年間300日以上が快晴になる」とのことで、高い確率で晴天が期待できるのも魅力です。

コニーデ型の山容が美しい、スペイン最高峰のテイデ山

 

登山口から山小屋(アルタビスタ小屋3,260m)までは5時間ほどで、昼過ぎから歩き始め、山小屋が開く夕方に到着するのが一般的です。山小屋は自炊小屋でシャワーは付いていませんが、ベッドや寝具は備え付けられているので快適です。

2日目のアタックは夜が明けない暗いうちに出発して、標高差約500mを登って山頂を目指します。9合目を過ぎるといよいよ傾斜が急になりますが、手を使うほどの箇所はありません。山頂からの眺望は抜群で、外輪山の奥に大西洋がキラキラ光る景色が広がっています。

下山は9合目からロープウィで一気に山麓まで下ることができます。なお、ロープウェイを使って登る場合には事前の申請が必要で、許可証がない場合は山頂駅から先へは行けないので注意が必要です。

 

Vol.2 イギリス最高峰ベン・ネヴィス(1,344m)

イギリス最高峰は、スコットランドに位置する

「イギリス」という呼称は日本独特なもので世界各国ではUK(United Kingdom)という名が一般的です。参考までに、イギリス(UK)とは、ウェールズ、イングランド、スコットランド、北アイルランドから構成されています。

イギリスは登山史においてはパイオニア的存在で、例えばマッターホルン初登頂者の1人エドワード・ウィンパーや、「そこの山があるから(Because it's there.)」で知られるジョージ・マロリーなど多くの登山家を輩出しています。

また、ウォーキングやハイキングの文化が古くから根付いており、国内には“フットパス”と呼ばれる「歩くことを楽しむための道」が網の目のように張り巡らされています。中には民家の敷地内を通る道まであり、特に湖水地方のフットパスは、日本からも多くのトレッカーが訪れる人気のエリアとなっています。

湖水地方のフットパスの様子。人気のトレッキングエリアだ

 

イギリスで最もポピュラーなトレッキングは、ウェールズの最高峰スノードン(1,085m)、イングランドの最高峰スコーフェル・パイク(978m)、スコットランド最高峰(1,344m)を1度に巡る、は“3ピークスチャレンジ”です。

ウェールズ最高峰のスノードンは山頂直下まで登山列車で上がれるため、僅か5分ほどで登頂できます。イングランド最高峰のスコーフェル・パイクは湖水地方に位置しており、標高差800mを8時間ほどで往復します。

スコットランドおよびイギリスの最高峰のベン・ネヴィスは、スコットランド・ハイランド地方にある山で、アウトドアのメッカであるフォート・ウィリアムの東に位置します。標高1,344mと低山ですが、登山口(30m)からの標高差は1,300m、約8時間かけて日帰りで往復するため、比較的歩きごたえのある山となります。南面はしっかりとしたトレイルが付けられていますが、北面は絶壁のため年間を通して多くのクライマーが訪れます。

英国最高峰のベン・ネヴィス。北面は絶壁となっている

 

Vol.3 アルバニア最高峰コラブ山(2,764m)

アルバニアは、日本ではあまり知られていない国だと思います。ギリシアの北西に位置し、バルカン半島内の一国です。1991年まで鎖国が続いていたため“ヨーロッパ最後の秘境”とも呼ばれていて、最近になって北部のアルバニア・アルプスがヨーロッパのトレッカーに注目されるようになりました。

アルバニアとマケドニアの国境に聳えるコラブ山

山中を訪れるとまるでヒマラヤの山村にいるような錯覚を覚えるような景観が広がり、昔ながらの生活を送る人々を垣間見ることができます。

最高峰のコラブ山は隣国マケドニアとの国境線上にあり、通常、アルバニア側から日帰りで山頂を往復します。

美しい国境稜線が続くコラブ山への登山道

 

登山口のラドマイヤ村(1,260m)から山頂までの標高差は約1,500mもあるため、かなり歩きごたえはありますが、技術的に難しいところはなく体力さえあれば登頂が可能です。この山はトレッカーに会うことが稀で静かな山歩きを楽しむことができるのが大きな魅力です。

 

ヨーロッパの山と聞くと、荘厳なヨーロッパアルプスの峰々を思い浮かべる人が多いと思いますが、紹介したように、さまざまな魅力を持った山がたくさんあります。ほかにもオススメな「最高峰」はたくさんありますので、引き続き紹介していきたいと思います。

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なお、次回はポルトガル最高峰ピコ山、ボスニア・ヘルツェゴビナ最高峰マグリッチ、ブルガリア最高峰ムサラ山を紹介します。

プロフィール

寺井 信之

アルパインツアーサービス株式会社/本社営業部
30歳で大手旅行会社より登山・トレッキング専門の同社へ。体育会系でならした体力を活かし年間100日以上ツアーリーダーとして世界の山旅を案内している。
現在は各国最高峰を中心に世界中の山を担当。公私ともに「山」が中心とした生活を送る。趣味は銭湯めぐりで都内を中心に200以上の銭湯を制覇している。

アルパインツアーサービス株式会社

マッターホルン北壁の日本人初登攀を成し遂げた芳野満彦(アルパインツアー元会長)が、1969年に日本で初めてヨーロッパ・アルプスへのハイキング・ツアーを実施して以来、約半世紀にわたり、世界中の山岳辺境地の山旅を企画、実施してきた。「トレッキング」という言葉を日本に定着させた、世界の山旅のパイオニア的存在。

⇒アルパインツアーサービス

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