待望の絶景!雷鳥沢キャンプ場泊で立山三山周遊

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読者レポーターより登山レポをお届けします。東武さんは数年前のリベンジに北アルプス・立山へ。

文・写真=東 武

1日目:室堂平~雷鳥沢キャンプ場

夏の登山として、2泊3日で立山を周遊する計画を立てました。

登山口の室堂平(むろどうだいら)へ東京からアクセスする方法は複数ありますが、今回は長野県の信濃大町駅から移動します。扇沢から電気バス、ケーブルカー、ロープウェイ、トロリーバスを乗り継ぐ立山黒部アルペンルートを使って室堂平へ行きました。

お盆を過ぎたとはいえ、まだまだ夏休みシーズンで、室堂平は登山客のほかに家族連れや観光客、多くの人たちでにぎわっていました。

立山
初日は雲が多く、立山の稜線が雲の中にかすかに見えました

室堂平から雷鳥沢キャンプ場までは1時間弱。石畳で舗装された道を歩きます。石畳は結構な傾斜があるうえ雨で濡れていると滑りやすく、3年前に訪れた時は突然の大雨に慌てて走ろうとしたところ足を滑らせました。今回は転ばないように慎重に歩きます。

この日は移動とテントを張るだけで、本格的な登山は明日から。日が沈むころには雨が降り始め、テントを打つ雨音が響きます。明日が晴れるのを願いつつ、寝袋に包まって眠りました。

2日目:雷鳥沢キャンプ場~剱御前山~別山~大汝山~雄山~浄土山~室堂~雷鳥沢キャンプ場

雨は明け方まで降り続いていましたが、5時には止みました。予定通りに登山を開始します。

まずは雷鳥坂を登って別山乗越(べっさんのっこし)をめざします。雷鳥坂は浮き石がゴロゴロと転がっているので、足を取られないよう注意して進みます。

登ること2時間、剱御前小舎(つるぎごぜんごや)に到着です。小屋から剱御前山の山頂までは10分程度の短い距離。剱御前山の頂上に登ると、すっきりときれいに晴れた剱岳が見えました。

剱御前山から、剱岳を眺める
剱御前山から、剱岳を眺める

剱御前山の山名である「剱御前」は元々、剱岳を指す尊称だったと聞いたことがあります。立山は剱岳を含む山岳信仰の山で、修験者が「剱御前」を拝むための展望地だったはずの山頂が、いつの間にか剱御前山という名前で呼ばれるようになったのだとか。

剱御前山からは剱岳の眺望が抜群ですが、どの方面を見回しても景観に優れています。

剱御前山からの眺望
遠目に富山の街並みが見えます

今日は天気に恵まれたなぁ、なんてこの時は思っていました。しかし、天気がよかったのは朝の数時間程度で、続く別山にたどり着くころにはすっかり稜線はガスに閉ざされました。景色は少しも見えません。

立山 別山から真砂岳へ続く真砂乗越
別山から真砂岳へ続く真砂乗越。霧に閉ざされて景色はまるで見えない

真砂岳(まさごだけ)の山頂直下はけっこうな急登ですが、霧のおかげでどのくらい登っているのかいまいちわかりません。富士ノ折立(ふじのおりたて)と大汝山(おおなんじやま)では山頂までスリリングな岩場の登りが楽しめるのですが、これも霧で視界が限られるので頂上に登っても高さは感じられず。

景色が見えなくても登山道自体の楽しさは変わりませんし、 稜線を真っ白な霧に包まれて歩くのも幻想的な雰囲気があります。でも、せっかくの立山なのだからやっぱり景色も見たい。

立山は3年前にも訪れていますが、その時は天候不良でどこにも登れずに帰りました。今回こそ景色が見たい。少しでも晴れてくれれば、と祈りながら歩きます。

立山 雄山の頂上にある神社
雄山の頂上にある神社も霧に霞んでいる

縦走路の後半、龍王岳まで来ても景色は見えません。ただ山頂に向かう途中、ライチョウと出合えました。

ライチョウ
ライチョウ。冬になると真っ白な毛に覆われますが、夏は茶褐色の毛色です

ライチョウはガスに覆われている方が出合いやすいので、霧が出ていたのも悪い点ばかりではありませんでしたが、結局この日は縦走中に景色はほとんど見られず。

浄土山(じょうどさん)までたどり着いても霧が晴れることはありませんでした。

3日目:雷鳥沢キャンプ場~雄山~大汝山~富士ノ折立~真砂岳~別山乗越~雷鳥沢キャンプ場~室堂

3日目は奥大日岳から大日岳へ向かう予定でしたが、2日目の夜に地図を眺めながら計画を変更しました。どうしても立山稜線の絶景が見たくて、2日目に通ったルートのほぼ逆回り、雄山から別山乗越まで縦走します。

朝は稜線が雲で隠れ、これは3日目も天候に見放されたかな?と心配になりましたが、杞憂でした。祈りが山に通じたのか、昨日とは逆に雲は朝の数時間で晴れました。

立山 雄山の山頂にある神社
雄山の山頂にある神社が青空の下ではっきりと見えます

立山の縦走路は文句なしの絶景。「これが立山の景色なのか!」と歩きながらひとり感動していました。

稜線から眺める室堂平
稜線から眺める室堂平。稜線から地獄谷のガスが沸き立つ様子も見えます

2日目は霧で見えなかった登山道も、どこまでも見えます。霧に閉ざされていた時はわかりませんでしたが、こうしてはっきりと見えるとかなり距離があるように見えます。「あんなに先から歩いてきたのか?」と不思議に感じました。

立山 稜線の登山道
登山道の続く様子がわかります

どれだけ眺めても飽き足らず、少しでも記憶にとどめられるように何度も立ち止まっては眺め、何枚も同じような写真を撮りました。

立山 雷鳥沢キャンプ場
最後に雷鳥沢キャンプ場へ戻り、歩いてきた立山の稜線を眺めて撤収

3年越しの念願がかない、2泊3日の立山周回は大成功。最高の夏山登山ができました。

(山行日程=2024年8月19~21日)

立ち寄り情報
「黒部ダム」

黒部ダム

長野県側から室堂平へ向かう立山黒部アルペンルートは途中の絶景スポットもたくさんあります。特に、険しい山の合間に造られた黒部ダムは絶景です。映画化もされた小説『黒部の太陽』でダム建造の様子が記されていますが、人が立ち入ることさえ困難な秘境の黒部渓谷に7年の月日と延べ1千万人の人手をかけて造られた日本の誇る巨大建築物です。

自然のつくり上げた山の景色も美しいですが、たくさんの人の手で造られたダムの景色も絶景です。ちょっと移動の足を止めて眺めていくのをおすすめします。

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:2泊3日
コースタイム:【1日目】1時間5分
【2日目】9時間30分
【3日目】8時間
行程:【1日目】
室堂ターミナル・・・ミクリガ池・・・雷鳥沢キャンプ場
【2日目】
雷鳥沢キャンプ場・・・別山乗越・・・剱御前山・・・別山・・・真砂岳・・・富士ノ折立・・・大汝山・・・雄山・・・一ノ越・・・龍王岳・・・浄土山・・・立山室堂・・・雷鳥沢キャンプ場
【3日目】
雷鳥沢キャンプ場・・・一ノ越・・・雄山・・・大汝山・・・富士ノ折立・・・真砂岳・・・別山乗越・・・雷鳥沢キャンプ場・・・ミクリガ池・・・室堂ターミナル
総歩行距離:約24,500m
累積標高差:上り 約2,633m 下り 約2,633m
コース定数:69
東 武(読者レポーター)

東 武(読者レポーター)

晴れた日は山に出没し雨の日には本を読む、そんな暮らしにあこがれる文系山男。文学サークル・ペンシルビバップを主催している。山と文学と相模原市を愛してやまない。

この記事に登場する山

富山県 / 飛騨山脈北部

立山・大汝山 標高 3,015m

 ふつう立山と呼ぶ場合、雄山神社を祭る雄山(3003m)か、浄土山、雄山、別山を含めた立山三山を指す。昔は毛勝三山から薬師岳辺りまでを含めて立山と呼んだし、江戸時代の文人画家、谷文晁(たにぶんちよう)の『日本名山図会』では別山、立山、剱岳をひとまとめに「立山」としている。つまり漠然とした山域なのだ。  その山域の最高峰が大汝山。古くは御内陣と書かれているので、雄山神社の奥社だったと思われる。縦走路から少し東にそびえている。  花崗閃緑岩質片麻岩で構成される大汝山には、西側に氷河地形として知られるカールがある。日本の地理学のパイオニアで、日本の氷河地形を初めて発見した山崎直方の名をとった山崎カールで、天然記念物に指定されている。  冬の北西の季節風で豪雪が山の東側に積もるため、日本のカール地形はほとんど東斜面に発達しているので、西斜面の山崎カールは珍しい。室堂から見ることができる。  地籍は富山県中新川郡立山町。乗鞍火山帯に属す火山で、溶岩台地の弥陀ガ原の上にそびえている。立山のもう1つの顔は加賀の白山とともに北陸の霊山として古くから信仰されていた修験道としての山。  開山は大宝元年(701)で越中介佐伯有頼(慈興上人)が鷹狩りの折、手負いのクマを追って奥山に入り岩屋に追い込んだが、中に入ると阿弥陀如来と不動明王に化身し「立山開山」を命じたとか。同じ8世紀には越中国の国守に任じられた万葉の歌人、大伴家持が「立山に降り置ける雪を常夏に 見れども飽かず神からならし」と歌ったように、立山は霊位に満ちた山なのである。  後年、天台宗と真言密教の修験道場となり、立山三山を極楽、地獄谷と剱岳を地獄に見立てた思想が独得の立山講を生み、山麓の芦峅寺衆徒の立山曼茶羅図による視覚に訴える全国布教で信者を増大させていった。ことに、宗教上のタブーだった女性にも極楽往生ができるという「布橋大潅頂」がセールスポイントで、江戸時代での先進的、精神的女性解放の旗印だった。  イラスト入りで地獄極楽を説き、ほかの宗門では不可能な、女性でさえ極楽往生ができるという説教を聞かされたときの驚きと喜びが、立山講中の賑わいを生み、芦峅寺から材木坂を登り、長大な弥陀ガ原をたどって室堂や雄山へと、三十数kmもの山道の苦行を悦びに変えていたのである。  現在の登山者は室堂までケーブルカーやバスを乗り継ぎ、室堂から2時間30分で雄山へ、さらに15分で最高峰の大汝山に登り着く。

富山県 / 飛騨山脈北部

別山 標高 2,880m

 別山は雄山(おやま)、浄土山を加えて立山三山と呼ばれる。雄山神社のある雄山の代りに最高峰で神社改築の折に御神体を移し置く大汝山が入ることもあるが、別山は霊山立山の北の鎮なのである。  縦走路は山頂の西を通って行くので気づかずに行く人もあるが、北東に5分ほど行ったこの山頂は剱沢を間にして剱岳と向かい合う、絶好の展望台になっている。さらに風景を引き立てるように、標高第3位という高山湖、硯(すずり)ガ池がある。写真の被写体にもいい池で、残雪の残るころが魅力的だ。  剱沢側はスケールは小さいが岩場になっていて、ロッククライミングのトレーニングにいい。西に下ると剱御前小屋がある。  登山コースは室堂から雷鳥沢経由で別山乗越、別山へ所要3時間30分。立山三山縦走をするなら室堂から雄山経由で所要4時間強。

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