念願の間ノ岳登頂。お花畑と天空の縦走路へ

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読者レポーターより登山レポをお届けします。naobonさんは南アルプスの北岳・・・ではなく隣の間ノ岳(あいのだけ)へ。

文・写真=naobon

1日目:広河原~北岳山荘

今回は、天候などの事情でこれまで未踏だった間ノ岳をめざして、1泊2日の山行です。暑くなる前に登り始めようと、芦安(あしやす)駐車場5時15分発のバスで出発。広河原(ひろがわら)には今年リニューアルオープンした広河原山荘も立ち、登山者でにぎわっていました。

雨を少しやり過ごして出発します。広河原から白根御池(しらねおいけ)小屋までは樹林帯の登山道が続きます。こんなに急登だったかな・・・と思いつつ2時間弱ほど進むと、白根御池小屋に到着。水も豊富で、冷たい水でリフレッシュしました。

白根御池小屋のテント場もにぎやかです
白根御池小屋のテント場もにぎやかです

白根御池小屋から先、二俣方面に20分ほど進むと、大樺沢(おおかんばさわ)の雪渓が眼前に迫ります。雨が降ってきたため、レインウェアを着用し、雪渓を左手に見つつ左俣コースに取りつきます。今年は雪が少なく夏道を歩けるとのこと、急斜面に気を引き締めます。

徐々にガスも濃くなるなか、2時間近くひたすら登り続け、八本歯のコルの分岐に到着しました。雨曇りで、かつ雪渓の冷気で、登りには涼やかなちょうどよい気候でした。

二俣。大樺沢の雪渓で空気もひんやり
二俣。大樺沢の雪渓で空気もひんやり

八本歯のコル付近から、丸太の階段が続きます。途中、階段を登り詰めたところにシャクナゲがきれいに咲いていました。今年最初で最後であろうシャクナゲに、心も癒されます。

八本歯のコルの丸太の階段
シャクナゲ
八本歯のコルの丸太の階段とシャクナゲ

さらに30分ほど進むと北岳山頂とトラバース道との分岐が。この季節、さまざまな花が咲き乱れるトラバース道を進みます。徐々にガスが晴れて、今日宿泊する北岳山荘が遠くに見えました。ゴールが見えるとがんばれます。

北岳トラバース道の花たち
北岳トラバース道の花たち
北岳トラバース道の花たち
北岳トラバース道の花たち
北岳トラバース道の花たち
遠くに北岳山荘と間ノ岳が見えました
遠くに北岳山荘と間ノ岳が見えました

北岳山荘には、14時前に到着。間ノ岳往復はギリギリになりそうなので、明日朝の楽しみに取っておくことに。

北岳山荘の相部屋の窓は富士山側を向き、光も入り明るく開放的です。荷物を片付け、外のテラスで北岳・間ノ岳の雄姿を眺めながら、生ビールで乾杯。至福の時間です。

北岳に乾杯
北岳に乾杯
夕食
北岳山荘夕食

夕食は山小屋では珍しい魚料理をおいしくいただきました。夕食後、翌朝の弁当を受け取り、明日の天空散歩に備えて早々に眠りにつきました。

2日目:北岳山荘~間ノ岳~北岳山荘~広河原

2日目は3時起床。ガスで白い世界が広がります。朝食弁当を食べ、ザックを山荘にデポし、ヘッドランプをつけて、間ノ岳に向けて出発しました。30分ほど山道を登ると、中白根山(なかしらねさん)に到着。さらに50分ほどガスの中を進み、念願の間ノ岳に到着。間ノ岳山頂にはすでに10名ほど登山者がいました。記念撮影をして、ガスが晴れるのを少し待ちましたが、変わらないため、来た道を戻ります。

間ノ岳標柱
雲越しに太陽の光が見えます
間ノ岳標柱、雲越しに太陽の光が見えます

復路、中白根山を越えたところから、少しずつガスが晴れてきて、天空の縦走路の視界が広がります。遠方に中央アルプス~南アルプスの山々が、近くに仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)と甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)の頭も見えました。さらに、富士山がその雄姿を見せてくれました。ここまで真っ白な世界だっただけに喜びもひとしおです。いつか晴れた天空の縦走路を歩きたい、と強く思いました。

間ノ岳標柱
雲越しに太陽の光が見えます
天空の縦走路。甲斐駒ヶ岳、富士山が!

北岳山荘には7時過ぎに到着。ザックをピックアップし、腹ごしらえをしたのち、下山を開始します。ガスも晴れ、風景を楽しみつつ歩きました。途中、北岳バットレスに取り付くクライマーに敬意を抱きつつ、足元注意で一歩ずつ歩を進めます。

北岳バットレス
北岳バットレス

鳳凰三山(ほうおうさんざん)を正面に見据えて3時間ほど下り続け、白根御池小屋にて休憩。気温も随分上がってきた印象です。アイスクリームの誘惑にかられながらも、のどを潤すべく、ファンタを注入します。コースタイムではあと2時間の道のり、暑さ対策で冷たい水をハイドレーションに追加して出発です。

さらに下り続け、広河原には13時過ぎに到着。広河原登山口から北岳が見送ってくれました。

広河原下山口
広河原下山口、おつかれさまでした!

帰りは、乗合タクシーで芦安駐車場まで戻り、温泉に直行です。今回は、芦安温泉郷の近くの「天恵泉白根桃源天笑閣」に行きました。アルカリ性・27度の源泉かけ流しの浴槽で、登山で火照った体をクールダウンできます。夏山と冷泉は相性がいいですね。冷泉と温泉との交互浴で疲れも癒やされました。

(山行日程=2024年7月20~21日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム:【1日目】7時間5分
【2日目】8時間5分
行程:【1日目】 広河原・・・白根御池小屋・・・大樺沢二俣・・・八本歯のコル・・・北岳山荘
【2日目】 北岳山荘・・・中白峰・・・間ノ岳・・・中白峰・・・北岳山荘・・・八本歯のコル・・・大樺沢二俣・・・白根御池小屋・・・広河原
総歩行距離:約17,300m
累積標高差:上り 約2,506m 下り 約2,506m
コース定数:57
naobon(読者レポーター)

naobon(読者レポーター)

東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。

この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 赤石山脈北部

間ノ岳 標高 3,190m

 白峰三山の真ん中に位置するので間ノ岳とは、当を得た山名である。日本第3位の高峰であるにもかかわらず、極めて地味な山だが、赤石岳、仙丈ヶ岳とともに、大きな山容を見せている。山頂は広くて、通称、間ノ岳のドームといわれるほどで、悪天のとき、方向を間違えることさえある。  一般的に、この山だけを単独に登るということはあまりない。白峰三山縦走時、あるいは仙塩尾根を経て塩見岳へと抜ける際など登頂する。  この山頂からの展望は、北岳のそれと大差がない。しかし、南側から眺めた鋭角の北岳は、さすが南アルプスの王者の風格をもって昂然として迫ってくる。  間ノ岳は『甲斐国志』にその名が載っている。登山者としては、明治14年(1881)8月18日に、アーネスト・サトウが農鳥岳経由で登頂している(出典「日本旅行日記Ⅰ」東洋文庫)。積雪期では京都三高山岳部の西堀栄三郎ら4名が、大正14年3月22日、野呂川右俣をつめて頂上に出た。北岳に登頂の途次の通過であった。  この山を踏むためのベースとなるのは、北岳のコルにある北岳山荘で、ここから中白峰を経て2時間ほどで登頂できる。 ※2014年3月までは、日本第4位の標高の山とされていたが、測量方法の変更や地殻変動などにより1m高くなることが国土地理院より発表され、2014年4月1日より奥穂高岳と並んで日本第3位の標高の山となった(2014.04.01追記)。

山梨県 / 赤石山脈北部

北岳 標高 3,193m

 日本で富士山に次いで高い山は白峰の北岳である。白峰は通称白峰三山と称し、3000mを抜く山5座が、南アルプスの北部に連なっている。すなわち北岳(3192m)、中白峰(3055m)、間ノ岳(3189m)、西農鳥岳(3050m)、農鳥岳(3026m)である。  この連山の最北にある故、北岳。当を得た山名である。古くは『平家物語』に「手越を過ぎて行きければ、北に遠ざかりて、雪白き山あり。問へば甲斐の白根と云ふ」と出ているが、果たして東海道筋から見えたであろうか。時代は下がり、『甲斐国志』(文化11年―1814年編)によれば「白峰、此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。国風ニ詠スル所ノ、甲斐ヶ根コレニシテ(中略)南北ニ連ナリテ三峰アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス」と記している。  同書によれば、「山上ニ日ノ神ヲ祀ル。其像黄金ヲ以テ鋳ル。長七寸許、容ルニ銅室ヲ以テス。高貳尺貳寸廣方八寸、其四隅ニ鈴ヲ掛ク、風吹ケハ声アリ」と大日如来を祭ってあることを載せている。明治41年7月、この頂に立った小島烏水は「奉納大日如来寛政七年乙卯六月(1794年)」と彫られた小鉄板のあったことを記録している。となれば『甲斐国志』の記事も本当かも知れない。  明治4年、地元、芦安村の行者、名取直江が里宮、中宮、奥宮を造営して開山したという。  登山者として最初にこの頂を踏んだのはウエストンで、明治35年8月23日のことであった。積雪期の初登頂は大正14年3月22日、京都三高山岳部のメンバーで、西堀栄三郎、桑原武夫、多田政忠、四手井綱彦の4人。野呂川両俣から右俣に入り、間ノ岳を経て頂上に立った。次いで3月28日、山梨の平賀文男が広河原から第2登を飾った。  最近は交通の便がよくなり、おそらく南アルプスの山の中で、一番人気のある山ではないだろうか。登山基地の広河原まで車で入れば、1泊2日でゆっくりと往復でき、雪渓あり、お花畑あり、しかも展望絶佳ときている。  展望は南、眼前にどっかと腰をすえた間ノ岳、これに重なり合うは、塩見岳や悪沢岳。南東の櫛形山の上に富士山、東側には鳳凰三山の上に奥秩父。その左には八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。遠く白馬三山から槍・穂高、その左にずんぐりと仙丈ヶ岳、御岳山、中央アルプスが堪能できる。  登山コースは広河原から大樺沢二俣、小太郎尾根経由で6時間、同じく二俣から八本歯のコル経由で5時間強の登りで登頂可能。

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