北アルプスの絶景も山小屋グルメも大満喫! パノラマ銀座2泊3日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

読者レポーターより登山レポをお届けします。なおさんは絶景と山小屋グルメも楽しめる北アルプス・パノラマ銀座へ。

文・写真=なお

1日目:中房温泉~合戦小屋~燕山荘・燕岳

今年の夏は、絶対に行きたい!と思っていたパノラマ銀座に夫婦で行ってきました。

1泊目に燕山荘(えんざんそう)、2泊目に常念小屋の2泊3日が理想でしたが、計画を立て始めたときには、キャパ40張の燕山荘テント場はすでに予約いっぱい。たまにキャンセルが出るので予約を試みるのですが、毎度2名では予約がとれず、1泊目は大天荘(だいてんそう)で宿泊する予定で山行を開始しました。

8月6日夜23時、夜行バスで東京を出発し、翌朝5時半ごろ、中房(なかぶさ)温泉に到着しました。この日は水曜日でしたが、登山口には多くの登山者がいました。

中房登山口から登り始めます
中房登山口から登り始めます

6時過ぎに出発。まずは燕岳(つばくろだけ)をめざし、約1,300mを4〜5時間かけて登ります。

出発から40分程で第1ベンチに到着。

第1ベンチ。近くには水場があります
第1ベンチ。近くには水場があります

その後も第2ベンチ、第3ベンチ、富士見ベンチとこまめに休憩場所があるので、その都度、水分・塩分を補給しながら進みました。

しかし、北アルプス三大急登の1つと言われる合戦(かっせん)尾根。段差が大きな箇所もたくさんあり、徐々に足に疲労が溜まっていきます。合戦小屋の名物・スイカを楽しみにがんばりました。

登り始めて約3時間、やっと合戦小屋に到着しました。

スイカを食べて生き返りました
スイカを食べて生き返りました

合戦小屋を出発する前にダメ元で燕山荘に電話をかけてみたら、テント場に空きがあるとのことで、予約することができました。燕山荘でのテント泊に憧れていたので、ワクワクしながら行動を再開しました。

濃いガスが出てきて眺望ゼロのなか40分くらい歩くと、きれいなお花畑が登場。うっすらと燕山荘も見えてきました。ここまで来たらあと少しです。

お花畑と燕山荘の赤い屋根
お花畑と燕山荘の赤い屋根

テント場の横の階段を登っていくと、目の前に燕岳や北アルプスの山々が突如現われました。思わず「おぉ〜!」という声が漏れます。

急登を登りきった先の景色
急登を登りきった先の景色

登山開始から約4時間、10時ごろについに燕山荘に到着しました。

燕山荘に到着
燕山荘に到着

受付をしてテントを張った後は、燕山荘の食堂で昼食をいただきました。燕山荘は施設が大変きれいなうえに、スタッフの方が多く、小屋に入るとすぐに声を掛けていただけたり、宿泊者の方には1組ずつ案内をされていたりと、応対がとても丁寧でした。

カツカレーと山菜うどん。カレーの上にはツバメが乗っています
カツカレーと山菜うどん。カレーの上にはツバメが乗っています

昼食の後は燕岳へ。

燕岳への道
燕岳への道

燕岳らしい花崗岩の白い砂の道が続き、イルカ岩やメガネ岩、コマクサの群生など、見どころがたくさんです。

イルカ岩
イルカ岩
コマクサ
コマクサ

20分ほどで山頂に到着しました。

燕岳山頂
燕岳山頂

この後は、燕山荘の食堂でコーヒーをいただいたり、グッズを購入したり、小屋の前で景色を眺めたりしながら、ゆっくり時間を過ごしました。この日は基本的に雲が厚く、眺望はそこまでよくなかったので、明日に期待です。

2日目: 燕山荘~大天荘・大天井岳~常念小屋

日の出を見るために、4時半に起床。燕山荘のテント場は東を向いており、さえぎるものもないので、テントの中から日の出が見られます。5時、雲海から太陽が現われました。

いつか見てみたかった燕山荘テント場からの日の出
いつか見てみたかった燕山荘テント場からの日の出

朝食を食べてテントを片付け、7時ごろ、大天井岳(おてんしょうだけ)に向かって出発しました。昨日とは打って変わって、快晴です。

燕山荘から大天井岳への道
燕山荘から大天井岳への道

歩きながら、槍ヶ岳(やりがたけ)、双六岳(すごろくだけ)、三俣蓮華岳(みつまたれんげだけ)、鷲羽岳(わしばだけ)、立山(たてやま)、剱岳(つるぎだけ)など、北アルプスの山々を一望できます。

振り返ると燕岳も見える
振り返ると燕岳も見える

本当に景色がすばらしく、中房温泉〜燕岳をピストンする方も、少し大天井岳方面に足を延ばしてみることをおすすめします。

槍ヶ岳がどんどん近づいてきます
槍ヶ岳がどんどん近づいてきます

アップダウンのある道を歩いた後に一度大きく下ります。徐々に大天井岳が近づいてきますが、斜面が見るからに急で不安が募ります。

大天井岳への道
大天井岳への道

登り返しの直前には鎖場とハシゴがありました。特に鎖場は足場が狭く、注意が必要でした。

ハシゴは3カ所ありました
ハシゴは3カ所ありました

いよいよ大天井岳への登りが始まりました。急な斜面をジグザグに登っていきます。暑さもあり、とても大変でした。

直射日光が当たり体力が奪われます
直射日光が当たり体力が奪われます

30分ほど登り続け、9時過ぎに大天荘に到着しました。小屋でザックをデポし、山頂へ。燕山荘から大天荘に向かう間の眺めとはまた角度が変わり、穂高連峰まで眺められました。

大天荘から山頂までは5〜10分程
大天荘から山頂までは5〜10分程

その後は大天荘でランチタイム。名物のインディアン・ランチと冷やし中華をいただきました。山の上とは思えないクオリティで大変おいしく、疲れが吹き飛びました。

本格的な味。チャイもついています
本格的な味。チャイもついています
冷やし中華は具材がたっぷりでうれしい
冷やし中華は具材がたっぷりでうれしい

たっぷり休憩をし、11時ごろ、常念小屋へ出発しました。

大天荘から常念小屋へ向かう道
大天荘から常念小屋へ向かう道

東天井岳あたりから雲が出始め、常念小屋までは真っ白な中を歩きました。きつい登りがなく、景色も見られないので、さくさく進みます。

道端にチングルマがたくさん
道端にチングルマがたくさん

横通岳(よことおしだけ)を過ぎたあたりでは、ライチョウの親子に遭遇しました。

近くに子どものライチョウもいました
近くに子どものライチョウもいました

2時間20分ほど歩き、13時20分ごろ、常念小屋に到着しました。テントを張り、プチ宴会をしていると、ヘリコプターの荷上げに遭遇。

テント場の目の前で荷上げ中
テント場の目の前で荷上げ中

さらには、日の入りのタイミングで空が晴れ、槍ヶ岳を見ることができました。

テント場から眺める槍ヶ岳
テント場から眺める槍ヶ岳

日の出から日の入りまで、とても充実した2日目でした。

3日目:常念小屋~常念岳~蝶槍~横尾山荘~徳沢園~上高地バスターミナル

常念岳山頂で日の出を見るべく、2時半に起床し、3時半過ぎから行動を開始しました。常念岳のすぐ麓に常念小屋があるため、ひたすら登りが続きます。

夜明け前。星がとてもきれいでした
夜明け前。星がとてもきれいでした

1時間程で山頂に到着。三六〇度の大パノラマが広がり、圧巻の景色です。

常念岳山頂
常念岳山頂

5時、日が昇り始めました。

常念岳山頂で眺める日の出
常念岳山頂で眺める日の出

槍ヶ岳や穂高連峰に朝日が当たり、とてもきれいです。

常念岳山頂からの眺め
常念岳山頂からの眺め

北アルプスの山々はもちろん、中央アルプスや南アルプス、うっすらと富士山も見えました。日の出も景色もすばらしく、とても感動しました。早起きをして登りをがんばってよかったです。

5時半ごろ、上高地をめざして蝶ヶ岳方面へ向かいました。岩の多い道を400m近く下ります。足場があまりよくなく、緊張感がありました。

蝶ヶ岳への道
蝶ヶ岳への道

8時45分ごろに蝶槍へ到着。あとは下るのみです。

蝶槍からの眺め
蝶槍からの眺め

蝶槍の先の分岐を、蝶ヶ岳方面へは進まず、横尾方面へ下ります。

この景色とお別れするのは名残惜しい
この景色とお別れするのは名残惜しい

その後は横尾山荘、徳澤園で休憩をしながら、15時過ぎに上高地バスターミナルに到着しました。あかんだな・平湯温泉行きのバスは長蛇の列ができていましたが、臨時便も出ており、すんなり乗車することができました。平湯温泉で下車をし、ひらゆの森で汗を流してから帰宅しました。

当初の予報では悪天候のなか歩く覚悟もしていましたが、3日間とも天気に恵まれ、コース名通りパノラマの絶景を大満喫することができました。

(山行日程=2024年8月7~9日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
日数:2泊3日
コースタイム:【1日目】5時間
【2日目】5時間30分
【3日目】10時間50分
行程:【1日目】
中房・燕岳登山口・・・第2ベンチ・・・合戦小屋・・・燕山荘・・・燕岳・・・燕山荘
【2日目】
燕山荘・・・大下りの頭・・・切通岩・・・大天荘・・・大天井岳・・・大天荘・・・東天井岳分岐・・・横通岳南肩・・・常念小屋
【3日目】
常念小屋・・・常念岳・・・蝶ヶ岳三角点・・・横尾分岐・・・槍見台・・・横尾・・・徳沢・・・明神・・・河童橋・・・上高地バスターミナル
総歩行距離:約33,200m
累積標高差:上り 約3,087m 下り 約3,031m
コース定数:81
naobon(読者レポーター)

なお(読者レポーター)

神奈川県藤沢市を拠点に、夏はアルプス、秋〜春は関東近郊や九州の山に夫婦で登っています。特に北アルプスと伊豆が好きです。

この記事に登場する山

長野県 / 飛騨山脈北部

燕岳 標高 2,763m

 常念山脈の北部にある花崗岩と花崗岩砂礫とで構成された山。東側に中房川が流れ、西側は高瀬川の谷が区切っている。  登山口には文政年間(1818~1829年)の開湯と伝えられる中房温泉があり、国民宿舎有明荘とともにいで湯の楽しめる、格好のベースになっている。  遠くから見ると平坦で特徴のない稜線が続いているので、かつては大天井岳近くまでの山稜を、ただ「屏風岳」とひとまとめに呼んでいたらしく、明治39年刊行の『日本山嶽志』にも載っていない。大正4年の長谷川如是閑の『日本アルプス縦走記』には「燕岳」とあるので、その間の10年間に命名されたらしい。  表銀座コースの始発点として有名で、大天井岳で分岐して槍ヶ岳へ常念岳へと志す登山者でいつも賑わっている。  遠目には目立たないが、稜線を山頂に向かってみると、風化した花崗岩群がまるで環境芸術のオブジェのようで面白い。頂上の北には北燕岳の岩峰がそびえ、鞍部はコマクサの群落、東斜面はお花畑と楽しい。  登山道は中房温泉からアルプスでも指折りの急登、合戦(かつせん)尾根を登って所要4時間30分。

長野県 / 飛騨山脈南部

大天井岳 標高 2,922m

 蝶ヶ岳から常念岳へと北に延びていく常念山脈が、燕岳と西岳を結んで東西に続く表銀座コースに丁字形に出合った地点にそびえるのが大天井岳である。  常念山脈の最高峰だが、安曇野から見上げる常念岳の形のよさと比べると運動場のように広い山頂部をもっているために、いささか目立たない。本当の頂上は北東端に小さい岩峰を押し立てている。その足元に町営大天荘がある。  燕岳と同じ花崗岩の山で岩塊が広い頂上を埋め、コマクサやキバナノコマノツメなど乾性の花が目につく。  山名「オテンショ」は「御天所」で、高い所の意。  登山道は燕岳からで、中房温泉から所要7時間。

長野県 / 飛騨山脈南部

常念岳 標高 2,857m

 松本平の西に連なるのが常念山脈。南北に続く穏やかな起伏の少ない稜線の中で、ひときわ目をひくピラミッド型の山が常念岳である。平行して山麓を走る大糸線の車窓からもよく眺められる。南へ延びる稜線で蝶ヶ岳に、北に下れば常念小屋の建つ常念乗越を経て横通岳に続いている。山脈の西には梓川の谷を隔てて槍・穂高連峰が平行して連なっている。  常念岳頂上から東に前常念岳(2662m)へ尾根が延び、常念乗越の東側には安曇野からの登山道がついている一ノ沢、西には小黒部とか不帰ノ谷と呼ばれる一ノ俣谷(現在は通行禁止)がある。  この頂上辺りから北は花崗岩、南は不変成古生層と分かれ、花崗岩の風化砂礫地を好むコマクサも、常念乗越や横通岳から北に限られている。  「常念」という名にはいくつかの伝説がある。よく知られているのはW・ウエストンの『日本アルプス・登山と探検』第12章に書かれている話だ。この山の銘木を盗みに入っていた山盗人が野宿していると、夜風に乗って山の上から読経と鐘の音が何時間も聞こえ、恐れおののいた盗人たちは逃げ下ったとか。いつまでも経を唱える坊様、というのが名の由来だとか。ほかに酒を買いに下りてくる山姥の妖異の話などもある。  この山で忘れてはならないのは、山麓の安曇野市に住んでいた高山蝶研究の第一人者で、優れた山岳写真家でもある田淵行男のことだ。彼の高山蝶研究のフィールドがこの常念乗越を中心にした岩礫地帯である。ここでタカネヒカゲが3年がかりで羽化するプロセスを、四季にわたって研究したのである。  田淵は一ノ沢から常念乗越、常念岳、蝶ヶ岳、大滝山を経て徳沢、上高地へとたどるコースでは日本アルプスの高山蝶9種すべてが見られるとしている。昭和34年以前のことで、今では見られなくなったものも多い。  常念岳の北には、乗越を挟んで横通岳がそびえている。その名のとおり中腹を道が横切り、東天井岳に続いている。コマクサの咲く山として知られている。  登山道は一ノ沢コースを利用すれば、豊科からタクシーを使えば終点から約4時間30分で常念乗越、あと1時間20分程度で常念岳頂上に着く。三股コースの場合は、豊科からタクシーで三股へ行き、前常念岳経由で約4時間30分で登り着く。

プロフィール

山と溪谷オンライン読者レポーター

全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。

山と溪谷オンライン読者レポート

山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。

編集部おすすめ記事