山は積雪期から残雪期へ! 春山を安全に楽しむために知っておくべき「気象の変化」と「雪の変化」

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標高の高い雪山でも積雪期から残雪期へと変わり、山との距離が縮まる時期だ。しかし安易な気持ちで近づくと重大事故の元となる。今回は残雪の山での注意点の中から、「気象変化」と「雪の変化」について説明する。

 

いよいよ春山シーズンです。日中の時間が伸び、気温も上昇して過ごしやすくなります。いよいよ閉ざされた冬から開放的な季節への幕開けです。

冬には深雪のラッセルでなかなか進めなかった行程でも、雪が締まる3月下旬から4月になるとスピーディーに行動できます。また、ルート取りでも自由度が広がります。

雪が安定し、行動時間が長くなり、暖かいのが春山の楽しさです。それでも油断大敵。春山の注意点を気象・雪への対処の点から考えてみましょう。

 

1.春山の気象は「急激な変化」に注意!!

春は天気がよく明るいイメージがありますが、実は天気が不安定な時期です。冬季は「西高東低の冬型」が数日間にわたり続きますが、春季は1~2日の短い周期で天気が変わることが多くなります。

日本海の低気圧の急激な発達や寒冷前線の通過の際には特に注意が必要で、雨から一瞬にしてみぞれ・雪になることがあります。

一方、南風で気温の大きな上昇がみられる場合もあります。「急激な変化」が春の気象のキーワードです。

 

2.雪への対処はここがポイント

春山は1日の気温の上下が大きく、それに合わせて雪の状態も変わります。朝方の気温の低い時間帯は雪面が非常に硬くなることがあり、そんな時にはアイゼンとピッケルは必携です。

硬く急な斜面をストックのみで歩くのは危険です。また、アイゼンは購入して靴に装着しただけでは安全に斜面を歩くことはできません。さまざまな斜面や雪面の硬さに対応できるように、経験者の指導の下、経験回数を重ねることをお勧めします。

また、春の雪は水分を含んでいるので重く、雪崩が起きると厚さが薄くても危険です。山腹や谷間の斜面にできたシワや割れ目は全層雪崩の予兆です。稜線に発達した雪庇の崩壊はブロック雪崩となります。例年雪崩が出ている所は特に注意してください。

雪庇の崩壊はブロック雪崩の原因の1つ。安易に近づかないように!

 

山を観察する習慣が危険回避につながります。雪崩に対しては、今いる場所が安全かどうかを常に確認することが最も大切です。

そして、もうひとつの注意点は日差しです。春になると紫外線が強くなります。山では上からの日射と下からの雪の反射で強烈な光が目と肌に強い打撃を与えます。必ずサングラスや日焼け止めクリームで防御しましょう。曇やガスの日は油断しがちですが、日差しがなくても紫外線は強いので特に用心してください。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
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