このエントリーをはてなブックマークに追加

上手な水分摂取が、安全登山のカギ! 飲み方、摂取量、タイミングなど、熱中症にならない水分補給法

山で必ず役立つ! 登山知識の処方箋
基礎知識 2018年07月12日

夏山で特に注意が必要なのが「熱中症」や「脱水症状」。山は平地以上に熱中症のリスクが高い場所で、しっかり対策を行っておきたい。水分の取り方をはじめ、摂取量、水を飲むタイミングや予防策など、登山中の水の取り方について指南します。

 

夏が近づいてくると、よくニュースで耳にする言葉のひとつに「熱中症」があります。登山は激しいスポーツなので、山の上の涼しい場所でも熱中症が起きることは珍しいことではありません。特に晴れた夏山などでは、熱中症の危険とは常に隣り合わせとなります。

また、熱中症と併せて気をつけなければならないのが水分補給です。水分不足は高山病や血液の粘性増、運動機能の低下やむくみの原因にもなります。そこで今回は、特に熱中症予防の観点から、上手な水分摂取の方法について考えてみたいと思います。

 

登山中は何を飲めばいいのか?

ご存じのとおり、汗の成分は水だけではありません。ナトリウム(塩分)やカリウムが含まれているので、汗が出たら水分とともにこれらも補給する必要があります。水ばかり摂取していると、尿量が増えることで、かえって脱水症状に陥ったり、いわゆる「水中毒(低ナトリウム血症)」になってしまったりする可能性があります。水分を摂ったら、塩分も摂ることが必要となります。

ナトリウム(塩分)やカリウムを同時に効率よく同時に摂取するには、市販のスポーツ飲料などを上手に利用するのが手軽な方法です。ただし、スポーツ飲料は製品によっては多量の糖分も含まれていて(これは糖分が運動中に必要なエネルギーを補うにも良いからです)、人によっては甘すぎて飲みづらいと感じる方もいるようです。

サッパリとしたものが飲みたいのでお茶や水にしたいというは、水分とは別に塩分タブレットや梅干しなどを摂取してください。目安としては、1リットル当たり1~2グラムの塩分を一緒に補給することです。

ちなみに、最近よく目にするようになった経口補水液は、スポーツ飲料より塩分濃度が高く作られていて、脱水症状が現れた場合に効果を発揮します。もちろん脱水症状が起きていない時や行動中に飲んでも支障はありません。

行動中の水分補給の際には、塩分の摂取も大切。水分とは別に塩分タブレットや梅干しも考慮しましょう

 

登山前から水分摂取しておくのが熱中症対策!

熱中症対策は、起きないように準備しておくことも大切なことです。まずは「登山前」に十分に水分を摂っておくことが大事です。

登山の出発は早朝であったり、また長時間の移動後であったりすることが多いので、朝からあまり水分を摂れずに行動を開始してしまい、登山前からすでに体が水分不足の状態に陥っている場合も多いようです。

また、トイレを心配して水分を摂らない方もいますが、これも危険です。出発前には意識的に十分な水分を摂取することが必要です。

具体的には、当日出発前に300~500mlくらいは飲んでおきたいところです。山によっては十分に水を確保できない場所もあるので、水分が容易に手に入る入山前にしっかり摂取しましょう。

 

登山中は「喉が渇く前に」が大切!

山行中の水分摂取量はどのくらいがふさわしいのでしょうか? 下記の式でおおよその量が求められます。

必要水分量(ml)=体重(kg)×行動時間(H)×5(ml)

上記のおおよそ、7割~8割を行動中に摂取するとよいと言われています。

ただし、上記は暑くない時期に、軽装で整備された登山道を歩いた場合を想定している数値になります。真夏の稜線のように日差しが強い場所や、湿度・温度の高い場所を歩く場合などは、係数を6~7(ml)程度に上げて計算しましょう。

量とともに重要なのが、摂取するタイミングです。よく「喉が渇いてからでは遅い」と言われます。暑い時期であれば、特にこまめな休憩を心がけて、行動食とともに必ず水分も摂取するようにしましょう。例えば1時間に1回の休憩時には、500mlペットボトルの1/3~1/2程度摂取することを意識するとよいでしょう。

ハイドレーションシステムは便利ですが、水以外のものを入れるとカビが生えやすいなどの理由で、水を入れている方も多いと思います。ポケットに塩分タブレット、塩飴や干し梅などを入れて、飲むと同時に食べるとよいでしょう。

ハイドレーションシステムについては「飲んでいる量が分かりづらい」という意見があります。実際、摂取量を把握するのは大切ですので、時々は残量を確認して、どれくらい飲んでいるか確認するようにしましょう。

雨の日でも汗をかいています。休憩時は水分補給を心がけましょう

 

登山後の水分補給も忘れずに!

下山後や小屋についてからなど、1日の行動が終わった後は、足りなかった分を補う意味も含めてしっかり水分を摂りましょう。小屋の食事で出る味噌汁も、水分と塩分補給におススメです。

また、「乾いた喉に、小屋でしっかりビール!」と行きたいところですが、アルコールは利尿作用を促進してしまうとともに、睡眠時の呼吸数が減ってしまい、高山病のリスクも高まる可能性があります。お酒を飲む前には水分補給をしっかりして、アルコールはほどほどに!

水分を上手に摂ることは、熱中症や高山病の予防につながるとともに、疲労の軽減にも効果的です。ぜひこの夏、水分摂取を意識して、山を楽しみましょう。

 

料理・食料 ボディケア セルフレスキュー
教えてくれた人

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター

同じテーマの記事
登山における判断能力とは? リスクとハザードの認識と自分の能力を知り、的確な登山行動を!
遭難事故のニュースが絶えない夏山シーズン、その原因はどんなところにあるのか? 登山中の安全を確保するために必要な「判断能力」について今回は説明する。
夏山シーズン前に、体力チェック! マイペース登高能力テストと山のグレーディング表で適した山に行こう
登山の基本は、やはり体力。しっかり長時間歩く力があってこそ、難易度の高い山にトライできるもの。夏山を前にして、今一度自分の「登高能力」を確認し、体力に適した山を「山のグレーディング」から探して欲しい。
山は積雪期から残雪期へ! 春山を安全に楽しむために知っておくべき「気象の変化」と「雪の変化」
標高の高い雪山でも積雪期から残雪期へと変わり、山との距離が縮まる時期。しかし安易な気持ちで近づくと重大事故の元となる。今回は残雪の山での注意点の中から、「気象変化」と「雪の変化」について説明する。
春をもたらす「春一番」。山ではその前後に、さまざまな危険が生じてくる
2月も中旬を過ぎると、春の話題が少しずつ増えてくる。その象徴的なものが「春一番」だ。街にいれば春一番は「暖かく強い南風」だが、雪山で吹く春一番は登山者に大きな危険をもたらす。春一番の際の登山の注意点について説明する。
記事一覧 ≫
最新の記事
記事一覧 ≫
こんにちは、ゲストさん
◆東京の天気予報[山域を変更]
明日

曇時々晴
明後日

曇時々雨
(日本気象協会提供:2018年9月18日 17時00分発表)
[ログイン]
ユーザ登録・ログインすることで、山頂天気予報を見たり、登山履歴を登録・整理・分析して、確認できます。
NEW 秋山PICK UP ITEM! ファイントラック 
秋山PICK UP ITEM! ファイントラック  寒暖差が激しい秋、低体温症のリスクを軽減するfinetrackのスキンメッシュ。『秋山JOY』連動企画でその秘密を紹介
NEW 優秀賞ほか、受賞作品全42点の写真が決定!
優秀賞ほか、受賞作品全42点の写真が決定! 沢山の方に参加いただいた「飛騨から登る北アルプス 写真コンテスト」。525点の写真の中から入賞作品を発表!
NEW プロ写真家・山岳ガイドと歩く「秋の尾瀬撮影会」参加者募集中!
プロ写真家・山岳ガイドと歩く「秋の尾瀬撮影会」参加者募集中! 写真投稿サイト「GANREF」とヤマケイオンラインのコラボイベントを開催! 9月30日~10月1日、一緒に秋の尾瀬を撮影...
NEW 女性ガイド渡辺佐智さんに聞く コンディショニング
女性ガイド渡辺佐智さんに聞く コンディショニング 女性登山者に必須のブラ、タイツなどのアイテムと、リカバリー、コンディショニングについて、ガイドの渡辺佐智さんに伺いました
NEW 分厚いミッドソールのトレッキングシューズ
分厚いミッドソールのトレッキングシューズ 高橋庄太郎さんの連載「山MONO語り」は「ホカ オネオネ」のミッドカットモデルをインプレ。ミッドソールの推進力に注目!
NEW 山形県寒河江市で実現するライフスタイル
山形県寒河江市で実現するライフスタイル シリーズ「山の麓に住む」は、山形県寒河江市を紹介。適度に田舎で暮らしやすい、その魅力に迫る。移住説明会も開催!
NEW 再掲載! 大町市に移住した2つの家族の物語
再掲載! 大町市に移住した2つの家族の物語 登山者なら憧れる、山の麓に住む暮らし。長野県大町市へ移住した2つの物語を再掲載。移住説明会、現地体験会も開催!
NEW 女性専用ヘルメットのフィールドレポート
女性専用ヘルメットのフィールドレポート 女性のために設計され、カラーも豊富なravinaのヘルメットを、ライター山畑理絵さんが妙義山の岩場で使ってみました
NEW 「カントリーマアム」は行動食の優等生
「カントリーマアム」は行動食の優等生 しっとりさっくりで食べやすい、行動食の定番「カントリーマアム」。登山の行動食に適した理由を探りました
NEW 隠れた山岳県・福島。ふくしまの山旅をご紹介!
隠れた山岳県・福島。ふくしまの山旅をご紹介! 飯豊山、安達太良山、会津駒など、百名山7座を抱える山岳県、福島の山の魅力を紹介します。写真コンテストも開催中!
ファミリーでも楽しめる日本百名山、日光白根山
ファミリーでも楽しめる日本百名山、日光白根山 迫力ある岩峰、神秘的な色の五色沼、高山植物の宝庫――。日光白根山はさまざまなルートから登れ、レベルに応じて楽しめる。
初心者・入門者・ファミリー向けアルプス
初心者・入門者・ファミリー向けアルプス 険しい山並み、眼下には雲海、そして稜線に遥か続く縦走路――。今年はアルプスに初めて挑戦! という人のためのオススメ初心者...
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す
ツラく、キツく、長い急登の登山道を制す 長い急登を汗水流し、気合と根性を振り絞って、延々と登った先にある素晴らしい景色と充実感を味わいたいなら、ココに決まり!
山と自然に関わる仕事 求人情報
山と自然に関わる仕事 求人情報 新規求人情報を続々掲載! 山小屋アルバイト、ツアー添乗員、ショップ店員、メーカースタッフ…、山に関わる仕事の求人情報