ボルダリング初心者の壁「4級」を登るために覚えたい、保持力とムーブの考え方・鍛え方

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登山のトレーニングの一環として、ぜひ、ボルダリングを体験してみてほしい。順調に難易度の高い課題をクリアしていくと、ある時点で文字通り「壁」に直面するかもしれない。その際に必要なのが「オープン持ち」という持ち方。これは登山の岩場などを通過する際にも知っておきたいテクニックだ。

 

ボルダリングは初心者でも出来る

東京2020オリンピックの正式種目になったこともあって、クライミングジムが増えてボルダリングを体験しやすくなっています。難しそうに見えるかもしれないボルダリングは、実際には子供でも初心者でも楽しめるものです。


ところで、ボルダリングは難易度別に登るコースが分かれていて、一番10級から5段までのレベルが存在するのをご存じでしょうか。一番易しいコースは10級で、初心者でも簡単に登ることができます。そして、慣れてきたら少しずつレベルを上げていきます。

実際に、どんなレベルになっているのか説明すると、ジムによってばらつきがありますが、およその目安は以下の通りです。

10級~9級:苦労せず登れるレベル(梯子を登るレベル)
8級~7級:コツを掴めば、比較的簡単に登れるレベル
6級~5級:簡単に達成するのが少し難しいレベル
4級~3級:ほとんどの初心者が登れないレベル
2級~1級:上級クライマーレベル
初段~2段:ごくわずかのクライマーが登れるレベル
3段~5段:プロレベル

 

4級の壁! 上達する鍵は「保持力とムーブ」

少しずつ登れるレベルが上がってくると、登ることが楽しくなってくるものですが、ある時点でこんな経験をすることになるはずです。「このコースだけ難しい!」「ホールドが掴みづらい!」。これが、誰もが苦戦する「4級の壁」というものです。

ホールドが掴みづらくなったり、足の置き方がわからなくなったりします。しかし諦めてはいけません。ホールドを掴み続ける力や動き、つまり「保持力とムーブ」が鍵となっているのです。

4級になると”掴む”というより掌で支えるスローパー(引っかかりのない丸いホールド)やカチ(小さくて指先でしか掴むことができないホールド)がコースの中で多く使用され、掴み方や力の入れ方、足の置き方が難しくなります。スローパーやカチなどのホールドは指先の力が重要になってくるので指先を意識して力を入れ、どのように掴んだらつかみやすいのか研究することが大切です。

また、保持力だけでなくムーブも忘れてはいけません。「ムーブ」とは、ボルダリングをする際に体を使ったテクニックのことで、さまざまな手法があります。指先の力はあるのに保持できない時は、ムーブが重要となります。足の置き方や場所、ホールドを掴む時の腰のひねりなどが4級の壁を乗り越えるムーブの大事な部分になります。

 

保持力を鍛えるトレーニング

普段の登りに少し変化を加えることで保持力を上げることが出来ます。まずはホールドの持ち方を変えてみましょう。多くの人が無意識にホールドを「カチ持ち(指を固めて持つ持ち方」をしてしまいますが、意識的に「オープン持ち(指を伸ばして持つ持ち方)」を心掛けてみてください。

カチ持ち(左)と、オープン持ち(右)。オープン持ちを使うように意識したい


カチ持ちは保持力が無くても力を入れやすいので初心者はやりがちですが、指の骨や腱に負荷が掛り怪我をしやすい持ち方です。それに比べオープン持ちは保持力を使う一方で骨や腱への負担は少ない方法です。

またカチ持ちをしていても、オープン持ちの保持力を鍛えることができません。オープン持ちをすることで指先が鍛えられて、カチ持ちも強くなり、さらにはポケット(指しか入らないような、穴の空いた形状のホールド)やピンチ(親指と他の指で挟むようにして持つホールド)など、あらゆるホールドで保持することが出来るようになります。普段からカチ持ちよりもオープン持ちで登る癖をつけましょう。

 

ムーブの引き出しを増やすセッション効果

苦手なムーブは繰り返しの練習で身につきますが、自分が持っていないムーブの引き出しを増やすには他の人の登りをみて真似するしかありません。上手なクライマーの登りをみることは非常に参考になりますが、自分と同じレベルの人と一緒に同じルートを登り、“セッション”することが一番効果的です。特に体格が違う人とセッションすることで自分とは全く異なるムーブで登っているのを見ることは、とても勉強になります。


4級以上になると難しいムーブやホールド、保持力の強化など様々な課題が見つかると思います。しかし、4級の壁をクリアすることができればレベルアップにも繋がり、ボルダリングがさらに楽しくなると思います。「保持力」と「ムーブ」を意識して、是非「4級の壁」を乗り越えましょう!

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
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