秋の花咲く高層湿原と緑濃い沢沿いを散策する入笠山ハイキング

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南アルプスの北端に位置する入笠山(にゅうかさやま、1955m)は、四季を通じて花の宝庫として知られています。山頂は平らで、さえぎられることない八ヶ岳連峰の眺望がみごとです。今回は、広々した高原の空と終わり間際のエゾリンドウの群落、秋色を深め始めた湿原とコケが美しい沢沿いなど、さまざまな表情を見せる入笠山のハイキングです。

文、写真=奥谷 晶


クマ目撃の注意看板が立つ沢入登山口(入笠山登山口)から出発。整備されたゆるやかな登りの登山道を進み、シカ防止用の柵を過ぎるとすぐに入笠湿原です。夏の終わりには湿原を埋め尽くすほど咲き誇っていたエゾリンドウもまばらです。

入笠湿原を夏から秋に彩るエゾリンドウ
入笠湿原を夏から秋に彩るエゾリンドウ

早くも秋色深まる湿原の木道を山頂駅に向かってゆっくり登っていきます。ここがかつて海底であったことをしめす緑色岩路頭のプレートを見ながらゴンドラ山頂駅の脇から進むと、八ヶ岳を見渡せる草原に出ます。

秋色深まる入笠湿原
秋色深まる入笠湿原

涼やかな風が吹き抜ける草原を、雄大な展望を楽しみつつ、一回りして、今度は入笠山山頂に向かいます。マナスル山荘前の車道から、ちょっとした鎖場のある「岩場コース」を行くと20分ほどで入笠山山頂です。

眼前に広がる八ヶ岳の展望がすばらしい
眼前に広がる八ヶ岳の展望がすばらしい
見渡す限りの三六〇度の展望が待つ入笠山山頂
見渡す限りの三六〇度の展望が待つ入笠山山頂

多くの登山者が休憩する山頂で三六〇度の展望を充分楽しんだら、大阿原(おおあはら)湿原をめざして下っていきます。仏平(ほとけだいら)峠を経て首切清水(くびきりしみず)に至り、大阿原湿原入口から周回路に入ります。

大阿原湿原の木道
大阿原湿原の木道

林の中や湿原の花々も数少なくなりましたが、それでもノコンギクやアサマフウロ、トリカブト、フジクロセンノウ、キキョウなどが見られました。

アサマフウロ
アサマフウロ
トリカブト
トリカブト
アサマフウロ
フジクロセンノウ
トリカブト
キキョウ

テイ沢分岐から黒河内林道を経て牧場を通り抜けるコースもおすすめですが、今回はテイ沢につながる林の中の水路沿いに緑濃いコケが美しい散策路を楽しんで、大阿原湿原入口に戻りました。そこからは、首切り登山口より八ヶ岳ビューポイントを経て花畑に戻り、法華堂を通って沢入登山口に下山しました。

テイ沢分岐
テイ沢分岐

(山行日程=2021年9月20日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム:5時間10分
行程:入笠山登山口・・・入笠湿原・・・山頂駅・・・入笠湿原・・・入笠山登山口・・・入笠山・・・仏平峠・・・大阿原湿原入口・・・分岐・・・大阿原湿原入口・・・仏平峠・・・入笠湿原・・・入笠山登山口
総歩行距離:約12,400m
累積標高差:上り 約753m 下り 約753m
コース定数:21

この記事に登場する山

長野県 / 赤石山脈北部

入笠山 標高 1,955m

富士見高原は、戦前から軽井沢に次ぐ避暑地として、大学の先生など文化人が集まった所。木ノ間、横吹、松目、原ノ茶屋など、美しい名前の集落が入笠山山麓に散在している。 スキー場のゴンドラを利用したハイキングコースがメジャーとなり、夏山ではゴンドラ山頂駅から約1時間で山頂に到達できる。 また、夏だけでなく、冬にはスノーシュー入門コースとしても注目されている。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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