日本三大急登・西黒尾根から挑む谷川岳の秋風そよぐ紅葉登山【紅葉レポート】

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読者レポーターより紅葉登山レポをお届けします。上町嵩広さんは西黒(にしぐろ)尾根から谷川岳(たにがわだけ)へ。

文・写真=上町嵩広


10月中旬、谷川岳の紅葉をめざして西黒尾根から登り、天神(てんじん)尾根を下ります。日本三大急登にも数えられるキツイ登りであっても、時折目にすることができる展望と紅葉に心和む山行でした。

谷川岳 西黒尾根登山口
西黒尾根登山口から始まる樹林帯の急登

谷川岳ロープウェイの土合口(どあいぐち)駅からスタートです。一ノ倉沢(いちのくらさわ)観望地につながる舗装道路の上り坂を歩き始めると左手に西黒尾根登山口が現われます。いきなりの急登ぶり。この先が思いやられます・・・。

谷川岳 西黒尾根の登山道
西黒尾根の深い森の中の登山道

コースの前半戦は樹林帯の中の急登続きです。濃い森の中は眺望がほとんどありません。一方で多様な種類の広葉樹を中心として緑に満ちあふれた森の豊かさを実感できます。登山口周辺はまだまだ青葉でしたが、標高を上がっていくと少しずつ色づいた木々も増え始めます。

谷川岳 西黒尾根から谷川岳ロープウェイ「天神平」駅を望む
谷川岳ロープウェイ、天神平駅
谷川岳 西黒尾根から白毛門などの谷川連峰の山稜を望む
白毛門などの谷川連峰の山稜

急登一辺倒で息が切れるころ、ちょうど樹林帯も切れて視界が開けました。左手に谷川岳ロープウェイ、天神平駅が、そして振り返るようにして白毛門(しらがもん)や朝日岳(あさひだけ)の谷川連峰の山並みが見えてきます。なかなかの好展望に声が上がります。

谷川岳 西黒尾根の岩場・鎖場
西黒尾根の岩場・鎖場

後半戦は灌木と露岩の斜面が谷川岳へ向かって延びていきます。岩場、鎖場は高難度というわけではないと思います。ステップやホールドもしっかりとありますので上りに関して鎖は補助的な利用で充分ではないでしょうか。しかし氷河跡や一部の岩は、つるつるとかなり滑りやすい箇所があります。そちらの方がむしろ注意かと感じました。なお、西黒尾根の下り利用は非推奨となっているようです。

谷川岳 西黒尾根から左手(南側)を望む
西黒尾根から左手(南側)を望む

山肌の樹木は色づいてはいますが、鮮やかとはいかず、この日の曇り空のせいもあるかもしれませんが、少しくすんでいるような印象を受けました。ちょっと残念な気分。

谷川岳 天神尾根に立つ指導標
天神尾根に立つ指導標

さらに標高を上げていくと灌木も減り、一帯は笹原と岩場が断続するゾーンに入ります。岩場には黄色いペンキで進行ルートがラインで指示されていますのでこれに従い登っていきます。傾斜が比較的なだらかな笹原が続いてくると天神尾根に立つ指導標が見えてきます。

谷川連峰の稜線
谷川連峰の稜線が垣間見える
谷川岳 紅葉の斜面
風がガスを吹き流して紅葉の斜面が顔を出す

合流した天神尾根から右手へ双耳峰である谷川岳のトマの耳とオキの耳へ向かいます。いずれも山頂域はガスがかかっており眺望には恵まれませんでした。しかし時々、西風がガスを吹き飛ばすと周囲の展望が開けます。青空、北へ続く谷川連峰の稜線そして山肌を染める紅葉の光景に思わず感嘆します。

オキの耳で一休みして天神尾根をロープウェイの天神平駅まで下山します。今回は平日山行だったので渋滞はほとんどなく、順調に進んで2時間ほどで天神平駅に到着です。

谷川岳 稜線上の紅葉はピークを迎え、そろそろ落葉も始まりそう
稜線上の紅葉はピークを迎え、そろそろ落葉も始まりそう

稜線上にある赤や黄色に染まった木々はすでに紅葉のピークを迎え、そろそろ落葉が始まるタイミングかと思われます。「観測史上もっとも暑い夏」ともいわれる今年の猛暑の影響でしょうか。各地の紅葉は1週間から10日ほど平年より後ろ倒しになっているようです。また谷川岳の紅葉の色づきはそれほどよくはないように感じました。それでも天神尾根の紅葉はなかなかみごとです。

谷川岳の紅葉は有名で大人気のため、週末ともなれば登山道も渋滞となり、なかなか前に進めないこともあります。また知人に聞いた話ではロープウェイ乗り場で2時間待ちしたこともあったとか。さらにロープウェイのスタッフさんの話によると麓の道路もハイシーズンで大渋滞が起きることがあるそうです。紅葉の時期に登山計画を立てるときはかなり時間的余裕を見込んだほうがよさそうです。

天高い秋空と涼やかな秋風のなか、たくさんの汗をかきながらも気持ちよく西黒尾根を登ることができ、紅葉と眺望が垣間見える爽快な山行でした。

(山行日程=2024年10月15日)

MAP&DATA

高低図
最適日数:日帰り
コースタイム: 6時間10分
行程:土合口・・・ガレ沢のコル・・・トマの耳・・・オキの耳・・・トマの耳・・・谷川岳肩ノ小屋・・・熊穴沢避難小屋・・・分岐・・・天神平
総歩行距離:約7,533m
累積標高差:上り 約1,531m 下り 約953m
コース定数:29
上町嵩広(読者レポーター)

上町嵩広(読者レポーター)

登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。

この記事に登場する山

群馬県 新潟県 / 越後山脈

谷川岳 標高 1,977m

 谷川岳は「耳二ツ」といわれ、沼田市や月夜野町(つきよのまち 現・みなかみ町月夜野)方面から見ると、ちょうどネコの耳のような双耳峰に見えるので、手前をトマの耳、奥の高い方の峰をオキの耳と呼びならわしている。  トマの耳は古くから薬師岳とも呼ばれ、山頂には石造りの薬師瑠璃光如来が祭られていたという。一方、オキの耳には、富士山の浅間菩薩が地元の人たちに福を与えんとして降臨したとの伝説も残り、別名谷川富士と呼ばれる。  元来谷川岳は、谷川本谷の北方にそびえる俎嵓を指していたのだが、陸地測量部が誤って、薬師岳に谷川岳と名称をつけた。ジャーナリズムが遭難の起こるたびに「谷川岳」の文字を使用した結果、今日では1963m峰(トマの耳)が谷川岳ということに定着したという。  昭和6年(1931)9月、上越線が開通した翌月、土樽(つちたる)側の万太郎谷で東京の一青年が疲労凍死し、登山者による遭難第1号となった。  谷川連峰の特異性については、次のような点が考えられる。  登山人口の多い首都圏に近くて交通の便がよく、アプローチが短いので、すぐに山に取り付ける。スポーツ登山や大衆登山の普及と相まって、絶好の登山地となった。  日本列島脊梁地の一部として、この山域の局地気象の複雑さは特異ともいえる。東京と清水峠の気温の差は、夏でも9~10度あり、加えて強風、豪雪、雪崩、濃霧といった悪条件が重なる。  標高は2000m内外であるが、峻険な岩壁を有し、高山性を帯びた山々である。地質も複雑で階層状をなし、多様な岩石が分布し、それが地形や植物分布に大きな影響を与えている。例えば、豪雪との関連もあるが、針葉樹林帯がほとんど見られない。  昭和42年(1967)から、群馬県の谷川岳遭難防止条例により、危険地区への入山の届出制や冬山の一時的登山自粛または禁止など規制が行われている。また、毎年融雪期にあたる3月末から5月中旬にかけては、気温上昇による雪崩の発生が予想されるため、危険地区の登山を禁止している。  昭和13年(1938)7月1日、スポーツ登山としての第1回山開きが行われた。西黒沢からガレ沢(当時の主要コース)をつめて尾根に登り、ザンゲ岩から山頂に出た。以後7月の第1日曜日は「安全登山の日」として、現在も山開きの日になっている。  ロープウェイを利用する天神平コースが所要2時間30分。厳剛新道コースは土合駅から4時間40分。西黒尾根コースは土合駅から4時間30分でそれぞれ山頂へ。

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