大菩薩嶺で静かな紅葉を楽しめる、丸川峠経由の縦走ハイキング【紅葉レポート】

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読者レポーターより紅葉登山レポをお届けします。naobonさんは大菩薩嶺(だいぼさつれい、2057m)へ。大人気のエリアでも、ルートを変えれば静かな山歩きが楽しめるようです。

文・写真=naobon


10月も半ばを過ぎ、山と紅葉をゆったり楽しみたいと思い、大菩薩嶺から丸川峠(まるかわとうげ)を越えて裂石(さけいし)方面(大菩薩峠登山口)への縦走ルートを歩きました。大菩薩嶺は、都内からの交通アクセスもよく、たびたび登っているなじみの山のひとつです。

登山口の上日川峠(かみにっかわとうげ)まで、甲斐大和駅8時10分発の始発のバスをめざして行きましたが、晴れ予報の週末とあって、甲斐大和駅のバス停はすでに長蛇の列でした。臨時便増発もあったものの、当初計画より1時間遅れ、上日川峠着が9時50分となりました。サクサクっと支度して、10時ごろから登山を開始しました。

上日川峠から大菩薩峠(1900m)までは整備された緩やかな登山道が続きます。途中、福ちゃん荘前にある唐松尾根コースとの分岐を通過し、大菩薩峠、介山荘(かいざんそう)方面へと向かいます。始めはガスガスでしたが、黄色や赤色に変わりつつある葉っぱに時折光が差しこんでくるようになりました。ガスが晴れるのを期待しつつ登ります。

大菩薩嶺
木々に光が少しずつ差してきました

大菩薩峠には、11時前に到着。まだガスが晴れず、景色は望めませんでしたが、多くの方が休憩をとっていました。峠の山小屋、介山荘では、オリジナルワインや地元産のブドウやシャインマスカットが販売されていました。食べたい(飲みたい)気持ちを抑え、先に進みます。

大菩薩嶺 介山荘で販売中の地元産のブドウ
大菩薩嶺 介山荘で販売中のオリジナルワイン
介山荘で販売中の地元産のブドウと、オリジナルワイン

大菩薩峠から雷岩までは、登り基調の心地よい稜線ルートが続きます。この日は好天予報もあり、家族連れや仲間連れの登山者で大変にぎわっていました。秋田犬を連れたファミリーもいて、目が釘付けとなってしまいました。賽の河原(1926m)を過ぎたあたりでラーメン屋の出前配達中と思わしき人と遭遇。何人もの登山者と記念撮影をしていて、なんともユニークな光景でした。

大菩薩峠
大菩薩峠到着
ラーメン出前配達中!?

標高2000m地点の標柱付近から、ガスも晴れ、青空が見えてきました。光が差すと紅葉も一層映えます。振り返ると大菩薩峠にかかっていた雲が谷間に流れていき、幻想的な風景が広がっていました。南に目を移すと、雲海の向こうに、3000m前後の南アルプスの稜線が、それぞれ個性的な山容を見せてくれています。残念ながら富士山は雲の中でした。

唐松尾根の紅葉も少しずつ進んでいる様子でした。景色を楽しみつつのんびり歩きながら、11時45分に雷岩に到着。めざす大菩薩嶺は展望がないため、ここで景色を楽しみながらランチ休憩をとりました。

大菩薩嶺 峠を流れる雲
峠を流れる雲
大菩薩嶺 唐松尾根と雲上の南ア稜線
唐松尾根と雲上の南ア稜線

お昼休憩後、大菩薩嶺をめざして再び樹林帯の中へ。ここからは山頂に向かう人でごった返していました。山頂標柱前も写真撮影待ちの大行列だったので、スルーしました。多くの人が上日川峠往復もしくは周回コースをとっていたようで、ここから先の道は、うって変わって静かな山行となりました。

丸川峠まで約1時間、緩やかな下り基調の樹林帯の道が続きます。深い緑色のコケの樹林帯の道は、空気も瑞々しく感じます。見上げると赤や黄色に染まった木々の葉が光を浴びて輝いていました。傾斜もそれほどきつくなく、枯葉がほどよく地面を覆っていて足にも優しく、心穏やかに歩けます。

大菩薩嶺 紅葉が進んだ丸川峠までの道
紅葉が進んだ丸川峠までの道

丸川峠に近づくと樹林帯を抜け、牧草地のようなのどかな風景が広がります。そこに、おとぎ話の世界に飛び込んだような、小さな小さな青いトタン屋根の山小屋。丸川荘が立っています。過去に通るたびに気になっていた山小屋ですが、これまで入ったことはありませんでした。入り口には、コーヒーとシフォンケーキの看板が。

吸い込まれるように、小屋の扉を開けると、木の温かみにあふれる空間がありました。コーヒーとシフォンケーキを注文し、山中でゆったりしたティータイムのひとときを楽しみます。丸川荘内には、ご主人のお父さんが手彫りで彫られた木彫作品も展示されています。小さな小屋なので、食材など必要な物資は、小屋番さんが歩荷で上げてこられるそうです。ゆったりとした心温まる山小屋時間が流れていて、いつまでもここにいたいという気持ちにさせてくれます。

大菩薩嶺 丸川荘外観
丸川荘外観
大菩薩嶺 丸川荘 コーヒーとシフォンケーキ
コーヒーとシフォンケーキ

後ろ髪をひかれる思いで、丸川荘をあとにします。ここから大菩薩登山口まで急降下の下り坂が続くので、トレッキングポールを使いながら、慎重に下ります。途中すれ違う人もほとんどなく、樹林帯の道をゆっくり1時間半ほど歩いていくと、沢の音が聞こえ、大菩薩峠登山口駐車場に到着しました。さらに下り、途中、武田家にゆかりある雲峰寺(うんぽうじ)に立ち寄りました。ここは行基(ぎょうき)和尚が開祖の、歴史と風格のあるお寺で、境内には樹齢700年を超える桜の巨木が威風堂々と立っています。今日の安全登山と出会いへの感謝を報告し、お寺を後にしました。

大菩薩嶺 裂石山雲峰寺境内
裂石山雲峰寺境内

下山後は、登山口バス亭近くの「大菩薩の湯」へ。アルカリ性の柔らかいお湯で、源泉かけ流しのぬる湯と加温浴槽との交互浴も楽しめ、登山の疲れを癒してくれます。入浴後は、バス時間まで、のんびりビールとつまみで反省会です。紅葉と豊かな山時間を楽しめた山行でした。

(山行日程=2024年10月20日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 5時間5分
行程:上日川峠・・・福ちゃん荘・・・富士見山荘・・・大菩薩峠・・・賽ノ河原・・・大菩薩嶺・・・丸川峠・・・丸川峠入口・・・大菩薩峠登山口
総歩行距離:約10,600m
累積標高差:上り 約656m 下り 約1,350m
コース定数:20

関連リンク

naobon(読者レポーター)

naobon(読者レポーター)

東京都在住、神戸市出身。夏山シーズンは日本アルプスの稜線縦走を、冬は低山・里山ハイキングや山城巡りを、気ままに楽しんでいます。山行後の温泉とビールにこの世の極楽を感じる、週末ハイカーです。

この記事に登場する山

山梨県 / 関東山地

大菩薩嶺 標高 2,057m

 大菩薩峠の北にあり、三等三角点が埋められている。伝説によると、甲斐源氏の祖、新羅三郎義光が奥州に遠征時、道を失ったが、木こりに化けた軍神の導きでここを越えた。彼は軍神の加護に感謝し、八幡大菩薩の名を高らかに称えた。これが山名の由来とのこと。  戦前、戦後ともにハイキングのメッカであり、中腹まで車が使える昨今はなおのことである。この山が有名になったのは、なんといっても、大正2年に始まった中里介山の小説『大菩薩峠』によってであろう。中腹の勝縁荘(休業中)には介山直筆の「大菩薩峠勝縁荘」の扁額も残る。  山頂こそ展望には恵まれないが、南面の尾根筋はカヤトの原で、日川の谷を前景にした富士山をはじめ、西側の甲府盆地を下にして連なる南アルプスは、上河内岳から甲斐駒ヶ岳まで、まさに一目千両といった感じである。  さて、昔、奈良の大仏を見た甲州人が、その大きさに驚いた。ところが彼は、「甲州に来れば小仏でも三里、大菩薩となれば八里もある」とほざいたという。甲州人はなんと負け惜しみの強い人種だろうか。  登山口の裂石(さけいし)から大菩薩峠経由山頂まで4時間、同じく丸川峠からも4時間で山頂に達する。

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