山の近くに移住して、ライフスタイルが一変|チャレンジ精神で暮らしをDIY
山の近くに住んでいると、「いつでも行けるから、いちばん天気が良い日に登りたい」と欲が出てくるもの。ベストなタイミングを見計らっていたら、いつの間にか晩秋に。もうすぐ山に雪が降ろうかという10月の終わりに、北アルプス・唐松岳に日帰り登山に行きました。当日はこの時期とは思えない暖かさで、山頂でも半袖で過ごせるほど。普段、里から眺めている山の景色も好きですが、山頂から望む360度のパノラマはやはり格別です。
文・写真=鈴木俊輔
DIY精神でなんでもチャレンジ
北アルプスの山々が冠雪すると、車をスタッドレスタイヤに交換する時期。毎年、タイヤ交換はできるだけ自分でするようにしています。こちらに移り住んでからは、タイヤ交換に限らず、何かと自分でやることが多くなりました。
例えば、網戸の張り替え、棚板の設置、部屋の壁塗り、波板の張り替えといった日曜大工。また、梅酒、みそ、干し柿、野沢菜漬けといった加工品づくり。さらには、ヘアカット、庭の草刈り、庭木のせん定といった雑用まで。これらも広い意味でのDIY(Do It Yourself)です。
9年前に長野県に移住して、私のライフスタイルは大きく変わりました。都会に住んでいた頃は消費中心の生活で、「自分でやること」はほとんどありませんでした。それがこちらに来てからはDIY中心の生活に。なぜ自分でやるようになったかというと、いくつかの理由があります。
①自分でやると安く済むから
②その方が手っ取り早いから
③何でもできるとカッコイイから
④オシャレで楽しいから
家のちょっとした修理なども、業者に頼むとお金がかかります。また、都会のようにいろいろなサービスがあるわけではないので、お願いしてすぐに来てもらえるとも限りません。ならば自分でやってしまおうという発想です。私は決してDIYが得意なわけではありませんが、やってみると意外とできるものです。
何か困ったことがある時は、まずは「自分でできないか」と考える。次に、やり方をインターネットで調べてみる。そして最終的に、自分のスキルと失敗した時のリスクを考慮して、自分でやるかどうかを判断します。また、金銭的な理由からではなく、趣味の一部としてあえて自分でやることも多いです。今回の記事では私のDIY生活の一部をご紹介します。
野菜づくりをDIY
わが家の庭の一角には小さな畑があり、そこで家庭菜園をしています。近くの直売所で苗や種を買ってきて、趣味で育てています。これまでに、スイスチャード、ビーツ、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、ハツカダイコン、ゴーヤ、インゲン、オクラ、トマトなど、いろいろな野菜を試しました。
自己流なのでうまく育たないことも多いのですが、一筋縄ではいかないところも家庭菜園の面白さ。夏には、赤く熟れたトマトを朝に採って食べるのが楽しみです。わが家の近所でも家庭菜園をしている人は多く、夏場になると食べきれないくらいの野菜をいただきます。
燃料づくりをDIY
わが家は5年くらい前にリフォームして、リビングルームにまきストーブを設置しました。信州は冬が長いので、1シーズンに使うまきもかなりの量です。これを購入すると、灯油よりもずっと高いので、毎年、自分でまきづくりをしています。
まずは原木を調達してきて、チェーンソーで玉切りに。それを斧でひたすら割ります。割ったまきは庭の一角に積み上げて、半年から1年くらいかけて乾燥させます。まきづくりは、手間も時間もかかるのですが、これがたまらなく面白く、いまでは趣味になっています。スパッとまきが割れた時の感覚は、まるでボウリングのストライクのようで爽快です。
ヘアカットをDIY
自分と息子の髪は私が切っています。美容室は予約するのが面倒で、思い立った時に切りたいというのがいちばんの理由です。初めはハサミで切っていたのですが、数年前にアタッチメント付きのバリカンを購入。バリカンとハサミを使い分けることで、完成度が高くなりました。
子どもの髪は難なく切れますが、自分の後ろ髪はよく見えないので、手の感覚を頼りにカット。最終的に、妻にチェックしてもらいます。時々、切り過ぎて失敗もしますが、その時は帽子でごまかしながら辛抱強く髪が伸びるのを待つことにしています。
害虫駆除をDIY
ある年のこと。久しぶりに庭の物置の戸を開けると、知らぬ間にスズメバチの巣ができていて、蜂がわんさか飛び回っていました。戸を閉めて、見なかったことにしようかと思いましたが、そうはいかず。いちど家に引き返して作戦を練ることに。
わが家は殺虫剤を使わない主義なので、蚊取り線香と木酢液で燻してから、虫取り網を使って巣を除去することに。こればかりは、よほど業者に頼もうかと思いましたが、何事もDIY(絶対にマネしないでください)。
「必ず無事に帰ってくるから」と約束して、妻と子を強く抱きしめました。アドレナリン全開で虫取り網を振り、幸いにも無傷で蜂の巣の除去に成功。九死に一生を得ました。
“つくる”を楽しむ
こちらには広い家と土地があり、近くに自然もある。おまけに、身近に技術を教えてくれる人もいる。都会ではできなかったことができるのが、山のある暮らしの魅力です。私の周りにも、「つくる暮らし」を楽しんでいる人がたくさんいます。なかには、自作の石釜でピザを焼く人や、自分の家をセルフビルドするような猛者もいます。
DIY暮らしで大切なのは、完璧さを求めずに楽しみながらやること。また、無理をしてやると楽しくないので、忙しい時などは出来たものを買ったりサービスを利用したりして、適度に力を抜いています。そして、自分一人ではできないことは、人の助けを借りること。私も道具を借りたり、手伝ってもらったり、いつもいろいろな人に助けてもらっています。
DIYに失敗はつきものですが、それも良い経験。工夫しながら何度か試すうちに腕が上がって、うまくできるようになるのはうれしいものです。私のいまの生活は、暮らしと趣味との境界があいまいで、暮らし自体が趣味のようでもあります。暮らしをもっとアートにするのが、私の夢であり目標です。
プロフィール
鈴木俊輔(ローカルライター・信州暮らしパートナー)
長野県池田町を拠点に、インタビュー取材・撮影・執筆を行なう。また、長野県の信州暮らしパートナー、池田町の定住アドバイザーとして移住希望者の相談に乗る。2015年に神奈川県から長野県へ移住したことをきっかけに登山を始める。北アルプスの景色を眺めながらコーヒーを飲むのが毎日の楽しみ。趣味は、コーヒー焙煎、まき割り、料理。野菜ソムリエプロ。
山のある暮らし
都内の出版社で働くサラリーマン生活に区切りをつけ、家族とともに長野県池田町に移住した筆者が、「山のある暮らしの魅力」を発信するコラム
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