僕らが300日世界一周トレッキングの旅に出るまで:トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」(1)

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旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。第一回目はプロローグとして、東京でバリバリ働いていた日々から一転、バックパッカーとなって夫婦で世界のトレイルを巡る旅に出るまでの経緯を語った。

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旅の始まりは妻の一言

「楽しそう!行こうよ、今からでも行ってみようよ」。

旅のきっかけは妻のそんな一言だった。

結婚を前にして、僕ら夫婦はお互いの好きなことや嫌いなこと、小さい頃の話や育ってきた環境、どんなところで暮らしてきたかなど、他愛のない話をしていた。昔から旅が好きだった僕は、学生時代バックパックひとつで旅をしていて、その頃は社会人になって5年くらい働いたら、一度仕事を辞めて世界を見て回りたいなと思っていた。そんな話をした時に、先ほどの妻の一言が飛び出したのだ。僕らの「世界のトレイルを巡る旅」はこうして動き始めた。

当時僕は38歳、妻は31歳。それぞれ新卒で入った経営コンサルティング会社に勤め、平日は激務をこなし、休日は山にこもる生活をしていた。それはそれで充実した毎日だったけれど、どこかで何か引っかかるようなものがあった。それは、いつかやってみたいと思っていた夢が、心の奥底でひっそりと生き続けていたからかもしれない。妻の一言は、そんな僕の昔の夢を呼び覚ましてくれたのだった。

 

テーマは世界のトレイルを巡る旅

「ただ世界を見て回るだけでは面白くないよね。せっかくだから何かテーマを持った旅にしよう!」

山好きという共通点で仲良くなった僕ららしく、世界一周のテーマは、山歩き・トレッキングとなった。必ずしもピークは目指さず、山を歩くこと自体を楽しむというスタイル。本格的な訓練や装備が必要な難易度の高い登山ではなく、旅行と組み合わせて個人で気軽に楽しめる山、ルートが中心だ。

行ってみたい場所をリストアップし、歩くのに適した時期を調べ、大まかな旅程を決めた。北半球の夏、南半球の夏を意識し、西回りで、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアを回ることにした。

旅の期間は300日間と決め、出発前に日本から最初の国へのチケットと、300日後の最後の国から日本へのチケットだけは手配した。終わりを意識することで、密度の濃い時間が過ごせるから。それ以外の細かい日程は旅をしながら決め、各国をつなぐ交通手段は都度手配していく。

旅行中の生活費予算は二人で1日1万円。食費・宿泊費・観光費・国内交通費がこの中に含まれる(国をまたぐ長距離交通費は別予算)。国によって物価は大きく違うが、全体を平均するとこれくらいが目標。学生バックパッカーの貧乏旅行ほどではないが、それなりに倹約した旅のスタイルとなる。

2016年4月13日。背中に僕は65リットル、妻は55リットルのメインザック、そして正面には25リットルのサブザッグを抱え、羽田空港から関西国際空港を経由しネパールに向けて飛び立った。

出発時に持っていった荷物2人分。300日の間に不要になって処分したり、買い足したりしながら厳選していった

出発時に持っていった荷物2人分。300日の間に不要になって処分したり、買い足したりしながら厳選していった

 

旅行と組み合わせて楽しめるトレッキング先を紹介

出発したのがちょうど2年前の4月。本連載では、実際の旅で訪れた時期に合わせて、僕らが歩いたアジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの50超のトレイルからその一部を紹介していこうと思います。

トルコ中部の世界遺産カッパドキア。火山によってできた地層が長期にわたって浸食、風化することで作り出された奇岩群が広がる

トルコ中部の世界遺産カッパドキア。火山によってできた地層が長期にわたって浸食、風化することで作り出された奇岩群が広がる

 

テーマは旅行と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイル。ピークを目指すのではなく山歩きを楽しむ。そこにある自然や文化、歴史を楽しむ。それほど難しくない技術・体力で歩くことができ、日本からでも1〜2週間程度の休みで訪れられる、日帰りから数日程度のトレッキングコースです。日本では見られない景色や非日常のちょっとした冒険を楽しみたい、旅行と組み合わせて気軽に海外のトレイルを楽しみたい、そんな方々への参考になれば幸いです。

アイスランド内陸部の山岳地帯にあるロイガヴェーグル。火山と氷河が織りなす壮大な景色が楽しめる

アイスランド内陸部の山岳地帯にあるロイガヴェーグル。火山と氷河が織りなす壮大な景色が広がる

 

アメリカを代表するロングトレイル、ジョンミューアトレイル。歩きたいだけ歩いて、気に入った場所にキャンプをするトレッキングの新たな魅力に取りつかれた

アメリカを代表するロングトレイル、ジョンミューアトレイル。歩きたいだけ歩いて、気に入った場所にキャンプをするトレッキングの新たな魅力に取りつかれた

 

紹介予定の主なトレイル

  • アンナプルナ(ネパール)
  • ラダック(インド)
  • アルティンアラシャン(キルギス)
  • リキアンウェイ・カッパドキア(トルコ)
  • ツールドモンブラン(フランス・イタリア・スイス)
  • クングスレーデン(スウェーデン)
  • ロフォーテン諸島(ノルウェー)
  • ロイガヴェーグル(アイスランド)
  • ジョンミューアトレイル(アメリカ)
  • ロカ岬(ポルトガル)
  • トドラ渓谷(モロッコ)
  • ジャイアンツカップトレイル(南アフリカ)
  • ブランカ山群サンタクルス谷(ペルー)
  • パイネ国立公園(チリ)
  • ルートバーン・グリーンストーントラック(ニュージーランド)
  • オーバーランドトラック(オーストラリア)

南アフリカの世界遺産ドラケンスバーグ国立公園内にあるジャイアンツカップトレイル。力強い景観と野生動物が楽しめる

南アフリカの世界遺産ドラケンスバーグ国立公園内にあるジャイアンツカップトレイル。力強い景観と野生動物が楽しめる

 

ニュージーランド南島ルートバーントラック。苔生す森の美しさに息を飲んだ

ニュージーランド南島ルートバーントラック。苔生す森の美しさに息を飲んだ

 

西廻りで進む僕らが最初に向かったのはアジア。次回は8000mの高峰を見渡すネパール・アンナプルナを紹介します。世界の屋根と言われるヒマラヤ山脈の厳しくも美しい姿を堪能できるトレイルです。

 

プロフィール

Trail Travelers 山野尚大・優子

山と旅の愛好家。経営コンサルタントとして平日の激務と休日の山ごもりを両立させる日々から、結婚を機に心機一転、夫婦で絶景トレイルを巡る世界一周の旅に出発。2016年4月からの300日間で、五大陸の50超のトレイルを歩く。「Trail Travelers(トレイルトラベラーズ)」を立ち上げ、旅行と組み合わせたトレッキングの楽しみ方を発信中。
【ブログ】
http://trailtravelers.net/
【Facebook】
https://www.facebook.com/trailtravelers/
【Instagram】
https://www.instagram.com/trailtravelers/

トレイルトラベラーズ「世界のトレイルを巡る旅」

旅と組み合わせて気軽に楽しめる世界のトレイルを紹介する連載「世界のトレイルを巡る旅」。トレッキングをテーマに300日間で世界一周旅行をした山野夫婦が、訪れた五大陸50超のトレイルからおすすめの場所を振り返る。

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